雑記 夜更かしの毎日

働く主婦の日々のこと。
大好きなお芝居や音楽、その他もろもろ。

4/22 「どん底」 シアターコクーン

2008-04-23 | LIVE S
仕事休みなので、マチネで観劇。
マクシム・ゴーリキー(ロシア人)原作
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(日本人ですって!)台本・演出

「どん底」シアターコクーン

春はいろいろと出費がかさんで、遣り繰りもタイへンで…
そこに持ってきてのシアターコクーン。S席9,000円!
…最近、チケット代高いですよ、ケラさん。ツライです。PARCOとかコクーンとかさー。
今回は見送ろうかなー、って思わないこともなかったんだけども。
やっぱりどうしても見たかった「どん底」
ケラさん言うところの、「ただの底じゃない、どん底。」!
悩んだ末の妥協策は、コクーンシート5,000円…。
舞台の端が見えないのはよくわかってます。首が痛くなるのも知ってます。
観たかったんだもの~!
でも、観に行って良かった!チケ代の元は取った!お釣りがきた!
あの舞台装置を劇場で見られただけでも良かったわ~!

もちろん当然の長丁場。15分の休憩を挟んでの2幕、3時間半。
物語の舞台はロシアの貧民窟。汚れた木賃宿の一室で、雑魚寝しながら身を寄せ合って暮らす最下層の貧しい男女。
帽子屋に饅頭屋に錠前屋に娼婦、元役者に元男爵、いかさま賭博師に色男の泥棒に…
元役者はお得意だったシェークスピアの台詞さえ思い出せないほどアルコールに溺れ、錠前屋の妻は死の床に伏せっている。(悲哀を湛え飄々と振る舞う山崎一さんと、痩せて(?)やつれた(?)池谷のぶえさんの存在感が光る~!)
誰もが人生の底辺を漂い、救済を願いながらこの世の「どん底」から抜け出す術を持たない…。
でも物語の当初この貧民窟を満たしていたのは悲壮な絶望感よりも、諦めにも似た乾いた明るさ。
ある日、この「どん底」の部屋に、巡礼の老人「ルカー」が現れる…。

そりゃー、9,000円ぐらい取るわよね。ってぐらいに豪勢なこのキャスト!
生で江口洋介さん、初めて見ちゃった~
やっぱりスタイルが良い、足が長い!カッコいいなぁ!
欲望と愛情の間で苦悩し、結局すべてを失う泥棒、ペーペル役。思っていたよりも舞台栄えが良くて台詞も明快。ただ並み居るこのキャストの中で、抜群!ってほどには存在感を感じれなかったかもしれない…。
とてもそれぞれのキャスト各々の造詣がくっきりと際立って深かった、ケラ版「どん底」。江口さんの出演量も特別に多かった訳でもないからねー。

ルカー役の段田安則さんは、安心感を感じるそつの無い上手さ。掴み所のあるような無いような、謎の多い、でも物語の核となるルカーを好演。
台詞の心地良い重量感と説得力はさすが!

コミカルなアクセントで舞台の脇を固めるマギーさんに皆川猿時さん。ダンディで芯の通った演技の大森博史さんや三上市朗さんも素敵~!(艦長の舞台、ちょっと久しぶりだったかも。今日も素敵でしたよ~

女優陣の熱演にも感激~!
犬山イヌコさん、松永玲子さんのNYLON組は、もちろん当然の安定感!!
木賃宿の大家の妻で、自分の置かれた境遇から抜け出すために手段を選ばぬワシリーサを演じた荻野目慶子さんの憎憎しくエキセントリックな悪女ぶり。
その妹で心優しいナターシャ役、緒川たまきさんの楚々とした美しさ。
この2人が一幕で諍うシーン。吊り下げ式の高い舞台(一幕と二幕で大きく上下に移動する、この舞台の使われ方がとにかく凄い!劇場で観れて良かった!)の上での演技の迫力がねー!ここだけはコクーンシートが特等席、もう目の前の光景。手摺りも柵もないグラグラと揺れてる、あの位置でのあの熱演!見てるだけで背筋が冷えたなー。

降りしきる雪(ホントに盛大に猛吹雪!)の中の悲惨なクライマックス。巡礼のルカーは何処ともなく姿を消し、その言葉に動かされた者達にも、ついに安らぎは訪れない…。
残ったもの達はまた光の射さない「どん底」へと戻って、身を寄せ合う。
その最低の暗闇さえも売り物に換えようとする男、セルゲイ。
「どん底」の底にはまだ更なる「底」が口を開けていて、その絶望的な深さは、元役者のルカーに寄ってもたらされたささやかな希望さえ、簡単に飲み込んで…。

やっぱり、いろいろと考えるところの多い舞台でした…。
でも、ケラ版「どん底」は大仰な悲劇ではなく、シニカルでスタイリッシュな悲喜劇。思わず笑えるシーンも多いです。
自らの愚かさと捨てきれない希望に翻弄され、それでも意外に強かにどん底で暮らす登場人物たちの、憎みきれない可笑しさがじわっと印象深い。
ただ淡々と逞しく与えられた日々を過ごす饅頭屋の女将の生き様に、むしろかえって希望が見えたりもして…。

舞台を彩る音楽(パスカルズ)も良かった!特に生演奏で楽団の入るシーンの少しだけ物寂しい陽気な味わいが、舞台の雰囲気を少しも損なわずに盛り上げていてねー。
あの石川浩司さん(exたま)の生パーカッション見れただけでも、もう儲けもんでしたよ~!

ラストの出演者全員での合唱、「カチューシャの歌」の調べが胸にいつまでも響く。(段田さんはフルート、三上艦長はサックスで参加。ホントになんでも上手なんだもんなー
見応え充分、良い舞台でした。




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