笑われるかもしれないが、『JIN-仁』の文庫版を全巻買って読んでしまった。コミック版は、アマゾンでは中古にしかなく定価よりも高かった。仕事の帰りに電車で座って読んだ。電車の運行中、電気が少し暗くなるので、文庫版の小さい字は見にくかった。その様子に周りの人は変に思ったと思う。そこしか読む時間がなかったので仕方がない。マンガを読むのは、何年ぶりだろうか。25年は経っているかしら。(ちなみに、最後に読んだのは、『ゴルゴ13』だったと思う。出生に複数の説があった)。
ドラマについては、私自身がタイムスリップ物が好きだというのと、だいぶ前だがNHKBSドラマの『アフリカの蹄』で大沢たかおが印象に残っていたというので、見始めた。ドラマ完結編の最終回が終わったあと、主人公の仁について、「この人はこれだけの喪失(loss)からどう立ち直るのだろうか」と思い、私の方が喪失感に襲われてしまった。あれだけ真剣に生きて生活した時代と時間、愛する人、仲間、そして共同体から離れてしまって。きちっと受容の段階(喪失からの回復にはグリーフ・プロセスと同じものが必要といわれているが、この話はまた別の機会に)までいけるかしら。江戸時代には共感して傾聴してくれた咲がいたし、周りの人とのコミュニケーションも密だったけど、現代にもどったらサポートシステムはないじゃないの。などなど、思っていたら、その勢いで全13巻買ってしまった。
仁が現代の東京の大学病院で実践していたのは、三次医療(tertiary care)だ。大学病院の脳神経外科の医局長で、最先端の精密医療機器を使って高度な手術を行う専門医(Specialist)である。大学病院のER(emergency room:救命救急センター)は、アメリカでいうと、Level One Trauma Center(Level oneは、最先端のERの認証で、脳外科医などが常駐しているなどの要件がある)になる。
他方、江戸時代にタイムスリップした仁が実践したのは、一次医療(primary care)だ。はしかやコレラといった感染症に対する環境整備、脚気への栄養指導と工夫。外科に関わらずなんでもするジェネラリスト、GP(General Practitioner:一般医)だ。
注射、点滴のセット、麻酔、ペニシリン、アンビューバック、ラリンゲルマスクなど治療技術や器具が息つくまもなく次々に登場するのは、さすが医師のドラマと思った。でも、その中で私が関心をそそられたのは、コレラのときの清潔不潔領域を区別(いまでいう、パスボックスの原型も含めて)、火事や紛争など大量傷病者発生時のトリアージといった現代の感染管理方法など、使える方法の導入だった。現在は、感染管理ナース、トリアージナースなどといった専門的なナースがいる。
プライマリー・ケアは、その名のとおり、第一義的なケアだ。国立国語研究所「病院の言葉」委員会の報告書(2009)では、プライマリーケア(総合的に診る医療)となっている。GPの主領域だとされている。ただ、広くは地域や共同体に根ざした生活をしている普通の人々へのケアであり、人々をエンパワーするもので、高度先進医療とはまた違った興味深いエキサイティングな領域だ。、実は、ナースの役割が重視されて期待されている領域でもある。
これをWHOでは、PHC(プライマリー・ヘルス・ケア)といい、人間にとって必要不可欠なケアのことを指す。1978年に旧ソ連のアルマアタ(カザフ共和国の首都)で開かれた、WHOとユニセフの呼びかけによる会議で出た「すべての人に健康を」(Health for All by 2000 and beyond:アルマアタ宣言)で定義された。
世界では感染症(infectious disease)は今も変わらず脅威だ。マラリア、結核(TB)が再興し、多剤耐性結核(MDR-TB、multidrug-resistant tuberculosis)が現れ、HIV/AIDSがある。強毒性(highly virulent、lethalということ)新型インフルエンザの大量発生(outbreak)、世界的流行(pandemic)への懸念も大きい。だが、時代は変わったことも確かだ。
現在、WHOが注力しているもう1つのことは、NCD(non-communicable disease)といわれる慢性病/生活習慣病だ。(興味深いのは、communicableか否かで線引きしていることで、WHOでは感染症は最重要の問題であることの表れである。)現在、糖尿病、心疾患、脳卒中、がん、慢性呼吸器疾患などの慢性疾患が先進・途上国両方の大きな問題になっており、WHOは、NCD epidemic(蔓延)と表現している。そして、その中で強調されているのは、ナースの役割である。世界的に、保健指導とともに、僻地や途上国で実際のケアの提供を行っているのはナースであり、各国の看護教育で強化されている部分である。ICNの大会や文書でも、ここ数年、NCDのウェイトが高まっている。
1つ、理念として大切なことは、プライマリ・ヘルス・ケアは、健康を守るというすべての人間の基本的人権に基づくものであることだ。健康格差を是正することは、その人の生きていく力を強化し対等な立場に押し上げる。人々をエンパワーするのだ。社会に対して看護が果たすきわめて重要な役割である。
ドラマについては、私自身がタイムスリップ物が好きだというのと、だいぶ前だがNHKBSドラマの『アフリカの蹄』で大沢たかおが印象に残っていたというので、見始めた。ドラマ完結編の最終回が終わったあと、主人公の仁について、「この人はこれだけの喪失(loss)からどう立ち直るのだろうか」と思い、私の方が喪失感に襲われてしまった。あれだけ真剣に生きて生活した時代と時間、愛する人、仲間、そして共同体から離れてしまって。きちっと受容の段階(喪失からの回復にはグリーフ・プロセスと同じものが必要といわれているが、この話はまた別の機会に)までいけるかしら。江戸時代には共感して傾聴してくれた咲がいたし、周りの人とのコミュニケーションも密だったけど、現代にもどったらサポートシステムはないじゃないの。などなど、思っていたら、その勢いで全13巻買ってしまった。
仁が現代の東京の大学病院で実践していたのは、三次医療(tertiary care)だ。大学病院の脳神経外科の医局長で、最先端の精密医療機器を使って高度な手術を行う専門医(Specialist)である。大学病院のER(emergency room:救命救急センター)は、アメリカでいうと、Level One Trauma Center(Level oneは、最先端のERの認証で、脳外科医などが常駐しているなどの要件がある)になる。
他方、江戸時代にタイムスリップした仁が実践したのは、一次医療(primary care)だ。はしかやコレラといった感染症に対する環境整備、脚気への栄養指導と工夫。外科に関わらずなんでもするジェネラリスト、GP(General Practitioner:一般医)だ。
注射、点滴のセット、麻酔、ペニシリン、アンビューバック、ラリンゲルマスクなど治療技術や器具が息つくまもなく次々に登場するのは、さすが医師のドラマと思った。でも、その中で私が関心をそそられたのは、コレラのときの清潔不潔領域を区別(いまでいう、パスボックスの原型も含めて)、火事や紛争など大量傷病者発生時のトリアージといった現代の感染管理方法など、使える方法の導入だった。現在は、感染管理ナース、トリアージナースなどといった専門的なナースがいる。
プライマリー・ケアは、その名のとおり、第一義的なケアだ。国立国語研究所「病院の言葉」委員会の報告書(2009)では、プライマリーケア(総合的に診る医療)となっている。GPの主領域だとされている。ただ、広くは地域や共同体に根ざした生活をしている普通の人々へのケアであり、人々をエンパワーするもので、高度先進医療とはまた違った興味深いエキサイティングな領域だ。、実は、ナースの役割が重視されて期待されている領域でもある。
これをWHOでは、PHC(プライマリー・ヘルス・ケア)といい、人間にとって必要不可欠なケアのことを指す。1978年に旧ソ連のアルマアタ(カザフ共和国の首都)で開かれた、WHOとユニセフの呼びかけによる会議で出た「すべての人に健康を」(Health for All by 2000 and beyond:アルマアタ宣言)で定義された。
世界では感染症(infectious disease)は今も変わらず脅威だ。マラリア、結核(TB)が再興し、多剤耐性結核(MDR-TB、multidrug-resistant tuberculosis)が現れ、HIV/AIDSがある。強毒性(highly virulent、lethalということ)新型インフルエンザの大量発生(outbreak)、世界的流行(pandemic)への懸念も大きい。だが、時代は変わったことも確かだ。
現在、WHOが注力しているもう1つのことは、NCD(non-communicable disease)といわれる慢性病/生活習慣病だ。(興味深いのは、communicableか否かで線引きしていることで、WHOでは感染症は最重要の問題であることの表れである。)現在、糖尿病、心疾患、脳卒中、がん、慢性呼吸器疾患などの慢性疾患が先進・途上国両方の大きな問題になっており、WHOは、NCD epidemic(蔓延)と表現している。そして、その中で強調されているのは、ナースの役割である。世界的に、保健指導とともに、僻地や途上国で実際のケアの提供を行っているのはナースであり、各国の看護教育で強化されている部分である。ICNの大会や文書でも、ここ数年、NCDのウェイトが高まっている。
1つ、理念として大切なことは、プライマリ・ヘルス・ケアは、健康を守るというすべての人間の基本的人権に基づくものであることだ。健康格差を是正することは、その人の生きていく力を強化し対等な立場に押し上げる。人々をエンパワーするのだ。社会に対して看護が果たすきわめて重要な役割である。