Leap Frog Group と Business Roundtable(BRT)

2013-02-21 21:56:07 | 看護/医療全般
  (昨日の続き)

 「入院するのは看護ケアを受けるため」(Patients are admitted because they need nursing care.)という表現は、考えてみれば、当然のことなのだが、文章にしてみるとやはり感動する。2009年の後、他に誰か使っていないかと、探してみた。

 Policy Politics in Nursing and Health Careの編集で有名なDiana Masonも使っていた。Diana Masonのことはこのブログでも何回か触れている。アメリカのハンター大学の教授で、American Journal of Nursing誌の編集長、看護とメディアを始めポリティカルな視点での看護の論客である。2011年のICN学術集会の基調講演者でもあった。

 Masonが主導しているハンター大学のCenter for Health Media & Policy (CHMP)のブログに次の表現がある。

Since patients are admitted to hospital because they need nursing care (most are treated on an outpatient basis if 24-hour nursing care is not needed),
(「患者が入院するのは看護ケアが必要だからで(24時間の看護ケアが必要でなければほとんどが外来で治療される))(July 2011)
http://centerforhealthmediapolicy.com/2011/07/29/leap-frog-group-embraces-magnet-designation/

 この部分は従属節なのでもちろん、主節はある。主節の内容はこうだ:アメリカにはLeap Frog Group*という病院経営者の団体があって、医療安全と質についてサーベイを行っているのであるが、2010年のIOMの『看護の未来レポート』の結果、マグネット・ホスピタルの認証審査で使われている「(ケアの質に関する)ナースに配慮した指標(nurse-sensitive indicators of quality)」を病院の質の指標に組み入れようになった。
 Masonは、「Leap Frog Groupには長年、失望させられてきたけれど、。。。患者が入院するのは看護ケアが必要であることを考えると、マグネット認証は患者ケアの卓越性を表すものなので、Leap Frog(の取り組み)が前進しているのはいいことだ」と言っている。

 (マグネット・ホスピタルとナースに配慮した指標については、このブログの過去を参照のこと
マグネット・ホスピタル:http://blog.goo.ne.jp/nurseinterpreter/e/559238c0769391366f1149efc5782083
ナースに配慮した指標:http://blog.goo.ne.jp/nurseinterpreter/e/08623ad8959890c2d3ef12ae440546e7) 

 *Leap Frog Groupは、Business Roundtable(BRT)が資金を出して2000年に創立した団体である。BRTはアメリカの大企業の経営者の団体で、日本の経団連に近いが、実際の政治的影響力はそれほど大きくはない。1999年IOMレポートのErr is Humanで、病院経営者に対して対策をとることを勧告していた。Leap Frog Groupはそれを受けて作られた。病院の安全と質の改善に、従業員とともに'leap forward'(大きく前進する)ためだという。有名なのはLeap Frog Hospital Surveyという調査で、病院間の成果について全国比較ができるようになっている
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入院するのは看護ケアが必要なため

2013-02-20 22:49:37 | 国際会議の通訳
  しばらく、看護について話を続ける。

 Patients are admitted because they need nursing care.

 この表現を最初に聞いたのは、2009年南アフリカ ダーバンで開かれたICN大会のことだ。学術集会が始まる最初に一番大きなホールで、バージニア・ヘンダーソン記念講演という90分のスピーチがあった。大会の基調講演に当たる。バージニア・ヘンダーソンの研究者で『ヴァージニア・ヘンダーソン選集―看護に優れるとは』(A Virginia Henderson Reader Excellence in Nursing)の著者でもあるイェール大学のエドワードJ. ハロラン(Edward J. Halloran)氏の講演だった。男性である。大ホールの上階にある据付の通訳ブースから同通をしていてこの表現に遭遇した。少しびっくりした。とても大事なことを言い始めたと思った。気持ちを入れて訳したことを憶えている。

 在院日数がどんどん減っていって(現実に医療費削減でそうなっている。欧米では1~3日程度、日本では1週間程度の入院で、その後在宅でケアさせる)、難しい医学的治療もすべて外来でできるようになったとしたら、入院する理由は、治療を受けるためではなく、その患者に専門的な看護が24時間必要だからということになる。入院の目的はナースの看護を受けるためなのだ。

 ハロラン氏の話の中でとても印象的だったのは、その次に出てきたことだ:だから、入院の決定は医師がする(この治療を受けたこの患者の今の状況は24時間の専門看護が必要という判断)が、退院の決定は医師ではなくナースがすべきであるというのだ。つまり、どの段階で病院での看護から在宅/地域の看護に移行すべきかを判断して、適切な地域のケア資源を選んでスムーズにつなげるというコーディネーションと患者と家族に在宅ケアに向けて必要なことを指導することは、ナースがすることができることだ。退院はナースが決定することが適切であり、ナースが引き受けるべき重要な役割であるというのである。
 
 同時通訳は、短期記憶を働かせて文脈をつなげながら訳出していく。もちろんすでに持っている長期記憶の知識と照らし合わせて確認しながら訳出作業をするが、同通の最中に頭の中で絶えず酷使しているのは短期記憶の部分である。通訳のプロセスの中で長期記憶に入っていく知識は限定されており、普遍的な重要知識、感動した内容などだけだ。ハロラン氏の講演のこの部分は、よほど私の心を動かしたのだろう。私の記憶に強烈に残り、その後も、海外の看護関係者で類似の発言はないか、いろいろ調べることになる。

(ハロラン氏の講演のときに、私は通訳者になって本当によかったと思った。その理由は、こんな講演を同通できるというだけでなく、30年前に自分が分からなくて悶々としていたことが、看護の国際会議の通訳の機会を通じて、光が差してくるようで、こんな機会を与えられていることに、このとき心から感謝した)
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景気が回復する感じはする

2013-02-19 21:51:00 | 日記
  行き過ぎた円高の是正、株価上昇、自動車や家電など輸出をリードする製造業は業績予測の上方修正、高額マンションの引き合いも増加と、景気回復の兆しがでてきている。アベノミクスの金融、財政、成長戦略に対する期待(expectation)によるものだと、ニュースで取り上げられない日はない。

 人々の期待云々の話ではなく、経済回復は感じる。通訳の仕事が動いている。会計年度末で、経営会議や執行委員会、取締役・役員会などが活発に開かれる時期ではあるのだが、それだけではないような感じだ。

 正確な数字を持っているわけではない。完全な主観的印象なのだが、通訳者になってから、仕事の忙しさに波があることは感じている。仕事の依頼が増え始めるのは、景気全体が活況になる少し前からだ。景気上昇に先行して忙しくなるのは、準備段階の会議が増えるからだと思われる、1つの領域が動くということは全体の仕事が動く。活況段階になると、大変忙しい。でも、落ちてくるのも全体よりも先行する。こういうことを、仕事を始めてから、幾度か経験した。通訳というのは景気の先行指標のような仕事という印象を持っている。

 今、日本経済は良くなっていっているという感じはしている。
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Licensure、Certification、Certificate、Credential、Qualificationの違い

2013-02-18 23:51:01 | 医療用語(看護、医学)
  医療職者の免許や認定、登録システムは各国で異なることは、これまでもこのブログで触れてきた。日本では医師や看護師の資格は名称と業務が独占されている国家資格で、厚生労働省が国家試験を実施して、合格者が免許証を受け取る。住民票登録をしている保健所に登録はしなければならないが、免許更新制度はない。

 これは一般の人々を守るために(無資格の不適格者が医師や看護師業務を行わないように)コントロールしている制度管理あるいは規制といわれるものである。国際的にみれば、国がそうした規制を行っている日本は特異的で、世界標準の考え方は、専門職者の自治規制といって、専門職者が自分たちで規制を行う:つまり、専門職者が会費を払って専門職団体を作り、それと併設する形で自治規制を行う審議会(Council)や会議(Board)を作って、資格試験を実施し、免許を下付して、登録を行い、免許更新を何年かに一回課している(その時には継続教育を実施する。専門職団体と規制団体(審議会や会議)は監査を入れて独立性と透明性を担保している。そうのようにして専門職資格を出し、それを国が国家資格として認める。

アメリカは資格登録を州ごとでしているし、イギリスは資格試験を実施しないで認証された教育を受けたものを資格登録するなど、各国で違いはあるけれど、自治管理をすることが世界のnorm(規範)であるとされ、まだ制度管理がなされていない途上国もそれをモデルにしている。これが専門職が持つべきautonomy(裁量、自己決定権)に基づく規制である。(autonomyは、「自律」と訳され長くそのように使われてきたが、「自律」というのは、実は「裁量権」を意味し、その表れの大きなものが上記の制度管理の方法である)。

 そうした規制上の違いがあるために、英語の文献を読んでいると、資格を表す、licensure, certification, certificate, qualification, credentialといった単語がでてきて、どれがどうなのか、よく分からないと感じたことがあるかもしれない。辞書を見ても区別は明確でない。実際の文章に当たらないと、使い方はわからない。

 こうした区別について記している文書がある。Pew Health Professions CommissionのTaskforce on Health Care Workforce Regulation(保健医療職者規制実行員会)が1995年に出した"REFORMING HEALTH CARE WORKFORCE REGULATION Policy Considerations for the 21st Century"(保健医療職者規制 21世紀に向けての政策の検討)という文書である。http://www.soundrock.com/sop/pdf/Reforming%20Health%20Care%20Workforce%20Regulation.pdf

 有用な個所を引用してその下に要約をつけておく。使い方の区別はつくだろう。
(Pew Health Professions Commissionは、Pew慈善信託が助成金を出して、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)保健医療職センターが管理をしている委員会で、医療労働力など政策関連のレポートを出している)

Professional “licensure” refers to permission granted by government to engage in a business or occupation or in an activity otherwise unlawful. With licensure, the government asserts that the licensee has met minimum standards of qualification* to ensure that the public health, safety, and welfare will be reasonably protected.
(licensure(免許制度):政府が与えた業務従事の許可(免許がなく行うことは不法行為になる)。免許とは、一般の人々の健康と安全、福祉が守られることを保証した最低水準の資格(適格性)を持っていることを政府が認めたこと)
 *qualificationは「資格」であるが、知識や技術だけでなく倫理も身に着けた専門家に必要な「適格性」を備えていること)

“certification” may mean several different things in different situations. State certification is a public function that protects a profession’s title. In contrast, private certification ― usually by private specialty associations or boards ― identifies practitioners who have met the standards of the private organization.
(certification(認定/認証):州(公的)認定は州がその専門職の名称を保護していること。民間認定は民間の専門団体や会議がその団体の基準を満たしたことを証明していること)

“certificates”awarded to graduates of graduate schools, community colleges, and vocational schools that only indicate completion of a specific program.
(certificates(修了書、証明書)は専門教育機関の修了証。専門教育プログラムを修了したことを示す)

 参考までに次の表現も引用しておく。
health facilities may be “Medicare certified.”Anyone or any organization can “certify” or attest to standards met.
(Medicare certifiedとなっている保健医療施設は、メデイケア診療ができる認証病院のこと)

“credential”is not usually defined in statute but is widely used by professionals, the
public, regulators and legislators as evidence (public or private) of someone’s qualifications.
(credential(資格認定(証))とは法的なものではなく、専門職者や一般人、規制担当者、政治家が使っているもので、公的民間を問わず、その人の専門職者としての資格/適格性の証拠)
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海外の論文:看護/医療におけるホイッスル・ブローイング

2013-02-15 23:40:00 | お奨めの論文・レポート
  前回からの続き

 国際看護の文書や会議の中で、「ホイッスル・ブローワーの保護の必要性」という表現がでてくることは、前回、述べた。具体的には、日常の看護の実践や研究活動だけでなく、不当な労働問題や組織全体のガバナンスに関して出ている。

 ICNの看護師の倫理綱領には、「看護師は、個人、家族および地域社会の健康が協働者あるいは他の者によって危険にさらされているときは、それらの人々や地域社会を安全に保護するために適切な措置をとる」(ICNの看護師の倫理綱領 http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/rinri/pdf/icncodejapanese2005.pdf)とあり、それを主要国の看護の規制及び専門職団体が支持している。つまり、能力のないか、あるいは非倫理的か、不法かする、システムを含めた他者によって危険にさらされた個人を保護するために、ナースは適切な行動をとらなければならないとする立場をとっている。

 誤解がないように言っておきたいが、適切な行動がいきなり、ホイッスル・ブローイングになるのではない。ホイッスル・ブローイングになるまでには、通常の報告/通報などのチャネルを通じての対応など、あらゆることがやりつくされている。
 ホイッスル・ブローイングは、正しいことをするか、不正を正すための行動になるのだが、職務に関する守秘を含めた行動義務に違反して、外部に情報(証拠になる情報を含めて)を告発あるいは通報しなければならなくなる。つまり、倫理的及び職業的なジレンマに陥ることである。

 ガバナンスが機能している正常な組織では、問題を発見した場合に報告あるいは通報するチャネルがしっかり整備されている。日常の実践問題であれば、各グループやユニットで改善活動をすることになる。民主的な意見を率直に出し合え、自分の発言が前向きにとらえられて組織改革につながっていく環境である。
 報告/通報のチャネルがないか、あっても、(周りが不正を見て見ぬふりをしており)そこで発言することが問題行動だととらえられるか、さらに機能不全な状態になると、組織ぐるみの不正かというのが、内部告発で暴かれた企業に共通の組織問題である。

 医療におけるホイッスル・ブローイングで有名なものは、Stephen Bolsinという英国の麻酔医の話だ。ブリストル王立小児病院事件( Bristol Royal Infirmary Case)である。Bolsin医師は1989年に麻酔のコンサルタント医師(医長に当たる)として入職したが、心臓手術における(小児)死亡率が高すぎることに驚き、続く6年間で改善を図って、死亡率30%を5%未満に減少させた。しかし、当該の小児外科医らと対立、調査を拒否され、状況をメディアに公表する。結果的には、政府の大掛かりな調査になり、ケネディーレポート(ケネディーは担当した議員の名前)としてクリニカルガバナンスに関する数々の勧告になって、イギリスの病院の大きな組織改革に至った。

 医療のガバナンスの話では、ここまではよく出てくる。だが、Bolsin氏のその後についてはそれ以上、触れられない。実は、このスキャンダルの後、英国では医師の仕事ができなくなってしまった。オーストラリアに移って麻酔医として働き、以後、モナッシュ大学、メルボルン大学の医学部で教鞭(上級リサーチフェロー/名誉准教授)となっている。北米、英国、豪州などで、麻酔・外科領域のケアの質改善について大きな貢献をしている。大学関係者と共同して、ホイッスル・ブローワーの保護の活動をしている。

 ホイッスル・ブローイングは、大きな葛藤の末のことであるのだが、組織や同僚からは裏切り者として扱われ、阻害され、ハラスメントを受け、最終的には辞職に至ることが多い。

 もし、患者を危険にさらしていることが分かったとき、組織の不正を知ってしまったとき、そのままにしておいたら、いずれ大きなスキャンダルになって、組織全体の存亡の危機になることが目に見えて分かっているとき、是正するための内部ルートが機能しないとき、どうするか。ホイッスル・ブローワ―には下位の職員だけでなく、管理職、経営サイドの人間も入っている。「正しいことをする」ことをどう考えるのか、今のところ、日本にそうした文献があまりないのが残念だ(日本語の内部告発一般に関する書物は、中公新書の『内部告発と公益通報』など、いくつかあるが 看護および医療ではない)。

 そうした意味でお奨めの英語の記述は以下である。いずれもネットからアクセスできる。

Mireille Kingma(2009):Blowing the whistle in poor quality care, ICHRN eLetter. http://www.aaahrh.org/newsletter/ICHRN_NEWS.pdf#search='Blowing+the+whistle+in+poor+quality+care'
(ICNにある国際看護人材センターの元所長であるキングマ氏による記事。キングマ氏は、ナースの国際労働移動について書いた『国を超えて移住する看護師たち』(エルゼビアジャパン社)の著者)。これは2ページに簡潔に書いてある。笛を鳴らす(to blow the whistle)前に、倫理および法律上の権利とそして責任を考えるようにと記している)

Faunce TA and Bolsin SNC (2004). “Three Australian whistleblowing sagas: lessons for internal and external regulation”MJA Volume 181 Number 1 5 July 2004.
https://www.mja.com.au/journal/2004/181/1/three-australian-whistleblowing-sagas-lessons-internal-and-external-regulation
(上記のBolsin氏も共著者になっている論文。オーストラリアにおける3つの事例からの教訓)

Firtko A and Jackson D (2005). “Do the ends justify the means? Nursing and the dilemma of whistleblowing” Australian Journal of Advanced Nursing, Volume 23 Number 1, 2005.
http://www.ajan.com.au/Vol23/Vol23.1-7.pdf
(このテーマでは、非常によく引用されている論文。ホイッスル・ブローイングにおけるメディアの影響を細かく分析している。メディアに流れると、本来解決すべき問題に注力すべきなのに、人々の関心と注目がその問題を通報あるいは告発した人に移ってしまう状況が述べられている。葛藤、苦労、非難など、大きな犠牲があるにしても、結果的により患者の命が守られ、より良い組織になったのであれば、「結果は手段を正当化できる」(the ends justify the means.)と主張している。「結果は手段を正当化できるか」はこの問題ではよく出でてくるテーマである)

Jackson, D. et (2010):Understanding whistleblowing: qualitative insights from nurse.Journal of Advanced Nursing.
http://www.bryanhealth.com/workfiles/cohs/whistleblowarticle.pdf
(ナースのホイッスル・ブローワ―のインタビューに基づく質研究。実際の声を記した数少ない論文)

Fletcher, J.J.et al.(1998):Whistleblowing As a Failure of Organizational Ethics. Online Journal of Issues in Nursing
http://nursingworld.org/MainMenuCategories/ANAMarketplace/ANAPeriodicals/OJIN/TableofContents/Vol31998/No3Dec1998/Whistleblowing.html
(アメリカ看護師協会のオンラインジャーナル。ホイッスル・ブローイングに至るような医療現場の状況が問題で、組織全体の倫理が機能していない証拠である。こうしたチェックは、ICAHO(合同認証員会)の基準に組み込むべきものだと主張した論文)

 この問題についてのパブリケーションは、オーストラリアからのものが多い。

 上記最初の文献のKingma氏は、「多くの国でホイッスル・ブローワーの重要性を認識して、保護する法律ができている。米国通報者保護法は幅広い保護になっているが、英国、南アフリカ、ニュージーランドでは、規定されたチャネルか当局への通報のみの保護になっている。法律があるからとすべての状況での保護にはなっていない」という。日本の公益通報者保護法は、通報者に対する解雇などの雇用者の不当処置からの保護であって、通報者の匿名性は保護されない。保護のレベルは内部、行政、外部(メディア等)通報の順になっている。

Firtko A and Jackson D の論文で、ホイッスル・ブローイングをする前にナースが考えることとして以下のことを挙げている: 
● だれの利益が守られるのか?
● だれがダメージを受ける可能性があるか?
● ホイッスル・ブローイングの動機は何か?
● ホイッスルブローイングはそれをする人と組織にどのような影響を与えるか?
● その問題について注目させるために、別の方法はあるか?
● ホイッスル・ブローイングでその問題は解決するのか?

 ホイッスル・ブローイングについては、バイオエシックスとして、基礎教育の中で採りあげ、個人および組織の倫理的な意思決定をどうするのかを具体的に議論する経験を積み上げる必要があると思う。
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