ナイチンゲール講演会終了

2011-11-22 20:34:10 | 国際会議の通訳
  今年、一番、心配していたフローレンス・ナイチンゲールの講演会が無事に終わった。ナイチンゲール著作集の編集責任者であるカナダの社会科学者Lynn McDonald氏の3回内容が異なる講演とそれに続いてのパネルディスカッションだった。カナダの現職はグエルフ大学教授で、1980年代にカナダの国会議員を6年していた。1990年代初め、社会科学研究の始まりに関する本を出したときに、ナイチンゲールについては数ページとり上げたらしい。それがきっかけで、興味を持ち、研究を進めていったとのこと。進めるうちに、その業績に驚くとともに、根拠のない批判が支持されていることに、これは、自分が正さなければならないと思ったという。

 マクドナルド氏は本当に、すばらしいスピーカーで、聴衆のニーズにしっかり焦点を合わせた話だった。逐次と生耳パナガイド同通の組み合わせでの通訳である。大東文化大学大学院の通訳プログラムの学生の国際会議見学実習を兼ねた。終わってホールを出てきたとき、「今日の会議は面白かった。勉強になった」と言っていた。看護の学会ではあるが、社会科学の視点からの話だったので、非常に興味深く、私も全く同感である。

 フローレンス・ナイチンゲールは近代看護の創始者であるとともに、19世紀ビクトリア時代の英国の社会改革者である。ナイチンゲールの救貧院改革、つまり、貧困者に十分な医療をというのは、すべての人に健康をという考え方に通じ、戦後のイギリスの国民保健サービス(NHS)につながっている。明らかに、J.S.ミルにも影響を与えていたという。ただ、当時から敵も多く、現在でも、特に、イギリスでは、誹謗中傷を受けており、ナイチンゲールの研究は全く進んでいない。日本は例外だという。

 マクドナルド氏は全世界からナイチンゲールの著作(手稿文献も含め)を集めている。全16巻の著作集で、15巻まで発行された。日本でもすでに、購入した研究者がいる。日本人でただ1人、ナイチンゲールに直接会った人がいた。津田梅子氏である。この話には、私も通訳をしながら、びっくりした。

 ナイチンゲールについては、知れば知るほど、信じられないような多くの取り組みをしていることが分かり、その大きさにびっくりする。看護学生の時代、ナイチンゲールの看護論は正直、よく分からなかった。何十年もたった今、こういう形で勉強することになったことを幸運だと思っている。

 教養も高く頭がよい分、ナイチンゲールの言葉、記述は、ウィット、パンチの効いた皮肉、言葉遊びが随所にある。これまでもナイチンゲールの著作(伝記ではなく、ナイチンゲール自身が書いた書簡も含めて)はたくさん、日本語に翻訳されているが、その翻訳作業が大変だったというのは、想像に難くない。今回の通訳で、いくつかナイチンゲールの言葉を訳す必要があって、苦慮したものもあった。これについては、今日は、時間がないので、また、別途、とり上げる。

 明日から、マカオに出張する。帰国は、日曜日の夜遅くになる。
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ボランティアフェスティバル

2011-11-16 21:24:42 | 看護/医療全般
  11月13日(日)全国ボランティアフェスティバルTOKYOという大会があって、心のケアに関する分科会で通訳をした。会場は青山学院大学の渋谷キャンパスだった。シニアの方々が熱心で、組織だったボランティア活動をして、どんどん成果をあげている。

 Ruth Campbell氏と一緒だった。20年前に日本でボランティアの話をしたとき、「日本にはボランティアは育たない」といろいろな場面でいわれ、理解できなかったそうだ。民生委員はボランティアだ。日本で見た民生委員からヒントを得て、ミシガン大学のターナークリニックという老年医学病院で、ピアボランティアという、高齢者のボランティアグループを立ち上げたとのことであった。日本のボランティアのミシガン大学での研修もかなり続いており、当初の受講生は、各地でボランティア団体を引張る存在で、講演活動も行っている。

 日曜日にフローレンス・ナイチンゲールについての講演がある。Ruthとその話をしていた。近代看護の創始者であるナイチンゲールは、医療や社会制度のための政策アドボカシー活動を行ったことを話したとき、ソーシャルワークの先駆者、ジェーン・アダムスの話題が出た。
 ジェーン・アダムスについては↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%BA

 ナイチンゲールにしてもジェーン・アダムスにしても、politicalな要素が強く大きい。特に、看護やソーシャルワークは、それを確立させようと思うと社会変革の要素が関わってくるので、政治的な視点やアプローチがなければ叶わない。ただ問題は、それを基礎教育で教えていないことだ。これはcareについて教えるのと同等に重要なことであるのに。。。そのようなことを2人で話していた。
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ピンピンコロリ

2011-11-05 21:44:19 | 医療用語(看護、医学)
  11月になった。例年より暖かな日がつづく。通訳の仕事は月末まで一気に進む。この秋の仕事の佳境に入る。体調だけが心配だ。それと喉の調子も気になる。トローチのお奨めは、『ペレックストローチ』(大鵬薬品)。上あごに貼り付けるフィルムタイプのトローチなので、そのまま話ができる。のど飴のように、休憩が終わったら出してしまう必要がない。ただ、ごく少量の抗ヒスタミン剤と抗炎症剤が入っているので4~6回/1日しか使えない。眠気がきたりボーっとすることはない。これは先輩通訳者から教えてもらった製品だ。大鵬薬品の仕事をしたとき、もらって使ったらもう手放せなくなったという。私ももらってそのときから使っている。第2類医薬品。通常の薬局には置いていないので、インターネットでワンケースまとめて購入している。

 
 11月2日は毎年恒例の慶応大学看護医療学部でメイヨクリニックのナースの講演会だった。Mayo Clinicはアメリカミネソタ州のもう100年以上の歴史のある有名な病院だ。ナースらは「メイヨのケアは世界一」という。患者は世界から集まってくる。ミネソタ州ローチェスターにメインの病院がある。多職種協働で患者のケアを計画して実施していく。ナースの勤続年数は長く、働き続けられる環境が整えられている。
 大東文化大学大学院の通訳プログラムの学生3人が見学にきた。昼食会から参加し、慶応の学生ともよく話をしていた。


 さて、表題の「ピンピンコロリ」であるが、これは、元気で過ごしてぽっくり死ぬこと。1980年ぐらいから地域的に使われていたそうだが、現在は、厚生労働省が政策の中で進めている。ここのところ、よく会議で出てくる。保健医療や看護、福祉、製薬や医療機材の会社のマーケッティングの会議でも、出てきている。元気で自分で何でもできて過ごせる人生の時間(健康寿命)を長くすることは理想なのだが、やはり70歳を越えると難しくなる。わずらう時間が長く、寝たきりにつながる要因は生活習慣病である。高齢化の時代に、いかに幸せに生涯を過ごすかということなのだが、ピンピンコロリを国が進めるのは、医療費削減という意味がある。生活習慣病の予防対策が優先事項になる。ちなみに、ピンピンコロリはPPKともいうそうだ。英訳は各自で考えていただきたい。死ぬ直前まで元気で患わず苦痛なく死ぬこと。

 10年ぶりに小沼さんとブースで一緒に仕事をした。アサイメント表の名前を見たときびっくりした。やっている領域が異なっているのでまさか、と思った。でも、懐かしかった。
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