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今年も大学が始まった

2014-04-17 23:59:59 | 通訳教育
  2月3月の通訳繁忙期を過ぎ、3月末の恒例の大東の通訳プログラムの同窓会も無事終わり、4月、本年度が始まった。今年は桜を長く楽しめた。大学の開講から10日ほど過ぎた。

 大東文化大学大学院の通訳プログラムの授業では、通訳実習Bで、通訳の質について論文を3つほど読んでディスカッションを進めるとともに、日本経済の中からアベノミクスについての論文(記事ではない)を採り上げ通訳演習をする。もうひとつの通訳実習Dでは、2010年のLancetの日本の医療特集から、国民皆保険、介護保険の持続可能性、高齢化社会の展望、長寿社会から予防保健医療(母子保健や予防接種レベルが高い)、日本の海外での医療協力などの論文を通訳演習に使う。

 青学の通訳Ⅱの授業は、「通訳とは何か」について検討したあと、サイトトランスレーション、同時通訳のポイントをおさえたあと、逐次通訳の演習を徹底して行う。前期のテーマはビジネス関連である。

 授業は「通訳とは何か」という問い掛けから授業を始める。例年、「言語の違う人たちの言葉の仲立ち」、「コミュニケーションを促進する」といった答えが出るのだが、今年びっくりしたのは、「誤解を防ぐ」という発言があったことだ。そう発言したのは今回が初めて通訳を勉強する学生である。このことは通訳が人間同士の関わりの中での活動である以上、重視すべきことで、通訳の海外論文で取り上げられる。その重要なポイントが授業の冒頭に学生の方から出てきて、これからの授業が楽しみになってきた。
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通訳に関連した対人コミュニケーションの理論(大東文化大学大学院通訳プログラム「通訳実習 B」

2014-02-04 11:30:22 | 通訳教育
  およそ一年前の当ブログで、大東文化大学大学院通訳プログラムの私の担当科目、『通訳実習 B」と「通訳実習 C」について概要を紹介した。それは基本なのだが、学生の構成と、その時点での通訳実践や教育について新たな知見が出てきて有効であると判断すれば、それを取り入れることにしている。

 昨年初めに、2013年度の内容を決めるとき、やはり、通訳者にとって必要な対人コミュニケーションの基礎理論を系統的に組み入れるべきと判断した。それまではスポットで必要な説明をしていたが、やはりそれでは不十分で、学生の頭の中で整理され、通訳の際に十分に注意ができない。

 今の通訳教育ではコミュニケーションの理論的なことは教えられずに、現場で経験を積む中で通訳者は必要な対人コミュニケーション力を身につけている。つまり、市場で残った者は結果的に身につけているのだが、それでは不十分で、修士プログラムを出て通訳者になるにはやはり理論的な理解が必要だと考えるからだ。

 先日の医療通訳者全国代表者会議の講演でも触れ、3月に日本通訳翻訳学会の通訳教育部門が発行するジャーナルに出した原稿にも含めたことだが、根拠はこういうことだ。「良い通訳」、つまり「質の高い通訳」を考えたとき、起点言語(話し手側)に正確(忠実)であり、目標言語(聞き手側)として聞きやすく、話者の意図や当該会議の目的が伝わり、当事者間のコミュニケーション全体が成功している必要がある。詳しくは、近々に発行される医療通訳全国代表者会議の報告集か、日本通訳翻訳学会の通訳教育のジャーナルの私の記述を読んでほしい。

 通訳者は、言葉の壁がある当事者間のコミュニケーションをとりもつわけだから、その立場上、通訳の最中に、当事者間の理解の行き違いに唯一、気づく立場にいる。その場合に、どのように判断するのか。医療職者と同じく、通訳者も現場では瞬間ごとに判断が求められる。専門職であるから当然である。状況を判断せず「引かない、足さない、変えない」を常に当てはめることは危険だ。

 今の通訳教育はどうしても起点言語から目標言語にどう訳すかという語学が主体になっている。スクールや学部では仕方がないが、大学院ではそうはいかない。コミュニケーション理論を効果的に組み入れることで、おそらく通訳スキルの習得は加速するし、現場に出てからの自己修正力も系統だったものになり、新たな知見を整理して実践と教育に貢献してくれると期待できる。

 以上が、大学院の通訳実習の授業にコミュニケーション理論を組み入れた理由だ。コミュニケーション理論に関する内容は「通訳実習 B」に組み入れ、通訳演習に並行して展開した。使用した教材は以下のものだ。

対人コミュニケーションの仕組みとスキル
 渡部富栄:『対人コミュニケーション入門 看護のパワーアップにつながる理論と技術』ライフサポート社

非言語コミュニケーションと通訳
・非言語コミュニケーションの概要
 Hargie, O. and Dickson, D. (2010). Skilled Interpersonal Communication  Research, Theory and Practice, Fifth Edition. London and New York: Routledge の中のNonverbal Communicationの章を読む。
・通訳論文で特に非言語コミュニケーションを採り上げたもの
 Poyatos.F (ed.). (1997). The reality of multichannel verbal-nonverbal communication in simultaneous and consecutive interpretation. Nonverbal Communication in Translation. (Benjamins Translation Library). Amsterdam and Philadelphia: John Benjamins.
Viaggio, S. (1997). Kinesics and the simultaneous interpreter The advantages of listening with one’s eyes and speaking with one’s body. Nonverbal Communication in Translation. (Benjamins Translation Library). Amsterdam and Philadelphia: John Benjamins. (pp.283-294).
Viaggioは有名な通訳者で通訳者にとって必要な非言語コミュニケーションを実践的に整理している。

交渉
 渡部富栄(2013)「交渉する:保健指導が変わる!実践・対人コミュニケーションスキル」『産業看護』(68-77)メディカ出版
 Harvard Business Review (2011)からNegotiationの論文2つ

通訳研究で通訳者と当事者間の対人コミュニケーションを採り上げた論文 
Wadensjö, C. (1997). Recycled information as a questioning strategy Pitfalls in interpreter-mediated talk. In S. A. Carr, R. Roberts, A. Dufour, & D. Steyn (Eds.), The Ctitical Link; Interpreters in the Community. (Benjamins Traslation Library) (pp.35-52). Amsterdam and Philadelphia: John Benjamins.
Wadensjö, C.. (1998). Interpreting as Interaction, London and New York: Longman.

 以上の文献を大東文化大学大学院プログラムの学生は読み込み、内容をプレゼンテーションしている。週に1回の通訳実習Bの時間内で、実務訓練と並行してそれを行っている。プレゼンは分担して、各自が前半を英語、後半を日本語で発表する。もちろんレジュメも作成して配布する。他の学生はその発表と質疑を最初の頃は逐次通訳、後期に入ると同時通訳を行う。
 特に通訳関係の研究論文は難解な部分も多いが、学生らはよくがんばったと思う。 

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通訳マラソン

2013-02-01 01:11:00 | 通訳教育
  「通訳マラソン」というのは、大東文化大学大学院の通訳プログラムで代々行われてきた訓練である。学年末に組まれることが多く、授業が終わり、修士論文を提出してその口頭面接も終わったあとで、2~3日間、同時通訳を連続的に行う過酷な訓練である。

 近藤先生が始めたものだ。かつてジュネーブで行われた国際会議で仕事をしたとき、国際会議場の同時通訳ブースで稼働していないブース(これをデッドブースという)で、ジュネーブ大学大学院の通訳学生が、スイッチをオフにして、会議を通訳していた。スイッチをオフにしているから、音声は流れない。横のブースでプロの通訳者が実際に仕事をしているのだが、それと並行して学生た行っていたらしい。臨場感のある訓練だと思う。

 それに近い場を作り、集中的に学生に同通の経験をさせることで、一気にスキルを引き上げることを目指すという、少々荒っぽい訓練なのだ。もちろん、私もその効果は、自分の在学中に経験している。今年も1月末に3日間行い、非常に効果的な実習ができた。

 通常の同時通訳は半日だと2人、1日だと3人体制で、1人15分で交代する。ただ、30分は同通の集中力が続くように訓練する必要があるとは思う。そこで、訓練では、基本的には15分交代なのだが、もう少し、長くやってみる。1日中、交代で同通をし、それが2日、3日続く。頭がウニのようになりそうになりながら、マイクからは教師の厳しい指摘がどんどん飛んでくるという状況で、訓練をする。

 最後の段階で通訳マラソンをするにはいろいろ条件がある。
・通訳ブースがあること:大東の演習室には2台、国際会議場使用のものがあるからOK
・国際会議の開会から閉会までの録音音声が確保できている:学内での会議や、教師が仕事で行ったときに録音させてもらったもの。テーマは政治経済、社会学的なものがよい
・学生のレディネス
  通訳プログラムで2年間、逐次同時通訳、政治経済的な内容をしっかり勉強し、また自分で論文も書いて理論の展開を理解予測できる力が備わっている。

 今回使った材料は、
・カナダの地方分権・移民・高等教育に関する国際会議のテープ
・NHK「‘どうする日本’新政権に問う」ビデオ
・NHKスペシャル「日本国債」ビデオ

 私の考えではあるが、プログラム修了段階で、NHKの日曜討論を日英で何とか、同通できる力をつけてほしい。討論がどんどん進んでいくので、大変なのだが、そこまで行く前に、私の授業ではNHKスペシャルの政治経済的なテーマの番組を同通できるように訓練はしている。同じような表現が繰り返し出てきて、通訳の工夫が可能であるし、テーマ内容も学ぶことができる。

 そうしたプロセスを踏んで、選んだ材料で、集中した良い訓練ができた。それがとてもうれしかった。
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通訳実習D(大東文化大学大学院通訳プログラム:医療・保健系)

2013-01-31 14:55:00 | 通訳教育
  (前回に引き続き、大東文化大学大学院通訳プログラムの担当講座について)
 「通訳実習 D」は完全に、医療・保健・社会保障関連の問題および政策関連の内容に特化したクラスである。私が担当するのでそうさせてもらっている。コミュニティー通訳のジャンルに入っている医療通訳も最初にカバーしている。医療方面の通訳の入り口として、医療職者の一員としての倫理とともに、基礎的な学術内容から学習を進めることができるからだ。そして、さらに、保健医療系、特に社会経済政策が絡んだ内容での会議通訳を最終的にはできることを目指して、教材内容を選んでいる。

 こうした内容に特化したプログラムは、大学や大学院、民間スクールや自主団体にはないようだ。私が大学院に入る前に通訳スクールに行ったことがあったが、その時には、解剖学の英語のテキストをネイティブが録音した教材を使っていた。今も、それほど変化はないように思う。

 語学を主体にやってきた学生が、医療の領域の話を理解しようとすると、この領域はテクニカル領域だからと、膨大な単語と格闘する。医学系の用語は特殊だから、単語はたくさん覚えなければならないのだが、それだけで終わってしまうようで残念だ。そんな内容では、面白くないだろうと思う。

 どの領域にも前提としていることがある。例えば、経済学を学ぶ時の前提は何か。大学の経済学部に入ると、1年生から順番にそうしたことが学べるようにプログラムが組まれている。医療の分野もそうだ。医療は細分化されており、全体の統一した命を守る、健康を増進するという目標に対して、医学部は、看護学部は、薬学部は、医療社会学の領域はと、それぞれが、大事にしている柱がある。
 そうしたことを知って理解し、医療全体を俯瞰して、個別の事案に対応できる基礎力が訓練では必要になる。

 発声および通訳のスキル(もちろん理論を加味して)の基礎については前回説明した「通訳実習 B」で習熟させる。その通訳スキルを使って「通訳実習 D」では、具体的な医療関連の内容教材で学習を進める。

 これまで大東のプログラムでは一部実践したり、また青山学院大学英文科の通訳の後期ではダイジェストにかなり短縮した内容をとりあげてきたが、今回は2年、しっかり指導できたので、使った教材等、下記に説明する。

2011年 (前期~後期)
■コミュニティー通訳から医療通訳へ
 最初は、医療通訳(地域で医療サービスを受ける場合に必要な通訳サービスなのだが、いまだ制度化されておらず、ボランティア主体で行われている)について学習する
 ・カリフォルニア医療通訳教会の倫理行動規定(分担して英語日本語で内容を発表する。プレゼンター以外はそれを逐次通訳)
 ・治療的コミュニケーションについて(渡部富栄著(2011)『対人コミュニケーション入門 看護のパワーアップにつながる理論と技術』pp.109-148(ライフサポート社刊):医療者が医療面接で必ず使う技術なのでそれを学んでから医療通訳のビデオを見る
 ・医療通訳の訓練ビデオ(アメリカのカイザーパーマネンテという全米規模の大病院グループが作っているビデオで、医療職者特に医師に対しての教育ビデオ)
 ・診療場面を設定したロールプレイ(患者、医療者、通訳者)
■日本とアメリカの医療保険制度の違い
 ・「健康社会を目指した日本の過去」Lancet日本特集 サイトラ(英→日)
 ・李啓充:『アメリカ医療の光と影』『続アメリカ医療の光と影』(医学書院刊) サイトラ(日→英)
■医療・保健・福祉問題
 ・小児がんの教育プログラム:治療の進歩で長期生存に入った子どもたちのために必要な教育の整備(スピーチ音声)遂次/同時通訳訓練
 ・『沈黙の壁』(Wall of Silence):アメリカの医療過誤についてのスピーチ 遂次/同時通訳訓練
 ・東日本大震災後の災害ボランティア スピーチ原稿のサイトラ(英→日)
 ・社会学から見たフローレンス・ナイチンゲール スピーチ原稿のサイトラ(英→日)

2012年 (前期~後期)
■日本の医療
 ・池上直己、J.C.キャンベル著(1996):『日本の医療 統制とバランス感覚』、中公新書
(上記の英語版:John Creighton Campbell, Naoki Ikegami (1998):The Art of Balance in Health Policy Maintaining Japan's Low-Cost, Egalitarian System, Cambridge University Press.)を分担して英語および日本語でプレゼン。その他の学生は逐次通訳) このコラムで「お奨めの本」として紹介したことがある。1996年刊の本だが、日本の医療の構図を歴史的に記したテキストにふさわしい本)
■高齢者医療
 ・ Lancet日本特集から高齢者医療に関する論文 サイトラ(英→日本)
 ・John Campbell and Naoki Ikebami (2000):Long-Term Care Insurance Comes To Japan, Health Affairs.
 ・Naoko Muramatsu and Hiroko Akiyama(2011) :Japan: Super-Aging Society Preparing for the Future, The Gerontologist Vol.51, No.4, pp.425-432.
・秋山弘子「超高齢化社会のサクセスフルエイジング」http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/jp/materials/pdf/vision-wg/11akiyama.pdf
 上記の資料から分担して内容を英日両方でプレゼン。他の学生は逐次通訳
■医療の質と安全 IOMレポート(1999) To Err is Human.(内容はこのブログでも以前、説明している)
分担して各自が英日で発表、他の学生は通訳
■製薬業界 佐藤健太郎(2010):『医薬品クライシス 78兆円市場の激震』(新潮新書)サイトラ(日→英)、教師のプレゼンを同通
■EBM(エビデンスに基づく医療)とコクラン共同計画 サイトラ(英⇔日) 
  渡部富栄(2012):「「エビデンスに基づく」という言葉の始まり」、インターナショナルナーシングレビュー日本版Vol.35, No.4、日本看護協会出版会
  その他
■治験について:第1相~第3相、市販後監視までの概要  サイトラ(英⇔日)
■医療の個別の話題
・NHKスペシャル「ノーベル賞・山中伸也 iPS“革命”」ビデオ 日英同時通訳訓練
・医療労働の論文(JAMAから:アメリカ医学界雑誌)サイトラ(英日)
・オンコロジーの論文(乳癌の分子標的療法の国際治験:Lancet)サイトラ(英日)

 医療で取り上げられている問題は政治経済、政策的なものが多く、ここから入っていくことで、語学を主体にやってきた学生にも自分の生活に近い話として興味がもてるし、理解も深め、問題意識を持つことができる。一つのテーマを3回ぐらいかけて、学生が順次発表してそれを通訳していく中で、必要な語彙が自然に身に付き、文脈および前提を理解していく。もちろん、英語と日本語のスピーチプロダクションの力は強化され、その力は通訳力の向上につながる。最終的には、LancetやJAMAといった医学のメジャーな論文も、辞書を引きインターネットで調べながら読み進めることができている。医学論文を最初に手にしたとき、何を書いているのか分からないと怖気づくようだが、「すべての答えは文章(言葉)の中にある、自分たちは言葉の専門家だ。必ず、読み解くことができる」という信念で取り組んできている。

 通訳学生、特に大学院でどうしても指導したいとかねがね思っていたことを、2年という時間で教えることができた機会に本当に感謝している。
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通訳実習B(大東文化大学大学院通訳プログラム:ビジネス・経済・政治学系)

2013-01-30 11:58:00 | 通訳教育
  表題は、大東文化大学大学院経済学研究科の通訳プログラムの中の私の担当する講座の1つ。基礎的な通訳理論と技術、そしてその習熟を、ビジネス・経済・政治学といった社会学系の題材を使いながら訓練する。今日はこの2年間、この講座で何をやったかを記す。

 看護を始めとした医療関係の方々には、直接関係がないが、会議通訳者の訓練とはこういうことをしているということで、関心があれば読んでいただきたい。発声訓練などは、人前で話すときの参考になるかもしれない。次回の「通訳実習 D」で使われている教材は、現在の医療の動向などをとりあげているので、興味がもてるかもしれない。

 このプログラムは1995年に創設されたもので私は第一回目の修了生である。会議の通訳専門職の教育を目指して作られたもの。詳しくは大学および個別のHPをご覧いただきたい。
http://www.daito.ac.jp/education/graduate_school/department/economics/interpreter/index.html

 通訳論や論文指導はもちろんがあるが、通訳実習はAからFまであり、理論に根差し研究的視点で技術をとらえることができる通訳専門職の教育を目指す。私は通訳実習のBとDを担当している。「通訳実習 D」は、私の専門である医療保健のテーマに特化した講座である。「通訳実習 D」については、明日に書く予定だ。

 一昨日に、補講で同時通訳の集中訓練が終わって、3月には修了生を出す。講座は一年ものなのだが、2年間での最終到達点を見据えて組み立てきた。ここで書くのは、実践の記録みたいなものだ。私がこのプログラムで学び、通訳者そして教育者として、効果的であったと、組み入れてそして修正してきた内容になる。

1年目
2011年 前期
・通訳とは何か:起点言語から目標言語への意味の再構成であること。等価の意味を自分の言葉で再構成していく創造的活動。必要な通訳理論をダイジェストに引用
・発声訓練:声帯をしっかり開いた輪郭のはっきりした張りのある地声を作る(これが一番マイクの乗りが良い)。「五十音」(北原白秋)や歌舞伎の口上の「外郎売」など、音声訓練の定番の教材をまず使って無声化、アーティキュレーションの明瞭化をマスター。あとは自分で朗読教材を持ってきて、授業最初の10分間で必ず朗読する
・通訳スキル:リプロダクション、要約、メモリー訓練、頭からの訳、サイトトランスレーション、同時通訳(原稿あり/なし)、ノートテーキング、逐次通訳
・対人コミュニケーション理論:通訳に必要な部分のレビュー。推論と文脈の重要性
  拙書『対人コミュニケーション入門 看護のパワーアップにつながる理論と技術』(ライフサポート社刊)から、関連ポイントをまとめなおして説明している。
・通訳倫理
・通訳市場の動向
教材は、江戸時代以降の日本の歴史(農業国から工業国、グローバルコミュニケーションの時代)の変遷を抑えた政治学者のスピーチ、日本型経営の論文(日英)、現在の製造業の経営(インタビュー、ジャーナルなど)。前期では、現在の国際情勢の中での日本の理解を重点に置きながら、通訳スキルを身に着けていく。

2011年 後期
 前期で学んだ通訳スキルを習熟させる。特に逐次通訳、サイトトランスレーションの強化(英日両方)
教材は、Creating a World Without Poverty(Muhammad Yunus)を学生ら分担して発表(英語日本語両方でのプレゼン)ほかの学生はそれを逐次通訳する。途上国経済、マイクロクレジットなど学ぶ。この音声教材も使い、訓練を行う。その他、カナダの移民政策などのスピーチ。自分で英語と日本語のスピーチを作り行うことで、重点を中心に論点を取捨選択し、相手に分かり易い効果的に論理を組み立て、音声を調整するなど、通訳におけるパブリックスピーキングの基礎要素が身につく

2年目
2012年 前期
 さらにスキルを習熟させる。特に 日→英通訳の強化。逐次から同時通訳へ重点をシフト
・日本通訳翻訳学会の船山会長のジャーナル寄稿文、消費減税のペーパー
・マネー資本主義(リーマンショックなど)
・アジア開発銀行総裁インタビュー
・白熱教室(動機か結果かどちらが大切か)
・投資家広報(IR):何冊か本を担当して、発表する。ほかの学生はそれを通訳

2012年 後期
 総仕上げの半期
・Negotiation(交渉)について、コミュニケーション理論を読む:分担プレゼン(英日両方)、他の学生はそれを通訳
・未来への提言(ドナルドキーン)
・IMFレポート Can Women Save Japan?
  翻訳スキルのレビュー
・語用論、フェイス、ポライトネス(間接的表現についての考察):分担発表(英日両方)、他の学生はそれを通訳

通訳マラソン
(別途説明する)
 
 

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