David M. Musson, Robert L. Helmreich (2004): Team Training and Resource Management in Health Care: Current Issues and Future Directions, Harvard Health Policy Review Vol.5, No.1, pp.25-35.
http://homepage.psy.utexas.edu/homepage/group/helmreichlab/publications/pubfiles/musson_helmreich_HHPR_2004.pdf
5月のICNの大会の準備で、基調講演者のダイアナ・メイソンの動画か音声はないかと、ネットを捜していた。YouTubeで、ある講演を見つけた。この論文は、メイソンが、医療チームにおける対等な関係について話しているときに、「まだ読んでいなかったら、ぜひ読むといい。いいペーパーだから。ネットでフリー・ダウンロードできる」と言っていたものだ。そのあと、すぐに読んだ。2004年のものだけど、邦訳されてはいない。だから、ブログでは紹介しようと思っていた。
CRM(Crew Resouce Management:乗務員資源管理)という航空機業界で使われている事故防止訓練(シミュレーション)がある。CRMは、医療において、事故の予防と低減のために、チームでの訓練に使われている。この論文は、安全なケアを提供できるチームを作るためにCRMを用いるときにの重要点と、今後の方向性について述べている。
印象に残ったのは、CRMの概要が説明されているところだ。医療の安全管理において、チームでは、ミスをしてもそれを率直に報告でき、それを元に学習できる雰囲気や環境を造っていくことは、よく知られている。CRMには、それだけではなく、重要なポイントがある;
チームではリーダーとフォロワーがいて、それぞれの役割がある。ただ、自分の役割を果たすだけでは、安全で成果の高いサービスを提供できない。例えば、フライトチームのリーダーであるパイロットは、フライトの前にチームメンバーを集めてブリーフィングをする。計画や予測、想定される問題点などを事前に説明するのだ。フォロワーも不明な点があればブリーフィングを求める。また、チームでは他のメンバーの行動をモニターして検証することが、SOP(Standard Operating Procedure:標準手順書)の記されている。でもこれは、チェッカーではない。チーム全体に注意を払い、問題があった場合には、相手を尊重しながら明瞭に伝えられ、また聴ける、コミュニケーション力の指導がしっかりなされているのだ。建設的な関係を作れる力を身につけ、他のメンバーに働きかけることが、各自の責任であり義務でもある。人間の能力には限界があり、それを前提にして、安全対策を採っている。心身の疲労がミスの確率を高めることも、学ぶ。だから、パイロットが、フライトの前段階のブリーフィングでは、個人的な問題(家族の病気など)が精神的なノイズ(コミュニケーションの阻害要因)になって支障が起る可能性のある場合は、チームのメンバーに自己開示することも、まれなことではない。こうした訓練の結果、アメリカでは、パイロットの専門文化が変化したという。医療職者の自己完結的な文化を変えていくために、医学生や看護学生の段階から用いるべき方法だとしている。
アメリカで、CRMが医療に導入されたのは、2000年のIOMのレポートを受けてだ。IOM、Institute of Medicine:アメリカ科学アカデミーの医学研究所は、アメリカでの医療事故の多さから、'To Err is Human: Building a Safer Healthcare System'という報告書を出した。その勧告にある安全な医療チームを作る1つの方法が、CRMなのだ。
筆者は、テキサス大学の研究者である。Mussonは医師/心理学者で、Helmreichは、心理学の教授だ。医療では、航空業界の借り物ではなく、医療に適した形で修正していくことが今後の課題だとしている。
飛行機では、ミスは、乗客乗員の命につながる。もちろん、自分の命もそこに入っている。必死で安全対策を進めてきたのだ。CRMは医療だけでなく、原発関連でも応用されているようだ。ネットにも情報は出ているし、論文もある。
大東大大学院の通訳プログラムでは、後期に、医療過誤の問題を取り上げる。"Wall of Silence"(『沈黙の壁』)の著者の1人、ローズマリー・ギブソンの講演を使う。そこでは、冒頭に、IOM や'Too Err is Human'も、もちろん、出てくる。
http://homepage.psy.utexas.edu/homepage/group/helmreichlab/publications/pubfiles/musson_helmreich_HHPR_2004.pdf
5月のICNの大会の準備で、基調講演者のダイアナ・メイソンの動画か音声はないかと、ネットを捜していた。YouTubeで、ある講演を見つけた。この論文は、メイソンが、医療チームにおける対等な関係について話しているときに、「まだ読んでいなかったら、ぜひ読むといい。いいペーパーだから。ネットでフリー・ダウンロードできる」と言っていたものだ。そのあと、すぐに読んだ。2004年のものだけど、邦訳されてはいない。だから、ブログでは紹介しようと思っていた。
CRM(Crew Resouce Management:乗務員資源管理)という航空機業界で使われている事故防止訓練(シミュレーション)がある。CRMは、医療において、事故の予防と低減のために、チームでの訓練に使われている。この論文は、安全なケアを提供できるチームを作るためにCRMを用いるときにの重要点と、今後の方向性について述べている。
印象に残ったのは、CRMの概要が説明されているところだ。医療の安全管理において、チームでは、ミスをしてもそれを率直に報告でき、それを元に学習できる雰囲気や環境を造っていくことは、よく知られている。CRMには、それだけではなく、重要なポイントがある;
チームではリーダーとフォロワーがいて、それぞれの役割がある。ただ、自分の役割を果たすだけでは、安全で成果の高いサービスを提供できない。例えば、フライトチームのリーダーであるパイロットは、フライトの前にチームメンバーを集めてブリーフィングをする。計画や予測、想定される問題点などを事前に説明するのだ。フォロワーも不明な点があればブリーフィングを求める。また、チームでは他のメンバーの行動をモニターして検証することが、SOP(Standard Operating Procedure:標準手順書)の記されている。でもこれは、チェッカーではない。チーム全体に注意を払い、問題があった場合には、相手を尊重しながら明瞭に伝えられ、また聴ける、コミュニケーション力の指導がしっかりなされているのだ。建設的な関係を作れる力を身につけ、他のメンバーに働きかけることが、各自の責任であり義務でもある。人間の能力には限界があり、それを前提にして、安全対策を採っている。心身の疲労がミスの確率を高めることも、学ぶ。だから、パイロットが、フライトの前段階のブリーフィングでは、個人的な問題(家族の病気など)が精神的なノイズ(コミュニケーションの阻害要因)になって支障が起る可能性のある場合は、チームのメンバーに自己開示することも、まれなことではない。こうした訓練の結果、アメリカでは、パイロットの専門文化が変化したという。医療職者の自己完結的な文化を変えていくために、医学生や看護学生の段階から用いるべき方法だとしている。
アメリカで、CRMが医療に導入されたのは、2000年のIOMのレポートを受けてだ。IOM、Institute of Medicine:アメリカ科学アカデミーの医学研究所は、アメリカでの医療事故の多さから、'To Err is Human: Building a Safer Healthcare System'という報告書を出した。その勧告にある安全な医療チームを作る1つの方法が、CRMなのだ。
筆者は、テキサス大学の研究者である。Mussonは医師/心理学者で、Helmreichは、心理学の教授だ。医療では、航空業界の借り物ではなく、医療に適した形で修正していくことが今後の課題だとしている。
飛行機では、ミスは、乗客乗員の命につながる。もちろん、自分の命もそこに入っている。必死で安全対策を進めてきたのだ。CRMは医療だけでなく、原発関連でも応用されているようだ。ネットにも情報は出ているし、論文もある。
大東大大学院の通訳プログラムでは、後期に、医療過誤の問題を取り上げる。"Wall of Silence"(『沈黙の壁』)の著者の1人、ローズマリー・ギブソンの講演を使う。そこでは、冒頭に、IOM や'Too Err is Human'も、もちろん、出てくる。