
教会の「福音の教義クラス」でモルモン書を読む年度が半分過ぎて、新しくモルモン書に英語の現代語版が出ているのを知り購入して読み始めた。ブリガムヤング大学のマイケル・ヒックス教授(音楽が専門、詩作でも知られる)によるもので、原題は The Street-Legal Version of Mormon’s Book 、2012年に出版されている。
「通りで話されているれっきとした大衆語版」ということか。(英語 street-legalは「エンジンも車体(ボディー)も改造し、飾りつけた高速レジャー車」を指す)。新約聖書がギリシャ語の日常語で書かれていることにならい、現代米文学にも現れる今日の言葉によって思い切って書き直した(rewriteした)と言う。著者はIN19:23 にあるように、聖文を自分たちに当てはめて利益となり、知識となるようにする、それが目的であったと序文に記している。
私は今、モルモン書を英語で読むのにほとんど苦もなくスラスラ読んでいるが、一般の英語とは大きく異なっていることを承知している。英語で書いたり、話したりする時は影響されないようにしないと通用しない。変な顔をされるだけである。それで同じ読むなら自然な英語で読みたいという希望があった。この版はその意味で最適で、案の定私にとって知らない単語や表現が頻出で、遅ればせながら一種の軽い修行である。
読んでいてすぐ気づくのは、完全に別の言葉で語り直している(paraphrase)ということである。小気味よく生き生きしていて、面白くさえある。ついうなづき、笑ってしまう。しかし、モルモン書の筋はきちんと追っている。
これまで紹介してきた三つの現代英語訳と比べれば最も大胆な書き換えで、比較すると次のようになる。上から今日に至るに従って、意訳、言い換え(paraphrase)の度合いが大きくなっている。
1. 教会公認版 1830, 1981, 1985年
2. 「現代語平明版」 1995年。Easy-to-Read Book of Mormon, by Lynn Matthews Anderson. Estes Book Company.
3. 「平明英語版」 1998年。A Plain English Reference to the Book of Mormon, by Timothy B. Wilson. Bonneville Books.
4. 「現代の啓示: 平明な英語に簡潔に翻訳されたモルモン書」 2005年。Modern Revelation - - The Book of Mormon: Concisely Translated into Plain English, by Thomas Johnson. WisdomSeed Press.
5. 「モルモン書大衆英語版」 2012年。The Street-Legal Version of Mormon’s Book, by Michal Hicks. Tame Olive Press.
5つの版の比較例。(IIN2:25)
1 公認版
Adam fell that men might be; and men are, that they might have joy.
2 L.M.Anderson 版。
Adam [and Eve] fell so people could be, and people are so they can have joy.
3 T.B. Wilson 版。
Adam chose to fall from his state of innocence in order to have children, and in this fallen world, his children are meant to have joy.
4 T. Johnson 版。
Adam fell so that men might know joy.
5 M.Hicks 版。
Adam “fell,” as we say, for all of us to exist. And we exist for joy.
モルモン書が価値ある書物であると信じ、人々にも読んでもらいたいと思うなら、日本語でも同様の試みがなされてよいと思う。モルモン書は英語と同様今の形では決して読みやすい本とは言えないからである。
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認めていないとなれば、版権はどのようにクリアしているのでしょうね?
英語のニュアンスが私にはよくわからないのですが、
日常で使われる表現を用いているのであれば、読みやすい反面、文面から得られる威厳が失われるようにも感じます。
その点はいかがなものでしょう?
現代訳が分かりやすく読者にとってプラスになるものであれば、聖徒に支持されるかもしれませんね。
これからの評価が気になります。
>教会もこの現代訳を認めているのでしょうか。
いいえ、Anderson 版が出た時も教会は無視し、奨励しませんでした。アンダーソンは子供も分かるBofMを目指し、よい貢献(丁寧な作業)をしたと私は思っています。
>読みやすい反面、文面から得られる威厳が失われるようにも感じます。
その通りです。謹厳な会員には「冒涜」と受けとめられる恐れがあります。自由な境地に達している知識層は、意訳として読めばOKと思うでしょう。
書き換えられた本文の形で注釈を読んでいるような感じです。今アルマ書を読んでいます。