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カズオ・イシグロ「日の名残り」(or 「一日の残された時間」、「生涯の残された時間」) 

2017-10-10 01:05:11 | モルモン教関連

12年前の2月、広島国際学院の市民講座で英文学について少し話をした。その時担当した内容より。

 [Kazuo Ishiguro,1954-]  

カズオ・イシグロ作「日の名残り」1989年(or 「一日の残された時間」「生涯の残された時間」)

  要旨: 英国のある執事スティーブンスの物語。彼はダーリングトン卿のために生涯仕えてきたが、高齢に達して自分には生涯選択する機会がなかったのではないかと振り返る。しかし、これは悲観的な物語ではなく、気高い調子で幕を閉じる。この執事は今まで過ごしてきた人生を受け入れ、残っている時間を最大限に活かそうと努める。人の品格や尊さとは何かを問うのがこの物語の主要なテーマである。

  抜粋: 人は自分のことを次のように思うことが時々ある。「私は自分の人生でひどい間違いをしてしまった。」。。。しかし、今や時計の針を戻すことはできない。すんでしまったことにいつまでもとらわれていることはできない。人は自分の人生が大体の人たちと同じくらい良い人生であった、あるいは多分もっと良かったことに気づいて感謝するべきである。

  他の作品からの抜粋: 私たちの国は過去にどんな間違いを犯したにせよ、改善してよい方向に向かう可能性がある。若い世代に幸多かれと望むばかりである。(「変転する世界の芸術家」’86)

The Remains of the Day を読んだ時、執事 (butler) が外部に重要な情報を伝達したり、交換して、その肩書が与える印象より社会で重要な役割を果たしていたことを知った。ほんの1冊を読んだだけであったが、この著者を身近に感じていたので、今回ノーベル文学賞を受賞されたことが大変嬉しい。また、知り合いの末日聖徒や自分にとって示唆に富む物語りであると思う。



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2 コメント

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私は映画を観ました (昼寝ネコ)
2017-11-10 13:04:19
 大変ご無沙汰しております。約2年前に札幌で独居の母が、脳に腫瘍が転移し、遠距離介護が始まりました。昨年5月に他界し、後始末やらに忙殺されて、遅延案件が累積したため、今でも追いついていません。

 さて、日の名残りは映画で観ましたが、印象に残っていました。確かアンソニー・ホプキンスが執事役だったと思いますが、ある意味では派手さのない、どちらかというと内省的なストーリーだと思いますので、よくノーベル賞を受賞したものだと驚きました。逆に励まされる思いでした。

 自分だけでなく、誰にとっても人生の残り時間は分かりませんが、最終的にゴールに到達できなくとも、ゴールに向かって進み続けていれば、途中で終焉を迎えても悔いはないと思っています。最近はそのような心境になりました。

 冬に向かいますが、お元気でお過ごしください。

 
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近況 (沼野)
2017-11-10 22:39:50
久しぶりにメッセージを寄せていただいてありがとうございます。お母さまを亡くされ、ご愁傷様です。お疲れのことと存じます。

私は地域公開講座に備えて英文で読む経験を致しました。もうだいぶ昔のことです。英国社会の一面を見、また作者の一作品を鑑賞する良い機会となりした。

もう今のように多少の精神活動ができるのは、数年ではないかと覚悟しています。現在「日本の末日聖徒人物誌」なるものができればと思って、ゆっくり筆を進めています。
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