亡くなられた菅原文太さんとの出会い(スクリーン上での)は、1972年の深作欣二監督『現代やくざ 人斬り与太』でした。
深作作品との出会いといってもよかったのですが、続編『人斬り与太 狂犬三兄弟』、そして〈仁義なき戦い〉シリーズへとなだれ込んでいった頃は、劇場通いが特別なものだったように思えます。
私にとっては一連の「深作×菅原」作品が日本映画の最高峰なのかも。
やくざ映画とはいえ、それまでの東映任侠路線とはまるで違っていました。義理人情を謳いあげる様式美とは無縁の、暴力への渇望。モラルや掟を振り払い、狂気の沙汰へ突き進んでゆく男の姿には、激しい戦慄を覚えます。と同時に、すべてを脱ぎ捨てた時、人間には何が残るのか。根源的なヒューマニズムへの問いかけもあったのではないでしょうか。
主演した菅原さんの個性が、そうした作柄にぴったりでした。怖くて、美しくて、もろくて、激しくて、哀しい。
ですから、〈トラック野郎〉は私にとっては余計なものでした(あれもまた菅原さんだったのではあると思いますが)。
私にとって、菅原文太は深作監督と組んでこその俳優でした。
素晴らしい映画をありがとうございました。あなたの映画を観ることで(そして晩年の言動に触れることで)、私の人間観・人生観は大きく影響されました。ご冥福をお祈りします。
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