惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

『双生児』

2007-05-15 20:27:20 | 本と雑誌
 ふえ~疲れました……。本を読むにも体力がいります。
 必死で読んで読んで、締切に間に合わないので早起きして読んで、なんとか原稿を書いて送りました。

 でも、クリストファー・プリーストの『双生児』(古沢嘉通訳、早川書房)を読めたのは大いなる幸せ。1年に1度出会えるかどうかという見事な出来栄えの小説であります。

 ルドルフ・ヘスやウィンストン・チャーチルの人物像が素晴らしい。彼らのセリフもいかにもという感じで、唸らされました。
 ただし、彼らは映画でいえば「助演賞」もの。主演の一卵性双生児の男2人の描き分けは、さらに良いのです。特に、良心的兵役忌避者のジョーの人柄が徐々に浮かび上がってくるところ。あるいは「主演女優」たる女性の寄る辺ない、不安な立場とか。

 しかし、何といっても凄いのは、あり得たかもしれない現実の数々と、そこに生きる人たちの軌跡をまざまざと想起させ、さらにそれらをさりげなく交錯させてみせる、巧みな仕掛け。思い出すたびに、うっとりします。
 この感慨もまたSFならではのものなのでしょうが、それにしてもなんと繊細なことか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿