ロシアのアンナ・ポリトコフスカヤ記者射殺事件で容疑者10人の身柄を拘束(毎日新聞)。
容疑者のうち5人はFSB(ロシア連邦保安庁)と内務省の元職員で、さらにそのうち2人は拘束時、現役だったという。
FSB職員の一部が犯罪者集団と化していることは、リトビネンコの告発にありましたが、今回の容疑者もそうした一味なのでしょうか。
もし、そうだとして、動機は? 自分たちで殺害を意図したのか、それとも誰かに言いつけられたのか、それともカネのためにやったのか。
会見した検事総長は、英国に亡命した富豪の政商ベレゾフスキー氏の関与を示唆し「ロシア国内情勢を不安定化させ、ロシア指導者(森下註:プーチン大統領ですね)の評判を落とすこと」が動機だとの見方を披露したとか。
FSBや内務省の職員がポリトコフスカヤ記者の取材で何か掴まれていた可能性はないのでしょうか?
最後の著書『ロシアン・ダイアリー』(鍛原多恵子訳、NHK出版)でアンナさんは、北オセチアにおいてFSBがやっている治安対策、内務省職員による刑務所での拷問などに触れていました。こうした取材を進めることで、自分たちの足元が危うくなったと感じる人たちが出てきたことも十分に考えられそうです。
今後の捜査と報道に注目したいところです。
〈小説推理〉10月号が出ました。担当しているSF評のページで、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『輝くもの天より堕ち』(浅倉久志訳、ハヤカワ文庫SF)、ロバート・シェイ&ロバート・A・ウィルスン《イルミナティ三部作》(小川隆訳、集英社文庫)、機本伸司『スペースプローブ』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)を取り上げています。
《イルミナティ》はカウンターカルチャー何でもありのトンデモ「反」伝奇小説。キンメリアのコナンまで言及されているのにはあきれました。
ティプトリーの初めての長編翻訳は、作家が自らのテーマを追究することについて考えさせられました。今年いちばん印象の深い小説になるような気がします。