すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.21 それぞれの途 後編

2009-05-30 18:08:22 | 小説
前回は、失礼しました。

時間前に、ちゃんと打てるつもりだったんですけれど、
指が動くのが、遅いんですね。
間に合いませんでした。

今回は、後編になります。

前回をまったくもってハンパなとこで切ってますので、
お忘れかもしれませんが、

説明もしにくいので、

忘れた方は、前回を読み直していただくことをお願いして、
(あ、不親切

続きから、いきます。

よろしければ、お付き合いください。


また、やわ。
どうして、そう、すぐにマイナス思考になるんかなあ。
落とし穴があったって、落ちんかったら、ええやん。
もし、落ちたとしても、這い上がったら済むこと、でしょう?


『簡単に言うなぁ。這い上がれると、思うか?』

大丈夫やって。
もう、前みたいに、独りとちゃうでしょ?
家族だっていてるし、なにより、大事な仲間がそばにいてるんでしょ?


『・・・・・・』

それに、私がいること、忘れてへんよね?
あなたが、どんだけ深い落とし穴に落ちたとしたって、
私がいる。
身体は遠く離れてて、いつも傍にはおられへんくって、
実際、
私の力なんか、何の役にも立たへんのかもしらんけど、
それでも、
あなたは一人じゃないんやからね。
どんなことしたって、助けてあげる。
たとえ、世界中を敵に回したって、
私だけは、あなたの味方でいる・・・・


『ぶわっ・・・あっはっはっははっはははは

なに? 今のとこ、笑うとことちがうもん。

『安心した。俺には、何より強い味方がおったってことか』

そうよ、忘れないで。

『ほっとしたら、なんや、早よ、逢いたなったわ』

せやから、さっきから、逢いたい、って、言うてるのに。

『あかん、せやったら、なおさら、俺もちょっと我慢や。
だから、学校、行っといで』


ええーっ?
今、会いたいって言うたのに。なんでぇ?


『学校、終わったら逢えるから。
まあ、ちょこっと、時間は少なくなるかもしらんけど、
ほんでも、離れてても、傍におるんやろ?
せやったら、大丈夫やんか。
俺が仕事、大事にすんのと同じように、
お前はお前のやりたいこと、大事にせなアカン。
学校は、そのための場所やろ?』


なんか、いいように言いくるめられた気ィが、せんでもないんやけど。
さっきの答えも、まだ、もらってないし。


『あほ。
逢うてから、気の済むまで、なんぼでも言ったるがな。
俺に出来ることやったら、なんでも、な。
今、サイコーにええ気分やから。
やっぱ、たまに電話で声聞くんも、ええもんやな。
メールの文字だけじゃ、こうはいかんわ』


ほんとに、逢えんの?

『疑り深いな。逢えるって、言うてるやん。
明日の午後までは、ほんまに暇やって』


じゃあ、学校行って来る。
講義、5時には終わるから、そしたらまた、連絡する。


『ああ、そやな、そうしよか』

あとで、ね。

『ぉん。待ってるわ』



終わりがけの彼の声が、彼女の耳に優しく残った。





最初の、
ぶっきらぼうで、無愛想な声のトーンとは全く違う。
ふたりきりでいる時のような、甘い声。

彼の声を聴くまで、
あんなに最低だった気分が、すっかり晴れていて。

起きぬけの頭痛も、
身体のだるさも、
スカートの染みも、伝線したストッキングも、

なにもかも。

彼の声ひとつで、こんなにも変わってしまうものなのだ、と。
今更ながらに、気づいた。

どんなに長いメールをうっても、
文字をデコっても、
画像やサウンドを添付してみても、

きっと、彼の声以上に、
伝えてくれるものは、ない。

急がなくちゃ。

学校行って、講義に出て、
私は私で、ちゃんとやることやらなくちゃ。

恥ずかしくて、彼に会えない。

彼の前で、私は私に自身を持ってなくちゃ。

二人きりでいたら、
きっと彼は私を甘やかしてくれる。

私をときめかせる仕草も、
ささやいてほしい言葉も、
恥ずかしいくらいの、満面の笑顔も。

私が望みさえすれば、
なにもかも、私だけのものだ。

だけど、それは。

私が私自身を生きていてこそ、与えられるものだ。

いつか、彼が、言った。

【ほっとするって、安らぎ、なんていらん】
【お互いを刺激しあう関係でいたい】

冷たい     って、
あのとき、一瞬、思ったけど。

他人見知りも、いい加減にしてよって。

安らぐ、ってことは、
自分自身をさらけ出すのと同じこと。

安らぎなんていらないってことは、
つまり、
私の前では、自分自身をさらけ出せないってこと。

私は、
彼にやすらぐ場所さえ、与えてあげられないの、って。
彼にとって、
私の存在は、そんな小さな価値すらないの、って。

でも、
それは、誤解だったよね。

彼は、他人見知りだけど、ヒト嫌いなんかじゃない。

どちらかといえば、
人一倍、甘えたがりで、さびしがりなんだ。

だけど。

甘えたらどうなるかってことを、
一番知ってるのも、彼自身だから。

だから、甘えるのを自制してる。

自分が強くなるために。
自分の足で、地を、しっかりと踏みしめるために。
自分の価値を、
他人に求めたりしないために。

甘えていいのは、自身の道を歩いているヒトだけ。
甘えられるのは、自身の道を歩いているヒトにだけ。

彼が歩き出した道と、
私が歩いていくはずの道は、
別々のものだけれど。

時々、寄り添うように並んで、

時々、交わって、

そして少し離れて、

また、寄り添う。


愛を形にするのも、言葉にするのも、難しくて、
証明したり、
約束するものなんて、何もないけれど。

彼が私にとって、何より大切な存在であるように、
彼にとって、
何より大切な存在になれる私でいるように。

前だけを見ていよう。

私の視線の先には、
きっと、いつも、彼の背中が見えるはずだ。

そして、時々振り返って、
懐こい笑顔で、

『早よ来いや、こっちやぞ』って、
手招きしてくれるに違いない。

あの笑顔さえあれば。

それだけで、元気になれる、
頑張れる。

私も、大概、単純、なんかな。




ひとり、苦笑って、
彼女は、部屋のドアを、開けた。






FIN.








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