情報インフラの発達と多様性

地理的にも歴史というジャンル的にも「極北」に位置する我が「貂主の国」ですが、今日はその辺に関する話。

むとうすさんところで「ニュースソース その2」としてネットの発達と多様性について興味深い話を展開されています。

「多様性」というものがないとこんな辺鄙なサイトはおろか、東洋史と西洋史と日本史以外の
マイナーな歴史サイトは全滅の憂き目にあうことになるので、ほっとけません(笑)。

紹介されている佐々木俊尚氏のブログの記事を読みました。
これまで情報発信の手段が限られていたのが、ネットの発達によって
多様な情報が即時に流通する状況が現出し、それまでの送り手達が
困惑する様が取り上げられています。

#マスコミが適当に記事を書き飛ばすことが往々にしてある、というのは
#自分が関わっている分野において経験するところですからある意味溜飲の
#下がるところもありますが。それはさておき。

問題は、
「多様な情報が入手可能」な状況がそのまま社会の多様性を担保することになるのか
ということです。

今はまだネット開闢(^^)以来時間が経っていないので、これまでに培われた多様性が
表出することになり「ネット=多様性」という構図が成り立っている段階なのかな、と思っています。

一方でネットの発達による情報流通の即時化は、多様性を培う前に均質化された情報環境に人々を
放り込むことになり、場合によっては多様性を損なう方向に作用します。

これは既に交通手段の発達で同様の事態が起きていること(「ファースト風土化」現象)を
我々は知っているわけですが、情報インフラの発達が今後どのような事態を
引き起こすかは注視すべきことであろうと思います。

このBlogを書くにあたってはジャンルを設定しないといけないわけですが、
実にどうでもいいメジャーな話題に多くが割かれたその構成を見る度にうんざりします。

多様な情報が入手可能になったことがそのまま多様性の担保になるわけでなく、
「多様性を培う何か」を別途用意しないといけないように思います。

「独りきりで煮詰まっている時間の長さ」ってのはその候補足りうるかな(^^;;
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MIPPより

MIPPのサイト、今まで気がつきませんでしたが日本語の会社案内のページができています。

日本語会社案内
それなりに重視されるほど日本からの引き合いも多いということでしょうか。

> できる限り広いレンジの旧ソ連の国々で出版した本や定期刊行物を引き渡すという目的を持っています。

ならば是非「ARCHAEOLOGY, ETHNOLOGY & ANTHROPOLOGY OF EURASIA」の購読を
仲介してください(涙)。送金とか手続きがやっかいで未だに実現せず・・・


そんなこんなで、頼んでいた本が五月雨式に届いています。
ある程度オーダーがまとまったら倉庫に探しにいく、という対応だろうなぁと
思わせる反応速度ですが。
MIPP自身じゃなくて契約先の各地の古書店だろうと思うのですが・・・どうかな。

まずはチュコト地方西部の考古学を扱った本。
チュコトカの
石器時代(2004)

ティティル(TyTyl)湖やエルギギトゥギン(Elgygytgyn)湖等西チュコトカを
代表する遺跡についての情報や、この地域に分布していたイムィヤフタフ文化
(の北方バリエーション)とユカギール民族の起源問題との関係を扱っています。

お次は広く北はチュコトカから南はサハリンまで、極東地方の考古学本。
北部極東地域の
新石器時代・初期金属器時代

画像はベーリング海峡沿岸、チュコト半島南東端の遺跡の分布です。
炭素年代でおよそ紀元前5000年代の数字を出しています。

最後に一番期待していた、ヴォルガ=ブルガールと西シベリアの交易を仲介していた
カマ川流域についての考古学。
カマ川流域の交易路
図は10世紀から13世紀頃のカマ川周辺地域です。
一目瞭然ですが、カマ川からはかなりの量のヴォルガ=ブルガールからの
将来品が出土しています。図右側の三角の集中地帯がロモヴァトヴォ文化、
ロダノヴォ文化と発展してコミ=ぺルミャク集団へと続いていきます。
真ん中辺に小規模に集中しているのが後のウドムルト集団。
いずれもその成立にはブルガールとの交易が重要なファクターになっていたようで。

本書は8世紀から13世紀にかけてのこの地域を扱っていますが、
ヴォルガ=ブルガールの影響に加えて、西方からのルーシ、ロシア人の流入、
さらに西方フィン系諸族の流入がこの地域の民族集団形成に大きな影響を
与えたことが記述されています。

今ひとつ実態のさだかでないヴャトカ共和国ですが、これもその流れの中で
図中左のビャトカ川屈曲部に流入してきたロシア人を中心に形成されたもののようです。

ようやくこのあたりの位置関係や時代の流れを把握できそう。


#2月からお客さんのビルに常駐です。
#今まで以上に更新が滞るか、それとももともと滞っているから見た目変わらないのかは謎です(^^;;
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ネネツの映像@NHK

NHK BSで、ネネツを取り上げた番組が放映されます。必見。

詳細はNHK BS世界のドキュメンタリー参照。

1月9日(火) 後9:10~10:00 BS1
トナカイと行く 雪原800キロ  ~シベリア 遊牧民ネネツ~
遊牧民の大移動を記録した番組の第2弾は、西シベリアの北極海に面したツンドラ地帯を生活の場とするネネツ族。有史以前からシベリアに暮らし、400年のロシア支配にもたえ、現存するネネツ族は3万5千人。このうち、今も酷寒のツンドラ地帯で遊牧民としての伝統的な生活を続けているのは3500人。共に暮らす、トナカイの食べ物を確保するため、遊牧生活を続ける。
4月下旬、冬の間を過ごした南部地域から6か月をかけて北極海沿岸を目指すセルゲイさん一族の大移動を追う。気温-50度にもなる極寒の地で、ネネツ族の遊牧民としての生活を体験しながら北を目指す。何百頭ものトナカイをひきつれた一行の大移動は映像的に圧巻。


さらに、8日と11日にも面白そうな放送が。見逃せませんね。

1月8日(月) 後9:10~10:00
はるかなるデナ山をめざす  イラン ~山岳遊牧民・カシュガイ族の大移動~
1月11日(木) 後9:10~10:00
中国 一妻多夫の村  ~少数民族 ナシ族の暮らし~
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ブリヤートとHighway Star(YouTubeの中の貂主の国)

以前、YouTubeで貂主の国的コンテンツを探す、という企画倒れの記事を書きました。
北方少数民族はおろか、まともな映像一つなかったような気もしますがあれからはや幾年。
いや、8ヶ月ですか。
その間にちょっとはコンテンツが増えたようで。

ハンティ・マンシの口琴
Mansi &Khanty Tumran (Vargan)
タイプ的にはアイヌのムックリと同類ですね。


そして今回お勧めなのが、Bugotakというノヴォシビリスクのバンド。
インタビューによるとブリヤートの血を引いているそうで、シベリアの
伝統的な音楽要素を盛り込んだ曲作りをしています。どんな要素か、というと
トプショル(Topshor)というドンブラに似た弦楽器、シャーマン太鼓、
ホムス(口琴)、そしてカルグラーという喉歌です。

ホーミーといえばTVCMでもおなじみのモンゴルの喉歌、倍音唱法ですが、
これと同様の唱法が広くシベリアに広がっています。その中に、高音を
伴うホーミーとは対極の、超重低音を伴うカルグラーという唱法があります。

なにより聴くのが一番なのですが、一言で言うと床下からいかりや長介さんの
一番低い声
だけが響いてくるような感じです。

トゥヴァのYat-khaというバンドはこのカルグラーを使ってパンクを
やっているのですが、初めて聴いたときにはかなり衝撃を受けました(^^;;
シベリアの伝統的な唱法でよりによってパンク。CDのタイトルもYenisei Punk
でしたからね。日本で言うとさしずめ「浪速メタル」でしょうか。

今回のBugotakは方向的にはこのYat-Khaと同じと言っていいかと思います。

YoutubeのBogotakのページ

お勧めなのはタイトルにもあるように、カルグラーでのHighwayStarのカバー。


まぁ、でもあえて言わせてもらえばYat-Khaの方がカルグラーの腕前は上のような
気がしないでもないです・・・こちらも機会があればどうぞ。


・・・とまとめるつもりでしたが、ふとYat-Khaを探してみたらいるいるさすがYoutube。
最初に聞いたのがその名も「Yat-Kha」というCDだったのですが、そこに収録されていた
お気に入りの曲「Dyngyldai」のミュージッククリップ(?)が。


Yat-Kha(Wikipedia)
amazonでも買えます→検索結果

トゥヴァと言えばフーンフルトゥとかが有名ですが、これについては有名すぎるのでこちらで。
カルタコム

※投稿してみたらYoutubeの再生画面の取り込みができないことがわかりました。
なので、嘘リンクです。だめだな、goo。
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あけましておめでとうございます

今年もこの目立たないサイトをどうかよろしくお願いいたします。
去年の書きかけも終わってないですが(おい)、ゆっくりたゆまず更新していけたらいいな、と。

書きかけといえば西シベリア本も再開しないといけないですね。
いろいろがんばります。
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