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ローランド・ハーゲンバーグ他『sur|FACE  14人の現代建築家たち』

2007-01-25 00:01:54 | その他の映像
 sur|FACE 14人の現代建築家たち

 オーストリア出身のジャーナリスト、ローランド・ハーゲンバーグとドイツ出身の映像作家、クラリッサ・カール・ノイベルトによる現代日本の建築家14人のポートレイト。
 ハーゲンバーグが企画・脚本、ノイベルトが撮影、監督は二人の名義となっていて、いかにも少人数のスタッフで作ったフットワークの軽さが感じられる。上映時間は97分。
 建築家たちは、それぞれの作品やオフィスなどで、作品のコンセプトや自身の思想について語る。マイクやミキシングにやや問題があり、ノイズのために聞き取りにくい箇所もある。

 取り上げられているのは、

内藤廣(オフィス)
伊東豊雄(せんだいメディアテーク)
原広司(札幌ドーム建設現場、京都駅ビル)
妹島和世(飯田市小笠原資料館)+西沢立衛(オフィス)
黒川紀章(大阪国際会議場)
磯崎新(水戸芸術館)
長谷川逸子(新潟市民芸術文化会館)
隈研吾(馬頭町広重美術館、石の美術館)
谷口吉生(東京国立博物館法隆寺宝物館)
安藤忠雄(淡路夢舞台)
槇文彦(風の丘葬斎場、オフィス)
坂茂(MDS Gallery)
青木淳(馬見原橋)
丹下憲孝(フジテレビ本社ビル)
  ()内は取材場所

 すでに世界的な名声を博している建築家も含まれているが、これら現代日本を代表する建築家たちを海外に紹介するという目的からか、一人あたりのインタビュー時間は短い。
 フォトジェニックなこだわりが感じられるものの、映像自体に一貫したコンセプトはなく、作品の全貌が分かりづらいもの、建築物と周囲の環境との関係や内部の空間のありようを映像として表現しきれていないものもある。
 個人的な関心に即していえば、個々の建築物がそこで営まれる人間の営為に対していかなる作用を及ぼし、どのような身体の運動を作り出すのか、さらにいかなる形で公共的な空間を創出しているのか、という観点には作者たちは無頓着な印象を受ける。建築物はそこで何らかの人間の営みが行われてはじめて意味を持つ。そうでなければ、それは面白いオブジェでしかない。そういえば個人の住宅や集合住宅がいっさい取り上げられていない。
 ただしそれは無い物ねだりであることも承知している。なぜならこの映像は、それぞれの作品を「背景」として語るインタビュー集であり、作り手の関心が建築物よりむしろ建築家その人に向けられているからだ。

 ただし、こうした不満は、他の建築物に関する映像作品集と比較した場合の相対的なものでしかない。個々の建築家の人となりは伝わってくるし、(簡単なものとはいえ)気になっていた建築物について建築家自身の「肉声」による解説を聞けるという意味では貴重な映像資料といえるだろう。映像・編集に関する不満は、実際にそこに足を運べば解消する。ここで関心をもった建築家についてより深く知りたければ、その作品の中に身を置き、必要ならばその著作を手に取ればよい。



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