Mey yeux sont pleins de nuits...

読書、映像・音楽の鑑賞の記録など

マノエル・ド・オリヴェイラ『クレーヴの奥方』

2007-04-03 00:36:21 | 映画
ラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』の舞台を現代のパリに移し変え、ヒロインの結婚や母親や夫の死など、プロットの重要な転換点となる出来事をあえて字幕と書簡によって表現するという実験的な手法で描かれる一人の女性の霊と肉の相克。作品が描こうとしているのは、何が彼女に起こったか、ではなく、そのことによって彼女は何を考えたのか、なのであり、観客は、映像によって表現されなかった行為や出来事が主人公にもたらした意味や変化を後に続くシーンにおける行動や会話、あるいは前後のシーンにおける表情や言動の変化を通じて理解し、主人公の心の襞にまでわけいって読み取ることが要求されているように感じる。けれども心理描写を主眼とし、たった一箇所しか風景描写がないことで知られる古典的恋愛小説の映画化としては、ある意味で理に適った手法なのではないかと思う。  . . . Read more