「マイ・フェイヴァリット・シングス」のすばらしさはいうまでもないが、2曲目の「アイ・ウォント・トゥー・トーク・アバウト・ユー」がとてもこころに響いた。この曲は、プレスティジ時代の「ソウルトレーン」、1963年の「ライヴ・アト・バードランド」でも熱演が聴かれ、コルトレーンお気に入りの1曲だったようだが、「セルフレスネス」でのカデンツァは歌心と咆哮が一緒になって、夏のニューポートの青空と潮風に包まれたような気分になった(ニューポートに行ったことはないし、この演奏が昼だったのか定かでないが、そんなことはこの際どうでもよい)。テーマのあとすぐバイテンになって展開されるアドリブのよどみない演奏がそう感じさせるのかもしれないが、バラードの名演で、最近は聴くたびに「いいな、いいなあ」と一人でつぶやいている次第。
ところで、回文俳句も飽いたなと思っていたら、みうらじゅんが回文映画を作ってしまった。毎度やることが馬鹿げていて、みうら教信者ののりへいさんでなくても、頭が下がる。この人、リリー・フランキーと連名で「グラビアン魂」なんて写真集も出していたっけ。コルトレーンならテナーマンヤ魂かい。
まったくの余談だが、角川文庫の『歳時記・冬』をめくっていたら、「木流し」の季語のところに、僕のじいさんの句が載っていて驚いた。実家の母に話したら「原稿料はくれないのかい」だって。