ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

ゆもじにおめもじ、しゃもじのあもじ

2007年08月01日 | 
「めもじ」とか「ゆもじ」など、ちょっと意味不明な文字詞というのがある。比較的まだ聞かれるのは、お目にかかるを意味する「おめもじ」。これは女性言葉。で、「もじ」というのは、どーも、ものごとをはっきりいわず「アレ」などと恥じらいをもっていうときに使う隠語のようなものらしい。「かもじ」は、髷につけ足す付け髪、いまでいうウィッグとかエクステンションみたいなもの。「髪に付ける、ほらアレよ。かみもじ、かもじ!」というわけで「かもじ」。スプーンのことを「しゃもじ」というが、これは杓子から来ている。

 なぜ、文字詞が気になったかというと、坂東眞砂子の『岐かれ路』『月待ちの恋』(新潮文庫)という26編の短編集に、「女は湯文字一枚」で、とか「湯文字がめくれて」など、「湯文字」という言葉が頻繁に出てきたからだった。無知を曝け出すようだが、僕はこの「湯文字」が何のことか知らなかった。まあ、腰巻のようなものだろうとは思ったのだが、着物の下に付ける単衣の下着、男なら褌、いわば今日のパンティにあたる女性の下着のことなのだった。いまでも着物を着られる女性には、パンティではなく湯文字を身に付ける方も少なくないらしい。いわゆる柳腰にみえるのだという。昔の女性は湯屋に入るときも着けたりしたらしく、それで「ゆもじ=湯文字」というわけなのだった。

 なぜ、この短編集に湯文字が頻繁に出てくるかといえば、春話26夜と銘打ったこの短編集は、江戸時代の春画に触発されて書かれた官能小説集だから。春画26枚の一つひとつのシーンを題材として、春画に描かれた江戸の大らかで、奔放な性が、想像力を膨らませ、26編の男女の睦ごとの話として匂いたつような筆致で展開される。もちろん無修正の春画がそれぞれの物語の巻頭を飾る。そんなわけで、着物など身につけていないシーンが多いので、必然的に「湯文字」が多くなるというわけ。

 それにしても最初、僕は「湯文字」のことを女性のあそこのことを表す隠語ではないかと思った。なぜかというと「ゆ」という文字が、昔男の子がよく書いた二重丸に縦線の記号に似ているからだった。それにしても歌麿の一重の目のつるりとした顔の姉さん、北斎の構図のすばらしさと顔と見まごう巨大な一物表現など、この時代の日本の絵画の到達点はやはりすばらしい。

 イタリアの監督ミケランジェロ・アントニオーニが亡くなった。94歳。この監督もまた撮れない時代が多かった。合掌。


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