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ちゅう年マンデーフライデー

『キネ旬』日本映画ベスト10×マンフラベスト10

『キネ旬』が別冊で日本映画ベスト10を発表した。新聞記事になっていて1位は「東京物語」だった。「東京物語」は僕も大好きな映画だ。だが、ベストワンかといわれれば、なんといっても僕が生まれた年の映画だ。リアルタイムで観ていない。同時代的に観た映画の力にはかなわない。ならば、ほぼ、リアルタイムで観た映画を中心に、日本映画マンフラベスト10を並べてみようと思った。そんなわけで監督は、小津も溝口も成瀬も黒沢もいないベスト10になった。とりあえずの順番に意味はない。日本映画というとかの4人がやけにもてはやされるが、この多様性こそ日本映画のすばらしさだ。

①「喜劇・ああ軍歌」(1970/監督:前田陽一)
 快作にして傑作。賽銭箱に忍び込み「ああ銭冷えする」というくだりが秀逸。
②「新宿泥棒日記」(1969/監督:大島渚)
 人を扇動する映画。この映画に刺激されて「アンドレ・ブルトン選集」を本屋で万引きしたとかしないとか。
③「けんかえれじい」(1966/監督:鈴木清順)
 ほぼリアルタイム。麒六ちゃんのポコチンピアノ、浅野順子の美少女ぶり。
④「戒厳令」(1973/監督:吉田喜重)
 「けんかえれじい」で駅の待合室にいた北一輝は、ここで処刑前に「天皇陛下万歳と叫ぶのか」と聞かれ「私は死ぬ前に冗談は言わない」。新宿ATGの匂い。
⑤「緋牡丹博徒・お竜参上」(1970/監督:加藤泰)
 ここからはプログラム・ピクチャーの傑作・快作。まず愛の映画の傑作。雪の今戸橋のシーンに涙、涙。1970年は次の健さんと共に仁侠映画が頂点を極めたのだ。
⑥「昭和残侠伝・死んで貰います」(1970/監督:マキノ雅弘)
 高倉健、池部良の立ち姿、歩き方の美しさよ。愛も義も俺たちゃ東映映画から学んだ。NHKじゃねーよ。
⑦「兵隊やくざ」(1968/監督:増村保造)
 次の3作は大映プログラム・ピクチャーの傑作シリーズから。このシリーズは1作目のみ増村であとは田中徳三監督。好きなのは8作目「強奪」。八路軍の女将校役の佐藤友美が美しい。
⑧「座頭市の歌が聞こえる」(1966/監督:田中徳三)
 シリーズ13作目。撮影が名手宮川一夫。1作目で平手造酒を演じた天知茂が再び登場。この2つのシリーズはオールナイト、TVの深夜映画でも何度も観たが飽きなかった。恐るべし大映プログラム・ピクチャー!
⑨「眠狂四郎・無頼剣」(1966/監督:三隅研次)
 市川雷蔵の色気を出すのは、三隅や森一生監督がうまかった。「無頼剣」は8作目だが、中だるみどころか、中盤の作品に結構傑作が生まれているところが、大映や東映のすごさだ。
⑩「狂走情死考」(1969/監督:若松孝二)
 警官の兄を殺した学生運動家の弟と兄嫁の北国への逃避行というピンク映画の巨匠としては珍しかったドラマ性の強い映画。もちろん18歳未満入場禁止。高校時代学生服の詰襟を中に折って観にいった。バレバレだったと思うがもぎりのおばちゃんは黙って入れてくれた。学校帰りに観た初めてのピンク映画。この頃は渥美マリが人気で、高校生の股間を刺激して止まなかったのだが、「でんきくらげ」(1970/監督:増村保造)もマンフラベストに入れたいところだ。

これで10本なのだが、もう1本番外で入れたいのは日活のシリーズ。
⑩「紅の流れ星」(1967/監督:舛田利雄)
 渡哲也は無頼シリーズ(監督:小澤啓一)で「哀しみのやくざ」を演じて人気を得るが、たぶん五郎シリーズの1本なのだと思うが、これは白のスーツで赤いMGを乗り回す軽妙でモダーンなやくざ役。ラストは「勝手にしやがれ」をパクッっているのだが、大らかに作ってしまいましたという雰囲気があふれている。浅丘ルリ子、藤竜也、宍戸錠、みんなきざにふるまっているのだけれど、それが決まっていてさすが日活。後の松田優作のキャラクターにつながる快作です。

 こうしてみると60年代後半の日本映画の多様性、それを支えた監督たちの顔ぶれの多彩さに驚く。そしてまだ、この時代は日本映画は豊かだったのだ。
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