こんなにも同時進行でシンクロしながら優勝の瞬間を迎えるとは思ってもいなかった。
マジック対象チームの試合状況がこれほど気になったのも初めてかもしれない。
ジャイアンツが9回裏の守りについた時点では、カープの試合のほうが少し遅れ気味に進んでいた。
両方の試合を交互に見比べながら、慌ただしくチャンネルを行き来させた。
山口鉄也が梶谷をライトフライに打ち取って二死になると、
やはり原監督は昨シーズン同様、最後のマウンドをマシソンに託した。
1シーズン、チームを支え続けた山口、マシソンに対する粋な計らいだ。
この交代に、「これで少し時間が延びます。」 と実況のアナウンサー。
たしかにこの交代で甲子園の試合のほうが先に終わる可能性も高まった。
ジャイアンツの勝利よりも先に甲子園でカープが敗れれば、そこでマジックが1になる。
そのあとジャイアンツが勝利すればゲームセットの瞬間に優勝決定という理想的な流れだ。
先にジャイアンツが勝利してしまうと、ほんの短い時間でもカープの結果を待たなければいけない。
ゲームセットの瞬間に歓喜の輪が生まれれば、優勝のカタチとしてはもっとも美しい。
結果的にこの一呼吸が、シーズンの有終にもっとも相応しいカタチをもたらすことになる。
チャンネルを甲子園のCT戦に切り替えると、呉昇桓が中東と梵を3球で仕留めて二死。
予想通りに追いついた。
両試合とも二死でランナーはいない。
同時進行のような展開になった。
ジャイアンツ戦に戻るとマシソンが下園にヒットを打たれた。
これでCT戦のほうが先に終わる可能性がさらに高まった。
再びチャンネルを切り替えると、代打・天谷のカウントは1ボール2ストライク。
次のボール、呉のストレートを天谷が捉えた。
いい当たりのセンターライナーが大和のグラブに納まり試合が終わった。
すかさずGB戦の実況アナが 「終わりましたぁ! カープ敗れましたぁ!」 と叫んだ。
今日のスポーツ紙の記事によると、ジャイアンツベンチ裏でもこの瞬間、
CT戦の戦況を窺っていた斉藤投手コーチが 「負けたぞ~!」 と絶叫し、
選手らにカープ敗戦を知らせていたらしい。
ベンチから身を乗り出す選手らの姿を見て、
守っていた村田修一もそれに気づいたと語っている。
一方、桑原を空振り三振に仕留めて胴上げ投手になったマシソンは、
打者に集中していて優勝に気づいていなかったとコメントした。
たしかにマウンドに走り寄る阿部らナインとは、ほんの数秒、
テンポがズレたようなリアクションをしている。
そのズレたテンションのままマシソンは歓喜の輪にのみ込まれた。
優勝が決まった今回の試合を象徴するひとコマだった。
監督も、選手たちも、一様に ”苦しかったシーズン” と振り返る。
いろいろ周りから言われた中で、苦しんだ末に掴み取ったペナント優勝。
この試合、解説を務めた槙原寛己氏がこんなことを言っていた。
「監督も、選手も、みんなしんどかったはず。
これで勝てないまま終わっていたら後を引くシーズンになっていただろう。
でも、結果的に優勝出来たことでが、すべてを帳消しにしてくれる。
すべてが自信になり、来季への糧となる」。
チームとしての奥行きが、ひと幅もふた幅も広がったシーズンだったように思う。
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