アメリカの中間選挙で予想通り下院は民主党が勝った。接戦が予想されていた上院でも民主党が過半数を獲得し、ブッシュ大統領はレイムダック化するとのもっぱらの噂である。側近中の側近ラムズフェルド国防長官も辞任した。改めて、イラク戦争とは何なのかと言う感懐を抱いてしまう。彼方の国の一人の大統領とそれを利用した連中の為に無辜のイラク人が多数殺された。また、戦地に送られたアメリカの若者も命を落とした。議会で民主党が主導権を握り、イラクからの撤兵を検討するだろうが、それがどういう形をとるかは、まだ予断を許さない。
ブッシュがそれほどまでに拘ったイラク侵攻の背景には南部の宗教右派とハリバートンをはじめとした石油産業、軍需産業が絡んでいたことは周知の事実だ。
また、イスラムの経済観念をアメリカ的資本主義の観念に無理やり変えようとした蛮行 ― 戦争なのではないか、と言う感想を抱く。アメリカがイラク侵攻を決意した背景には、サダム・フセインが石油の決済をドルではなく一部ユーロに変えた事も原因であると言われている。
以下-『悪夢のサイクル』-内橋克人著より
イスラムの世界では、「正当な労働の対価以外は受け取ってはならない」という戒律があります。市場主義にとって最も脅威になるのは、そのような考え方です。人々の宗教的信念、信仰そういうものを打ち崩さない限り、マネーが自由に動けません。マネーは全世界を一つの市場としなくては、完全にグローバルでなければ、本当の意味では完成しません。
イスラム銀行は投機というものには乗りません。商品投機その他が60%を占める、そういう企業には融資をしてはならない。アルコール飲料やカジノなどと関係のある企業とも取引しない。西欧資本主義的な社会における銀行とは違って、投機はしない。日本あるいはアメリカの銀行は違います。こうした国々では「お金は貸すよ、だけどそっちが失敗したら、そっちの責任だよ」というものです。さらには国家権力と結託して預金金利をゼロにして、自分たちはコスト・ゼロで資金を集めながら大変な金利で貸す。こういう事を平気でやります。
イスラム銀行ではやる気のある人に、お金がなければ、銀行が生産設備をつくって、そこで働きましょうというやり方なのです。そこで人々が働いて製品ができます。それを販売して、利益が得られたら、それを折半する。だから出資した事業に対して責任とリスクを負うのです。(本文より)
アメリカの議会を民主党が握ることによって、確かに目に見えるかたちでの戦闘行為や殺戮は終止符が打たれるかもしれないし、また是非そうならなければならない。しかし、イラクをはじめとしたイスラムの人々にとってアメリカ的資本主義との葛藤はまだ続くだろう。
イラク攻撃を開始した米軍は最初にイラクの南東部のウム・カスルという町のインフラを徹底的に破壊し、水道管も破壊します。人々はその日の飲料水にも困ってしまいました。一方米軍は様々な形で水を持っていました。そして町でタンクローリーを持っているような富裕層に無料で米軍の飲料水を与え「これを今、水に困っている、喉が渇いている住民たちに売りなさい。お金を取って売りなさい」と言った。本来はイスラムの戒律には反している行為です。不労所得ですから。しかし、やってみると、売れます。こうして資本主義をイスラムの人々に教え込むのです。(同本文より)
その米軍のイラクへの侵攻を恥ずかしげもなく支持した首相を持ち、自衛隊まで派遣した政府を持つ日本の明日の姿がイラクなのかもしれない。郵政事業という社会的インフラを資本に売り渡し、またミサイル防衛構想やパトリオットの沖縄配備や北朝鮮に対抗する為という名目で防衛費が増大し、アメリカの軍需産業が潤うだろう。
同時期に気になるニュースをネットで拾った。
クリントン前米大統領夫妻の1人娘チェルシーさん(26)が、ヘッジファンドに就職することが明らかになった。米メディアが3日、伝えた。クリントン氏も米投資会社ユカイパ傘下のヘッジファンドのアドバイザーを務め、夫人のヒラリー・クリントン上院議員もヘッジファンドから多額の献金を受けており、クリントン一家とヘッジファンド業界の深い関係が論議を呼びそうだ。(時事 2006年11月04日12時28分)
現在の日本の天文学的な財政赤字の端緒はクリントン政権時代の対日要求の中にあった当事の日本政府による莫大な公共事業の大判振る舞いが原因の一つであると言われている。
アメリカ議会で今回民主党が多数を取り、2年後の大統領選挙でも民主党候補が勝利したとしても、イラクにとっても日本にとっても、それが単純に良い事だとは思わない方がいい。今では米民主党の経済政策もケインズ的なものから転換している。新自由主義的経済思想は強固であり、一筋縄では市民がコントロール出来るものではない。
ブッシュがそれほどまでに拘ったイラク侵攻の背景には南部の宗教右派とハリバートンをはじめとした石油産業、軍需産業が絡んでいたことは周知の事実だ。
また、イスラムの経済観念をアメリカ的資本主義の観念に無理やり変えようとした蛮行 ― 戦争なのではないか、と言う感想を抱く。アメリカがイラク侵攻を決意した背景には、サダム・フセインが石油の決済をドルではなく一部ユーロに変えた事も原因であると言われている。
以下-『悪夢のサイクル』-内橋克人著より
イスラムの世界では、「正当な労働の対価以外は受け取ってはならない」という戒律があります。市場主義にとって最も脅威になるのは、そのような考え方です。人々の宗教的信念、信仰そういうものを打ち崩さない限り、マネーが自由に動けません。マネーは全世界を一つの市場としなくては、完全にグローバルでなければ、本当の意味では完成しません。
イスラム銀行は投機というものには乗りません。商品投機その他が60%を占める、そういう企業には融資をしてはならない。アルコール飲料やカジノなどと関係のある企業とも取引しない。西欧資本主義的な社会における銀行とは違って、投機はしない。日本あるいはアメリカの銀行は違います。こうした国々では「お金は貸すよ、だけどそっちが失敗したら、そっちの責任だよ」というものです。さらには国家権力と結託して預金金利をゼロにして、自分たちはコスト・ゼロで資金を集めながら大変な金利で貸す。こういう事を平気でやります。
イスラム銀行ではやる気のある人に、お金がなければ、銀行が生産設備をつくって、そこで働きましょうというやり方なのです。そこで人々が働いて製品ができます。それを販売して、利益が得られたら、それを折半する。だから出資した事業に対して責任とリスクを負うのです。(本文より)
アメリカの議会を民主党が握ることによって、確かに目に見えるかたちでの戦闘行為や殺戮は終止符が打たれるかもしれないし、また是非そうならなければならない。しかし、イラクをはじめとしたイスラムの人々にとってアメリカ的資本主義との葛藤はまだ続くだろう。
イラク攻撃を開始した米軍は最初にイラクの南東部のウム・カスルという町のインフラを徹底的に破壊し、水道管も破壊します。人々はその日の飲料水にも困ってしまいました。一方米軍は様々な形で水を持っていました。そして町でタンクローリーを持っているような富裕層に無料で米軍の飲料水を与え「これを今、水に困っている、喉が渇いている住民たちに売りなさい。お金を取って売りなさい」と言った。本来はイスラムの戒律には反している行為です。不労所得ですから。しかし、やってみると、売れます。こうして資本主義をイスラムの人々に教え込むのです。(同本文より)
その米軍のイラクへの侵攻を恥ずかしげもなく支持した首相を持ち、自衛隊まで派遣した政府を持つ日本の明日の姿がイラクなのかもしれない。郵政事業という社会的インフラを資本に売り渡し、またミサイル防衛構想やパトリオットの沖縄配備や北朝鮮に対抗する為という名目で防衛費が増大し、アメリカの軍需産業が潤うだろう。
同時期に気になるニュースをネットで拾った。
クリントン前米大統領夫妻の1人娘チェルシーさん(26)が、ヘッジファンドに就職することが明らかになった。米メディアが3日、伝えた。クリントン氏も米投資会社ユカイパ傘下のヘッジファンドのアドバイザーを務め、夫人のヒラリー・クリントン上院議員もヘッジファンドから多額の献金を受けており、クリントン一家とヘッジファンド業界の深い関係が論議を呼びそうだ。(時事 2006年11月04日12時28分)
現在の日本の天文学的な財政赤字の端緒はクリントン政権時代の対日要求の中にあった当事の日本政府による莫大な公共事業の大判振る舞いが原因の一つであると言われている。
アメリカ議会で今回民主党が多数を取り、2年後の大統領選挙でも民主党候補が勝利したとしても、イラクにとっても日本にとっても、それが単純に良い事だとは思わない方がいい。今では米民主党の経済政策もケインズ的なものから転換している。新自由主義的経済思想は強固であり、一筋縄では市民がコントロール出来るものではない。