水に降る雪

おもに宝塚、そして日々のこと

星組「龍の宮物語」

2019-12-07 | 星組

せおっち(瀬央ゆりあ)のバウに行ってきました

美しくて切なくて哀しくて、ちょっとだけ怖い素敵な物語でした。

指田先生デビューおめでとうございますこれからの作品も期待してますよ頑張って下さい

 

せおっちも、くらっち(有沙瞳)もとってもいい作品に巡り会えて良かったね、おめでとう~

それに応えられるだけの力量があるからこそ、でもありますが。

せおっちが超イケメンでくらっちがメチャクチャ綺麗でした~

もうそれだけで、宝塚観た~っていう満足感がスゴイ

ネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

「夜叉が池」と「浦島太郎」のミックスって、どう着地するのよって心配しましたけど、

上手く使ってましたね。

 

中心は龍神への生け贄にされた娘の、裏切った恋人への恨みで、千年にわたって物語を動かしていきます。

恋人の血筋である男が池の近くにくると、引き込んで殺していたのでしょう、血族を絶やすべく。

女の恋の恨みは怖いわ~「安珍清姫」もその類ですね。

 

生け贄にされる娘に「一緒に逃げよう」と約束しながら、それを破った恋人への怒りが凄まじかったのだとは思いますけど、

それ以上に哀しかったんだろうなぁ、という気がします。

子ども時代に池の近くに迷い込んだ清彦を殺せなかったし。誰かに救って欲しかったのかも。

 

清彦は名前の通り、ほんとにピュア。優しくて真っ直ぐで、自分より他人のことを思いやれる人。

腕っ節が強いわけでも、世渡り上手でもない。だからこそ玉姫に惹かれ、救うことが出来たのかなと思います。

 

生け贄にされた玉姫に固執する龍神みっきー(天寿光希)。

その愛を受け入れて龍の宮でくらしていても、玉姫がどこか哀しげなのがずっと気がかりだったんでしょうね。

弟にたしなめられても、人間の娘である玉姫が本当に好きだったんだろうなぁ

 

清彦は一度人間界に戻りますが、そこは30年後の世界。

知ってる人もなく、大きく様変わりした世の中に付いていくことも出来ず、片隅でくらしていましたが、

玉姫が昔恋人に裏切られて、怒りからその血族を絶やそうとしていることを知ったり、

干ばつで再び池に生け贄が捧げられようとしていることを知り、決意を持って龍の宮に戻ります。

玉姫に愛を告げるべく。子どもの時に出会った玉姫との約束を守るために、桜蓼の花を持って。

 

玉姫が龍の姿になっても、揺らがないのがスゴイそれで玉姫の気が済むのなら殺されてもいいと思ってるし

裏切られたことへの怒りと、人間でなくなったことへの哀しみと、玉姫にはいろんな葛藤があったんでしょうね。

それらをすべて包み込む清彦の愛いやぁマジカッコイイよ清彦

 

「殺して欲しい」と玉姫に言われ「それが姫の望みなら」と刃を向ける清彦。

もちろん姫を殺して自分も死ぬつもりだったんでしょうけど、結局殺せなくて

そこを龍神に見つかり、斬りつけられますが、玉姫が清彦を庇って死んでしまいます。

 

清彦の腕の中で死んでいく玉姫の、満足そうな救われたような微笑みが、それは美しかったです

それを見た龍神様がショックを受けてて、だいぶ可哀想でした

でもその後、清彦も再び人間界に帰されるんですよね。それはそれで可哀想

清彦はどうやって生きていくのかな、と考えると‥‥‥最後は泣いてしまいました

 

余韻の残る作品は大好きですそれからそれへ妄想がひろげていけるし。

清彦の祖父のエピソードとか、ちょっとわかりにくいというか、そのエピ必要?なところもありましたし、

暗転が多めだったのは少し気になりましたが、

基本的にはあまりゴチャゴチャしてなくて、すっきりした話でした。だかろこそ美しさが際立つというか。

指田先生が、くーみん(上田久美子)2世と称賛されるのもわかる気がします。

美しくて切ない男女の愛を書ける人は、案外少ないので期待してしまいます

 

 

“異郷訪問譚”って世界中にあります。戻ってこれる話も、戻ってこれない話も。

「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」はフィッツジェラルドの創作ですけど、

これも一種の異郷訪問譚ですよね。

そしてこれは一応ハッピー・エンドなのに、なんだか後味が悪いというか、

ダイヤモンドの世界が気味が悪いと感じてしまうのは、そこに“洗脳”があるからなんだろうな。

発表されたのは1922年でナチスが台頭してくる前、日本はまだ大正ロマン華やかなりし頃で軍部が政権を掌握する前なんですが、

まるでそれを予見してるみたいなんだもの

 

「龍の宮の物語」は今市子さんの「百鬼夜行抄」の世界観にすごく近いです。大好きなんですよ

ひえ~っコ、コワイっていう話もチョイチョイありましてね。

ホラーは苦手って言ってたんやないんかい、って思われるでしょうけど

でもファンタジーは基本大好きなんですよ。で、ちょっと怖い話もありますけど、不思議で美しくて哀しくて、

そして意外と出てくるキャラクターに面白い人が多いので、読めちゃうんですよね

 

30年経ってもまったく変わらない姿で現れる清彦とか、今の時代に身近にいたら、ほんとホラーですけど

そして30年後に再会して先祖のことを教えてくれる山彦が、実は震災で亡くなってたってことがわかったり。

でも清彦はそれをあっさり受け入れるんですよね。自分に夜叉が池に行くなと言うために留まってくれたのかと。

そういう不思議を不思議として、怖がるでもなく受け入れる社会が昔はあったってことでしょうね。

世の中には人間に理解できないことが山ほどあるけど、それでいいんだよ、って世界。

異形の者も住みやすかっただろうなぁ


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