奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

虫を調べる ケブカアメイロアリ

2022-02-13 20:24:55 | 虫を調べる
先日も出したのですが、昨年の12月12日に近くのアレチウリにいたアリを採集していたので、先日、検索をしてみました。その結果、ヤマアリ亜科アメイロアリ属のケブカアメイロアリになったのですが、その検索の過程を載せておきます。



調べたのはこんなアリです。パッと見ただけでは何だか分からないので、とりあえず採集して、冷凍庫に入れておきました。検索には、寺山守ほか著、「日本産アリ類図鑑」(朝倉書店、2014)に載っている検索表を用いました。初めは亜科の検索です。

①腹柄は1節からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な刺の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②腹柄節は小さく、側方から見て丘部の幅は狭い;腹部第1節と第2節の間はくびれない;腹部第1節の背板と腹板は融合していない;腹部末端に刺針をもたない
③腹部末端は円錐形で丸く開口し、多くの属ではその周囲が毛で取り囲まれる ヤマアリ亜科 Formicinae

検索表を追いかけていると、この3つの項目を確認することができ、ヤマアリ亜科であることが分かりました。なお、赤字は確認しなかった項目です。これを顕微鏡写真で確かめていきたいと思います。検索順に見て行けばよいのですが、同じ写真を何度も出さないといけないので、部位別に見ていくことにします。



まずは全体像で、写真で体長を測ってみると、3.2mmになりました。図鑑によると、体長は2.5~3 mmとなっていたので、まあ、よいでしょう。



最初は頭部と胸部を斜め上から撮影した写真です。腹柄節は矢印で示しましたが、確かに1節だけです。また、腹柄節は小さく、丘部の幅も狭そうなので、この両項目はOKだと思います。



次は頭盾についてです。頭盾は矢印で示した部分ですが、その前縁側方には特に小突起は見られません。②はクビレハリアリ亜科を除外する項目なので、まず大丈夫でしょう。



これは胸部と腹部を斜め上から撮った写真です。腹部第1節と第2節の間にはくびれが見られないので、これもOKだと思われます。



最後は腹部末端の写真です。腹部末端には刺針はありません。また、噴火口のような丸い穴があいて、周囲には毛が生えています。ということで、ヤアマリ亜科であることは確かそうです。

次は属の検索です。検索の結果、アメイロアリ属になったのですが、それには次の8項目を調べないといけません。

④胸部に突起や刺はない;腹柄節に突起や刺はない
⑤大腮は通常の三角形状
⑥触角は12節からなる
⑦中胸気門は背面もしくはごく背方寄りに位置する
⑧前伸腹節の気門はほぼ円形
⑨前胸は短い
⑩複眼は頭部側面中央部あるいはやや前方寄りに位置する;前・中胸背面には立毛が規則的に見られる
⑪前伸腹節背面に立毛はない;大腮に6,7歯をそなえる;触角柄節、脚腿節、脛節に通常立毛をもつ アメイロアリ属 Nylanderia

これも部位別に見ていくことにします。



最初は先ほども見た頭部と胸部を斜め上から見た写真です。④の胸部の突起や刺はトゲアリ属にあるものなので、これはOKです。次の前胸は短いという項目はヒゲナガアメイロアリ属を除外する項目です。その次の⑩は重要な項目で、複眼の位置が頭部の中央か後方かを尋ねています。ほとんどのアリは後方にあるので、この写真のように中央付近にあるのは特徴的だと思われます。また、前胸・中胸背面、触角柄節、脚の腿節・脛節にも立毛は見られます。



後脚の腿節と脛節の立毛を別に撮っておきました。まばらに生えているのが分かります。



大腮が三角形状であることは見るとすぐに分かります。これはサーベル状の大腮を持つサムライアリ属を除外する項目です。



触角の節数は数えてみると12節になりました。



これは前伸腹節を中心に撮った写真です。⑦の中胸気門は背方寄りにあることがよく分かります。また、前伸腹節気門は円形です。さらに、前伸腹節には剛毛が生えていません。



⑪の大腮の歯の数がよく分からないので、この写真だけ、20倍の対物レンズを用いて撮りました。ただ、?で示しましたが、5番目の歯があるのかないのか微妙です。この項目を除けば、すべての項目が確かめられたので、たぶん、アメイロアリ属であることは確かだと思います。

最後は種の検索です。

⑫a 触角柄節は頭部後縁を越えても、超える部分は柄節の1/2以下;複眼は小さく、その後縁から頭部最後縁までの距離は複眼の直径の約3倍
 ⑬前・中胸背板に6対以上の剛毛がある ケブカアメイロアリ amia
⑫b 触角は長く、触角柄節はその長さの1/2以上が頭部後縁を越える;複眼は大きく、その後縁から頭部再後縁までの距離は、複眼の直径の約1~1.5倍
 ⑭a 頭部と胸部側面は薄い褐色で、腹部は褐色;胸部背面は褐色がかった白色(八重山諸島に分布) ヒヨワアメイロアリ otome
 ⑭b 体は暗褐色の単色性(沖縄島に分布) ヤンバルアメイロアリ yambaru

一応、⑫a→⑬と進んで、ケブカアメイロアリになると思うのですが、赤字で示した項目はやや怪しいので、対抗する項目を載せておきました。ただ、⑫b→⑭と進むと、いずれも本州にはいない種になり、色や特徴も合わないので、たぶん、違うと思われます。



最初は触角柄節の長さです。この写真から測ってみると、頭部後縁までの距離と比較して柄節の長さは1.53倍になりました。越えた部分は0.53なので、全体の長さと比較すると0.53/1.53=0.35となり、半分以下であることは確かです。



次は複眼の大きさです。頭部最後縁をどこまでとればよいのかよく分からないのですが、図のように取ると、複眼後縁から頭部最後縁までは1.61倍となり、複眼の3倍よりはかなり短くなります。この辺が少し怪しいところです。



最後は前胸と中胸背面の剛毛の数です。一応、矢印で示したのですが、目立つ剛毛が7対くらいはありそうです。ということで、たぶん、ケブカアメイロアリでよいのだと思うのですが、やや怪しいところがありました。さらに、説明を読むと、「後脚のみ腿節と脛節に剛毛をもつ」という記述が載っているのですが、特に後脚だけという感じはしませんでした。春になってまた見つけたら、もう一度調べてみたいと思います。

雑談1)今日の暫定的な実効再生産数は0.96になりました。感染者数の週平均を取って計算しているのですが、単純に過去7日間平均にすると4日前のデータになってしまうので、今日は過去4日間平均、昨日は今日を含めて5日間平均、一昨日は今日を含めて6日間平均、それ以前は前後7日間平均というように変則的な平均を取って解析しています。それで、その日の値によって2,3日前の実効再生産数も変化してしまいます。いずれにしても1付近でうろうろしていることは確かそうな気がします。早く減少してくれるとよいのですが。

雑談2)コロナの勉強はインターフェロンのところで行き詰まっています。あまりに多くの論文が出ていて、頭が混乱しているのが原因です。今日、新たに分かったことは、インターフェロンはウイルス感染に対する自然免疫のかなめになっているのですが、実は、SARS-CoV-2が細胞に取りつくときのきっかけとなる受容体ACE2はインターフェロンが細胞に指令を出して作らせたものだったという事実です。ウイルスに対抗する強力な味方と思っていたインターフェロンが実はウイルスの味方をしていたという驚くべき事実でした。


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