奈良散策 第1503弾
4月24日に萬葉植物園に藤を見にいきました。最初は品種ごとに写真を撮っていたのですが、途中から何が何だか分からなくなったので、藤以外のいろいろな花を撮りました。3年前に萬葉植物園でモリアオガエルの卵を見たので、そのあたりで鳴いているカエルがモリアオガエルかどうか確かめたくて、探しに探したのですが、声はすれども姿は見えずでした。




カエルは諦めて、先に進むと、浮舞台がありました。ここで、5月5日に舞楽が行われるのでしょうね。



これは円窓(まるまど)といって、旧春日大社板倉を移転させたものだそうです。重文です。


これはユキモチソウ。

それから、アマドコロ。

入り口付近にも九尺藤がありました。



大根の花です。こんなに背が高くなるのですね。

これは大麦。


そして、これは小麦。小麦と大麦はずいぶん外観が違いますね。



萬葉植物園では万葉集に歌われた植物が植えられているのですが、その中で「さきくさ」というのが気になりました。以前、奈良市にある率川神社について調べたことがありました。この神社では6月に三枝祭というササユリを奉献するお祭りがあります。もともと三枝祭は奈良時代に作られた養老令にも国家のお祭として載っている由緒ある祭祀です。ただ、この三枝とは何なのかというのが昔から議論の的になっていました。万葉集には三枝は二篇の歌に枕詞として登場するのですが、共に三つに分かれた、あるいは三つの真ん中というような意味で用いられています。その意味で三枝はミツマタというのが妥当そうに見えます。


「サキクサ」と「サイグサ」は同じなのかという議論も江戸時代にありました。サキクサは幸草に通じ、さらには福草に通じるとされています。三枝はサヰクサと書かれるので、「キ」と「ヰ」は異なるので同じではないのではという指摘もありました。ここに出てくるヤマゴボウは平安時代に書かれた和名類聚抄の中に「佐木久佐」という名前で出てくる植物で、中国の「玉篇」に載っていたとされています。

そして、イカリソウです。三枝がイカリソウかもと指摘したのは、昭和24年に出された宮地治邦氏の「三枝祭について」という論文の中です。



最後のササユリは現在の三枝祭で登場する植物ですが、もともとは古事記に載っている話で、百合のことを「佐韋(サヰ)」と呼んでいたことから、佐韋草(サヰクサ)=三枝(サイグサ)となったいうことになっています。このような話は、江戸時代初期に作られた、現在では偽書と思われている「大倭神社注進状幷率川神社記」に載っているのですが、実は、三枝=百合という説を広めたのは江戸時代に活躍した国学者たちではなかったと思われます。おそらく、江戸時代初期の国学者である契沖あたりが言い出したのではないかと思っています。
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