社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「がん患者がかかえる社会的苦痛」田村里子 『臨床精神医学』33(5) 2004年

2011-02-18 06:49:03 | 社会福祉学
 がん患者のかかえる苦痛/苦悩について、社会的側面からアプローチし、その具体的なもの、伴走者として援助者に求められることについて記している。
 ソーシャルワーカーという自身の職種からのアプローチであるが、社会的側面のケアはソーシャルワーカーだから担える…とか、ソーシャルワーカー向けに…ということに終始せず、あくまで「患者理解」ということに終始している。そのため、がん患者のみならず、ケアを必要としているひとに携わっているさまざまな立場のひとに、共感してもらえる印象を受けた。

引用
・がんとともに生きるというストレスフルな状況と折り合うこと、経済的問題、仕事のこと、患者を支える家族の葛藤、ソーシャルワーカーは、これらのがん患者の療養生活上の困難の軽減や解決へ向けた援助を通し、がん患者の療養生活上の課題解決を通し自己決定を支える。

・社会的苦痛を考える時に「社会的」を「人間関係」「交流」「つながり」といった意味合いにもっと重きをおいてとらえる必要がある。


・療養している患者にとって、療養環境は帰属する社会となる。(中略)療養環境面からの、ことに医療スタッフという療養環境からの苦痛の緩和を求める入院相談は少なくないのである。

・社会的苦痛とは、人間が人の間と書くその当たり前のことを最後までいかに大切にできるか、同じく人であるわれわれへの問いかけである。


 「社会的苦痛」…経済的な問題や介護問題など。とよくいわれるし、教科書にもそのような趣旨で書かれている印象がある。しかし入院中の患者にとっては、病院生活そのものが「小さな社会生活」であり、在宅で療養しているひとにとっては、訪問に来る援助者や近所づきあいが「社会とのつながり」である。その認識を持つことで、どのような状況のひとのとっても「社会」は切り離せる側面ではないし、ないがしろにされるべきものではないと痛感する。
 また筆者は、「苦痛」という言葉と並行して、「苦悩」という言葉を引用している。たしかに、社会で生活していくなかで感じるものは、「苦痛」というよりも「苦悩」のほうがしっくりくることが多い、と感じた。
コメント
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