社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「遺族外来からみえてきたもの」大西秀樹(2010)

2010-09-08 12:11:55 | 医学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

埼玉医科大学において、「遺族外来」を担当している医師による論文。
「遺族外来」で出会った遺された家族を通して、喪の作業とはどのようなものか?等を紹介している。

引用
・がん患者家族の10~30%に何らかの精神医学的な疾患が認められ、抑うつの程度は患者と同等ないしそれ以上である。
・遺族は死別後にストレスを受け、心身に影響を及ぼすことから介入が必要であるが、このような場面で行われる介入はPostvention(後治療)という概念で表される。後治療は「つらい出来事の後になされる適切な援助」を意味し、シュナイドマンによりはじめて導入された(p.20)。
・社会も医学も「生」の側面を中心にして命をみているのが現状なのだろう。多くの場合、社会は成長を求め、われわれはそれに応えようとする。愛する人を失った遺族すら、その成長に応えようとし、つらい思いを必死で耐えようとする。そのような人にまで十分な援助が行き届くほどに、まだ社会は発展していない(p.37)。


「死別」は特別なことではなく、当たり前のことではあるが、その当たり前が「なんでもないもの」と解釈されているのが、現在の大方の傾向であると感じる。
悲しみを抱え、いつもと同じように振舞おうともがいている遺族に対して、社会ができること、医学ができることは何か。その根本を垣間見たように思う。



死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

このアイテムの詳細を見る
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする