社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

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「がん患者を親にもつ子どもへの病状説明と予期悲嘆」小島ひで子(2010)

2010-09-11 10:05:12 | 看護学
『死別の悲しみから立ち直るために』平山正実/編著 聖学院大学出版会

がん患者の親をもつ子どもに対する、病名の告知、余命の告知、そしてグリーフケアの在り方について言及している。事例を通してその取り組みの実際、課題が提起されている。
子どもに対して告知を決めた親の気持ち、子どもに親の病気の説明を行った医師の気持ち、様々な立場からの声を知ることができた。

引用
・先行研究(バーンズ)を引用している
⇒「ほとんどの母親は、確定診断後、子どもに病名は出さずに話し始めたことろ、子どもの質問、とくに死に関する質問への返答が難しいと述べている。母親は、主治医と病気や治療について、コミュニケーションが良好な場合でさえ、子どもへの病状説明を依頼することは少なかった」

・わが国では、親ががん告知を受けた場合、子どもたちに親の病状説明をすることは、医療従事者の意識も含め、まだ一般的ではないのが現状である。

・筆者の行った調査研究を踏まえ、「がん患者が子どもへの病状説明をする場合、医療機関がどのような支援をするか」
①がん患者の入院時、もしくはかかわる際に、家族の状況をアセスメントすることである。その際に親ががんにかかったときの子どものリスク要因を十分に考慮する必要がある。ひとり親、一人っ子、年長児であることなどの家族背景や、親の身体機能低下や精神的苦悩が生じたとき、治療の副作用が増強したとき、とくに6~10歳に問題行動の危険性が高いこと、女子、とくに再発し苦悩する親をもつ女子にストレスと抑圧する傾向が生じ危機に陥りやすいことなどを把握しておくことが非常に重要である。
②多数のリスク要因をもつ子どもがいる家族の場合、看護領域を超えて対応できる流動的立場の小児看護師などの医療従事者が必要となる。


子どもは、年齢によって、さらには個人によって、言葉の習得や理解の範囲も異なってくる。それでも「いつもと違う」「なにかが違う」という“感覚”的なことにはとても敏感である。
病状の告知、余命の告知は、最終的な親の判断になるのだと思うが、親の体やこころの変化に子どもが不安を抱き、亡き後に「負の印象」を抱き続けないためには、適切な支援が必要である。
グリーフケアの範囲の広さ、そして重要さを痛感した。

予期悲嘆:死別を予期した時に起こる悲嘆反応



死別の悲しみから立ち直るために (臨床死生学研究叢書 2)

聖学院大学出版会

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