社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

高齢者医療難民 吉岡充 村上正泰(2008) PHP新書

2009-01-05 16:08:26 | その他
副題:介護療養病床をなぜ潰すのか

吉岡氏:医師、村上氏:元財務省(厚生労働省への出向歴あり)職員による、その問題提起と廃止案可決に至るまでの動きをまとめている。
吉岡氏の章は、話し言葉でつづられているため読みにくい面もあるが、現場の医師が持つ「苦悩」を感じることができる。

・介護療養病床の廃止の結果、約11万人の高齢者が行き場をなくすと予想。
・受け皿の整備として設けた在宅療養支援診療所は約1万か所が登録を申請しているが、実際に24時間体制で稼働しているのは、200クリニックしかない。
・そもそも違う目的で設けられた「医療区分」(3段階)が、介護療養病床をなくすための目安として用いられることになった。この発想そのものが、実情を無視した政策の発端である。

引用
「高齢者医療では、医療とケアを分けることができないということです。生命を支える医療と生活を支えるケアが切り離せない。そうしたケアを毎日ていねいに続けていくことで、状態の増悪や急変を防ぐ、それが介護療養病床が行っていることです」(P.27)



「今の状態をキープするために、ケアをする/受ける」という考え方が、根本から崩されてしまいそうな危機感を抱いた。
「医療区分1」に該当する人が、今後入院対象とならないのであれば、自宅で介護体制をとれない人は、何らかの医療処置(IVHや胃ろう、人工呼吸器など)をあえて行い、そして入院するほかないのだろうか。
「家で看取る/看取られる」というのは選択肢の一つとして保障すべきことであり、国が強制するものではない。
このままだと病院でも在宅でも、その体制が十分に整備されないまま、「延命治療」の技術が悪い方向で活用されかねない。
「受けたいケアを受けたい場所で保障される」…こういった考え方は、通用しなくなっていくのだろうか。



コメント (2)
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