無題そのひゃくにじゅういち

オリンピックの話題。
卓球団体女子が、銅メダルを獲得した。
個人的には、銅メダル獲得後の福原愛選手のインタビューでの涙が印象に残った。

ある年齢から上の世代の人々にとっては、福原選手というと、まだ幼稚園くらいの時に、とんねるずあたりと卓球をして負けると泣き出してしまう『泣き虫愛ちゃん』のイメージが強いだろう。かくゆう俺もその世代にあたるが、あの小さかった愛ちゃんが、いまは女子チーム最年長として、オリンピックで活躍している。それだけでも感慨深いものがあるが、メダルを獲得……それも二体大会連続である。思わず泣いてしまった方々も多くいるのではないだろうか。

インタビューでの彼女は、準決勝での敗北を何度も思い返しては後悔をしていたと語っている。おそらく、繰り返し自分を責め、折れそうになる心をどうにか押し止めて三位決定戦へと、自らを奮い立たせたに違いない。『死ぬ気で頑張りました』との言葉は、比喩などではなく、本気でそう思っていたのだろう。『苦しいオリンピックでした』という一言は、周囲の期待に押し潰されそうになりながら戦っていたであろう彼女の、最後の最後に報われたからこそ口にできた本音であったと思う。

福原選手はインタビュー後、すぐに顔を両手で押さえた。とめどなく流す彼女の涙は、しかし、何度も観てきた『泣き虫愛ちゃん』が流した悔し涙ではなく、気の遠くなるような労苦の日々をくぐり抜けて、相手にも自分にも勝利をおさめたアスリートだけが流すことを許される、歓喜の涙だった。