中田真秀(なかたまほ)のブログ

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Kuの導出と意味 : Ku-Chartの仕組み

2014-12-22 21:09:41 | 日記
Ku-Chartというのがあるが、これが通貨の強弱を表すというので、使われている人も多いらしい。
28通貨ペア・パワーマップ:ドルスイス、NZDに負ける? 確かに昨日のNZDCHFやEURNZDの動きはKu-Chartでよく分かった。

導出に関してはどこにも書いてなかったので、ここで導出してみた。また少し考察も加えてみた。
尚、私は経済の専門ではないので言葉の定義などは通常のそれらとは違うことがある。

仮定として
* 通貨にはそれぞれ絶対的価値vがあり、為替レートはその比
これは相対的購買力平価説に近い。価値指標は、インフレ率に読み替えれば良い。為替レートrijは、絶対的価値vi/vj
また、絶対的価値といったが、金本位制を思い浮かべれば良い。

* vの変化率の総和は0
従って、たとえば、USDの絶対的価値が10%上昇するということは、JPYが5%、EURが5%下がるということになる。
これも相対的購買力平価説では、短時間でのインフレ率の変化率の総和は0ということである。

* vの変化率はそれぞれ微小である。
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事実として
xが常に小さい正数で
* log(1+x)=x (x<<1)
が成立する。

さて、i=1,...,n種類の通貨があるとする。
各通貨の絶対価値をv_iとし、ある一定時間後 v_i+\delta v_iとなったとしよう。この時、\delta v_i / v_i を求め\delta v_i / v_iをプロットすることにする。

まず、各通貨のレートは知っている; r_ij = v_i / v_j, r^*_ij = (v_i + \delta v_i) / (v_j + \delta v_j) として、両辺のlogをとると、
log r^*_ij = log (v_i + \delta v_i) - log (v_j + \delta v_j) = log v_i ( 1 + \delta v_i /v_i) - log v_j (1 + \delta v_j / v_j)
= log v_i + \delta v_i / v_i - log v_j - \delta v_j /v_j
= log (v_i / v_j) + \delta v_i / v_i - \delta v_j /v_j
= log r_ij + \delta v_i / v_i - \delta v_j /v_j
log r^*_ij - log r_ij = \delta v_i / v_i - \delta v_j /v_j
log (r^*_ij / r_ij) = \delta v_i / v_i - \delta v_j /v_j
ここでjについて和をとると
\sum_{j} log (r^*_ij / r_ij) = (n-1) \delta v_i / v_i - \sum \delta v_j / v_j
\sum_{j}= \sum \delta v_j / v_j = 0 (絶対的価値変化の総和はゼロ)
\sum_{j\neq i}= \sum \delta v_j / v_j = \delva v_i / v_i

つまり、
\delta v_i / v_i = 1/n \sum_{j} log (r^*_ij / r_ij)
となる。
通貨iに対する為替レートのある時刻での比のlogの平均値が、iの絶対的価値の変化率が求まる。


コメント
Kuの導出はこちらで考えたもので、もともとの意図とは異なる可能性が高い。違う考えに基づいても同じ式になることは多々有る。

各通貨に絶対的価値を仮定するのが正しいかどうかはわからない。相対購買力平価説におけるインフレ率という考えよりかはわかりやすいかも。
通貨の絶対的価値の変化の総和はゼロというのも、必ずしも正しくはない。実態経済に変化がないというごく短時間では正しいかもしれない。
つまり、USDのインフレ率が10%上昇するということは、JPYが5%、EURが5%下がるということであるが、流量の少ない通貨はこの総和ゼロという条件ではインパクトが大きくなりすぎるきらいがあると思われる。たとえばNZD, RUBなどは勝手に下がる可能性があるので、計算に入れるべきではないかもしれない。
さらに、価値の変化率が大きいと実体経済への影響が大きいので、このモデルは成り立たなくなる。数学的仮定とは違うが微小、つまり「絶対的価値の変化率は微小」という仮定も必要。ちょうどlogの近似はこの範囲で成り立つため都合が良い。

短時間、小さい変動の時のみに成り立つ指標だと考えられる。
ということで、積分値、つまり売られ方の絶対値をみるのは、長時間をみているということであまりよいことではない。短時間の微分値、方向、としてみるのが正しい。

Ku Chart長時間についての考察 plotするのは
\delta v_i / v_i = 1/n \sum_{j} log (r^*_ij / r_ij)
である。右辺を変形すると
= 1/n \sum_{j} log r^*_ij - \sum_{j} log r_ij
起点とするレートについての影響は -1/n \sum_{j} log r_ij のみ、起点の変化による影響は定数のみの違いなので、
長時間を見てもある時刻近傍では、絶対値が違う分以外は、厳密に正しいことになる。どうせある時刻での近傍でしか意味がないので、
見やすくするのに、ときどき計算起点を移動させてやるのは正しい。

また、微分値だけ見るのであれば、そもそも計算の起点を考慮する必要さえない。
ここで式の中では仮定が消えているが、そこらへんがこのKuのうまいところで、安定している所以だろう。微小変化を考えると
長時間部分は、-1/n\sum_j\log r_ijの部分に押し込められていて、見かけ上消えてしまう。

結論

計算精度、計算理論、安定性、情報量の多さ、投機のタイムスパンにフィットしているなど、バランスのよい指標だと思います! すごい!

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