都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

サントリーミュージアム 天保山の休館について:天保山の開発

2009-08-29 15:00:26 | 都市開発

 天保山の開発について書く。天保山とは天保の川ざらえで出来た山で、大阪で初めての突堤が出来たところだ。開発前は倉庫街で、高速船乗場やかつての船員バー、洋食屋がひっそりとあった。<o:p></o:p>

このエリアの再開発の起爆剤となったのは1990年開館の海遊館であろう。ボストンやボルチモアの再開発ではウォーターフロントの集客の核(Magnet)機能を担った。海遊館の設計はケンブリッジセブンアソシエイツ(CACambridge Seven Associates  http://en.wikipedia.org/wiki/Cambridge_Seven_Associates ) でエキスポなどのPavilonが得意であり、設計は Peter Chermayeff ( http://www.csp-architects.com/Flash_File.swf )で兄のIvan Chermayeff  http://www.cgstudionyc.com/  http://metroartwork.com/ivan-chermayeff-biography-artwork-m-217.html )はグラフィックデザイナーとして高名で海遊館のロゴや壁面デザインをしている。<o:p></o:p>

C7Aは水族館の作品が多く、出世作はNew England Aquarium 円筒形の水増の周りを4階までらせん状に上がる( http://metroartwork.com/ivan-chermayeff-biography-artwork-m-217.html )というシナリオ型のパビリオン構成を初めて実現した水族館である、次にBaltimore National Aquarium エスカレータで展示を見ながら最上部(温室)まで上がり、水槽の内側を下る ( http://en.wikipedia.org/wiki/National_Aquarium_in_Baltimore )という展開に至った。<o:p></o:p>

天保山の海遊館(Osaka Aquarium)では最上階の温室までエスカレーターで一気に上がり、内側の大水槽と外側の小水槽の周りを降りるという構成となった。外観も上部の温室がランドマークにふさわしい形である。C7Aは内部からデザインしているため概観は「いかつい」ものが多い。<o:p></o:p>

このとき、天保山ハーバービレッジでは水族館が突端にある。これは集客施設は駅から離れた方ほうが手前の商業に来訪がみこめること、ランドマークとして視認性がよくなることがある。このとき天保山ハーバービレッジにはホテルシーガルてんぽーざん大阪(ホテルシーガル高島屋からホテルシステム二十一が運営に変更)ともにサントリーの美術館も構想されていた。安藤忠雄設計(南港にライカ本社(1989年)を設計していた時期、その後、大阪港国際フェリーターミナル 1996年もあり)で1994年に開館た。<o:p></o:p>

当時はウォーターフロントのブームであり、天保山は「アーバンリゾート」として注目されていた。海遊館は流行の施設として日経の大賞を受賞したくらいだ。<o:p></o:p>

海遊館は類を見ない大型水族館であり投資額も大きく来館者数の予測が収支の決め手であった。というのも水族館は施設維持費と初期投資が大きく、来館者による費用は殆どかからないため収入(来館者人数と入場料単価)が変動要素となる。当時の日本での集客施設の人数予測手法は施設比較法かピーク依存率であった。天保山では 日帰りと宿泊(Visitor&Tourist)と施設誘引度(Attractiveness)により予測がなされ、それを越える集客となっているがそれでも平均すると200万人/年超の水準だ。<o:p></o:p>

サントリーミュージアムも同様の調査がなされたと思われるが、当初の予測が150万人/年は大きい。むしろ、95年が最高で101万人/年、現在の65万人/年でも立派なものだ。ますは何で施設内容がアイマックスと現代美術がテーマとなったのか訝る。もともと赤坂にあった美術館も基本理念「生活の中の美」で工芸品の展示が多かった。(現在は六本木に 設計は隈)しかも現代美術との展示の合体施設は特殊だ。このあたりの事情は不明だが、サントリーのイメージにそぐわないのは否めないだろう。映像でもアンクルトリス、音楽で「夜が来る」で「ウイスキーがお好きでしょう」と試飲などできるCM歴史資料なら理解できるが。( http://www.suntory.co.jp/whisky/old/ad/ad01.html )<o:p></o:p>

先ず前提として、美術館で入場料から収支が合っているものは少ない。文化事業とはサントリーホールをはじめそのようなものではないか。考えるに、アイマックス・シアター(平面)はオムニ・マックス(ドーム状)に比べ訴求力が劣り、ホームシアターとデジタル化によりいよいよ新奇性が失われたことも一因だろうか。またはアイマックス社の機械の耐用年数・リース期間からくるものかもしれない。安藤の建築も海遊館に比肩する美術館部分とシアター部分の組合せの面白い形だが。今回の閉館で天保山のエリアとしての訴求力低下を懸念する。他の用途はアイマックスの階段劇場は転用しにくいのでテレビ収録は如何だろう。幸い都心からの車の便利はよくなったし、無料なら新宿のアルタのように観客も集まるだろう。<o:p></o:p>

ウォーターフロントとして今や中ノ島の時代だ。天保山は独自の面白さを狙うのが方策である。それにしてもポスター展(カッサンドル 他)やアール・ヌーボー、デコの展示などは印象に残る。

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「幽霊屋敷」の文化史:加藤耕一 : 一部の人のみ、楽しい本です

2009-06-12 19:42:05 | 趣味

建築の博士の御本。 ディズニーのホーンテッド・マンションを軸に映像トリックや幽霊屋敷の歴史を書いてある。博覧会、展示、ディズニー・フリークには図面もあり楽しいが一般的ではなかろう。<o:p></o:p>

しかし、楽しめた。次作を期待する。ローラーコースターとスペースマウンテンでも書いてくれないかな。水族館の変遷なら協力しますが。<o:p></o:p>

そこから「見世物学」でもやってもらいたい。出雲の御国から初めて貰うとスケールが大きい。<o:p></o:p>

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出町の中州の菜の花を描きました、初めての焼き物も

2009-05-06 15:29:26 | 趣味

 出町の菜の花を描こうと出かけました。今回は菜の花の花の黄色と葉の透明感のある黄緑の対比及びにあわせて若葉萌える東山の春の風情をテーマにしました。東山、吉田山、川端通り、自転車の斜路、護岸、水面、中洲などの折り重なりを整理して、抽象ぽくしています。(パースがない分楽ですが)結構構成に手間取り、色も陽射しの変化を待ったりでいつもの倍の時間がかかりました。お楽しみ頂けると幸いです。( http://www15.plala.or.jp/n7ohshima/drawing4.html )<o:p></o:p>

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 初めての焼き物は大山崎の陶アトリエ山崎 ( http://local.yahoo.co.jp/detail/spot/5b98d0469e58b094f0b495bcf07320f9/ )で、体験を。陶芸とは工芸と良く分かりました。お皿と自由になにかを作って下さいとのことで、水族館シリーズのペンギン、アザラシ、ラッコ、カモノハシを作る。かつて海遊館のラッコの餌代を計算して収支をはじいていたのを思い出す。結構人気で親戚の叔母様方に差し上げました。ご笑覧ください。( http://www15.plala.or.jp/n7ohshima/yakimono.html )<o:p></o:p>

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街並みと建物の評価

2008-08-17 09:10:42 | 都市計画

連日の暑さがつのります。五山送り火も迎え、そろそろ秋の気配でしょうか。炎天下のもと百日紅の花が咲き誇っておりますが、テニスコートに蜻蛉がまっておりました。<o:p></o:p>

エアコンの効く部屋に避難(という表現になるくらいの暑さ)して景観の本を読了しました。<o:p></o:p>

①「まちづくりと景観 」 田村明著→包括理論的でまとまりが素晴らしい。活用のために観点・分析の根拠とプロセスが明示されていたらとないものねだり<o:p></o:p>

②「美しい都市・醜い都市」 五十嵐太郎著→各誌連載のまとめで事例と観点(テーマパーク、監視カメラなど)が新しい<o:p></o:p>

③「失われた景観」 松原隆一郎著→景観と都市経営、行政・法律の観点を持ち込んでいる、巻末のリストは重宝します<o:p></o:p>

どの本も楽しめました。景観で観点は①「まちづくりと景観」にまとまっておりますのでここでは論じません。(お読み下さい)<o:p></o:p>

それに関連し先日、難波を歩いて気がついたことは「個別の建築」と「まとまりとしての景観」です。難波はご存知のとおり表現的で、看板にたこ、えび、かに、ふぐ、壁面にグリコのおじさん、観覧車、フリーフォールと多彩でそれぞれの自己主張が激しく、まるでゼリービーンズの大袋のように派手なモザイクになってしまっています。またキリンシティが解体されており、建築の移り変わりを感じました。<o:p></o:p>

この20年の建築を振り返ると<o:p></o:p>

      80年代:ポストモダン、「主張」のある形態<o:p></o:p>

      90年代:「透明」、ポストバブルで透明のカーテンウオール、エコも対応の真面目で優等生<o:p></o:p>

      2000年代:「コンピュータと」、構造の試み<o:p></o:p>

特に街並みにとって80年代は忘れ去られていたと思います。建築単体としての「自己主張」と「作品」の展覧のようなものでした。果たして建築は作品なのでしょうか?現在の建築学会の作品選集を見ても個別の建物が殆ど人の姿もなく掲載されています。これは、建築とは「そのもの単体で作品として外部の形態や内部空間、機能性が評価」されるという評価基準があるということでしょう。建築家は「作品」として認められたいでしょうから、その評価に沿って動くでしょう。(畏友 永井さんは「建築はFine Artではない!」という論点を頂きました)<o:p></o:p>

「作品主義」での評価があるなら「街並み主義」の評価を設定すれば思います。たとえば「街並み建築大賞」とか。<o:p></o:p>

その位置付けとして、縦軸は建築の設計の目的を表現と利用に分け、横軸は街並との異化・同化で区分しますと下記の評価マトリクスが考えられます。<o:p></o:p>

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街並み<o:p></o:p>

設計の目的<o:p></o:p>

C 異化(街並みから突出)<o:p></o:p>

D 同化(街並みと一体化)<o:p></o:p>

A<o:p></o:p>

表現・提案主体<o:p></o:p>

1.   街並み誘導型施設(水族館など)<o:p></o:p>

2.   目立つ建物<o:p></o:p>

4.街並み一体型施設(街並みへの提案、新しい街並み要素の付加など)<o:p></o:p>

B<o:p></o:p>

利用・連帯主体<o:p></o:p>

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3.迷惑建物(色など)<o:p></o:p>

5.修復・保存・転用<o:p></o:p>

6.デザイン・モデルの提案・実施<o:p></o:p>

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1.   は新しいまちづくりのための先導施設です。大型面的再開発ではタワーや水族館などがよくみられます。<o:p></o:p>

2.   目立つ建物は、ポストモダンの建物を考えて頂くとよろしいかと思います。京都の北山通りくらい色々並んでいるとそれはそれで面白いのですが。今の銀座もこれに近い、建築展示場のようです。<o:p></o:p>

3.   普通の建物なのですが、色や看板で街並みの迷惑になっているものです。コンビニやファストフードの均一的建物もこの一種かも知れません。<o:p></o:p>

4.   よく考えられた建築で個性と街並み(まちづくり)や賑わいづくりに寄与している素晴らしい事例です。例えば京都三条のタイムズ1,2があります。このように新しい小路や親水空間の提案がある設計が望まれます。建築・街並みの両面から賞賛されるべきでしょう。<o:p></o:p>

5.   今までの街並みの資産を再活用する手法です。これらをもっと表に出して称えるべきと考えます。<o:p></o:p>

6.   街並み誘導のためのデザインガイドとその実践例も焦点をあてたい分野です。<o:p></o:p>

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これらの建築の選定については、バイアスや公平性のため、住民の評価、コミュニティの参加、行政との協同など評価軸を決め、ピア相互のレビューなどで決定するシステムが望まれます。<o:p></o:p>

詳細は引き続き、ご意見賜われば幸いです。<o:p></o:p>

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