「このごろ、ご主人おしゃれになったわね」と、
近所の奥さんに言われたと、
我が同居人ドノが報告して来た。
そう云えば、
私は一年ほどかけてだが10キロほど瘠せたので、
この夏は、
十年ほどはいてなかったスラックスをはいているが、
確かにあれは、
見ようによっては、おしゃれに見えるかもしれない。
イヤイヤ、おしゃれと云うのは言葉のアヤで、
実際には、「年に似合わぬ派手好み」と思われていて、
面と向かってはそうとも言えず、
遠まわしのイヤミで「おしゃれ」と言っているのかも知れぬ。
テレもあってそう言ったら、
「アノ奥さん、そんな陰険な人と違うよ」と叱られた。
「ハンチングなんかかぶって・・」とも言われたそうである。
フム、あれは夏の夜、散歩するとき、
自転車などにぶつかられぬ用心に、白い帽子をさがしていたら、
たまたま見つけたのが、
白い網目生地の鳥打帽だったただけと云うことなのだ。
私の子供のころ、
ニッカボッカに地下足袋、皮のジャンパーに鳥打帽、
と云うのが、
土建屋や不動産屋など、
金回りが良くて粋なオジサンのにとっての“正装”だったのだから、
GパンにTシャツ、
その上からアロハシャツを羽織って、
白い鳥打帽と云う私のスタイルは、やっぱり邪道で、
おしゃれなどとは程遠い、と承知しているのです。