きのうの続き。
「狐を化かした男」その後半。
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その節、又市の申しそうろうは、
「汝を くすべ殺しそうろても益なし、
いま、汝が美しき女に化け居りそうらわば、
これより島原の遊郭に連れ行き、女郎に売るなれば、
そなたは三日の間、女に化け続け居り申すべし」と申し聞かせ、
そのまま島原に連れ行き、
金子三百両にて売り申しそうろうて、まかり帰りそうろうよし。
又市、帰りて女房・子共に申し付けそうろうは、
「何方(いずかた)より、いかようのこと申し来たりそうろうても、
主人又市は、四・五日以前より宮参り致しそうろうよしに申しそうらえ」と申し付け、
すぐに又市は、何処(いすこ)となくまかり出でそうろうよし。
しかる処に、かの狐、
一両日はおとなしく黙り居りそうらえども、
以後はものかげに入りそうろうては、ひたすら泣き申しそうろうに付き、
廓の者ども、色々と申し聞かし、
なだめすかしそうらえば、ようように機嫌を直しそうろうよし。
おりふし、三日目の夜、
せっちんに参りそうろうて、 (せっちん→トイレ)
そのまま、
なんと申しそうろうても、せっちんより出で申さずそうろうゆえ、
無理にもせっちんの戸を開け、
見そうらえば、半分 狐になりかけた女、そのまま逃げ出でしそうろうよし。
それゆえに廓の者ども、
「にっくきは又一なり」と申しそうろうて、
又市の所へまいり、
とやかくと右の分けを申しそうらえば、
又市、しらじらとして、
「いんや、我らはその四・五日以前より宮参りいたし居り、
中々、さようなることは存ぜぬことにてそうろう」などと申しそうらえば、
廓の者ども、
「さては、あの時の又市と申しそうろうも、狐にてそうらわん」
などと申しそうろうて、口惜しがりそうろうよし。
又市はその分にて相済みそうろうゆえ、
その後も、何の差しさわりもこれなく暮らしそうろうよし。
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