漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

【母カラスの邪淫】

2018年07月14日 | ものがたり
【母カラスの邪淫】

奈良に都のあった聖武天皇のころ、
和泉の国の長、倭麻呂(やまとまろ)邸に大樹あり。

この木にカラス巣を作りて、
メスが卵を抱き、やがて子を成す。

オスは方々を飛び、
エサを探しきては、巣に運ぶ。

処がこのメス、
オスが食を求め飛び回る留守に、

あだしオスを引き込みてつるむ。 (つるむ→交尾する)

このメス、
あだし心のままに子を捨て、(あだし心→浮気心)

やがてあだしオスに誘われ 高く飛び去る。

時に夫のカラス、
エサを持ちて帰れば、妻カラスの姿なし。

父カラス 
子を憐れみて抱き寄せ、

エサをあさらずして、日を経れば、

倭麻呂、そのようすを見て気にかけ、
家人に命じハシゴをかけ、

その巣の中を見るに、
父カラス、児を抱きてともに死にけり。

倭麻呂、おおきに悲しみ、
母カラスの邪淫を憎み憐れみ、

世を厭(いと)いて仏道を志し、名を寂林と改める。

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(世を厭いて仏道を志し → 世俗を嫌って出家し)


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