【母カラスの邪淫】
奈良に都のあった聖武天皇のころ、
和泉の国の長、倭麻呂(やまとまろ)邸に大樹あり。
この木にカラス巣を作りて、
メスが卵を抱き、やがて子を成す。
オスは方々を飛び、
エサを探しきては、巣に運ぶ。
処がこのメス、
オスが食を求め飛び回る留守に、
あだしオスを引き込みてつるむ。 (つるむ→交尾する)
このメス、
あだし心のままに子を捨て、(あだし心→浮気心)
やがてあだしオスに誘われ 高く飛び去る。
時に夫のカラス、
エサを持ちて帰れば、妻カラスの姿なし。
父カラス
子を憐れみて抱き寄せ、
エサをあさらずして、日を経れば、
倭麻呂、そのようすを見て気にかけ、
家人に命じハシゴをかけ、
その巣の中を見るに、
父カラス、児を抱きてともに死にけり。
倭麻呂、おおきに悲しみ、
母カラスの邪淫を憎み憐れみ、
世を厭(いと)いて仏道を志し、名を寂林と改める。
~~~~~~~~~~~
(世を厭いて仏道を志し → 世俗を嫌って出家し)
奈良に都のあった聖武天皇のころ、
和泉の国の長、倭麻呂(やまとまろ)邸に大樹あり。
この木にカラス巣を作りて、
メスが卵を抱き、やがて子を成す。
オスは方々を飛び、
エサを探しきては、巣に運ぶ。
処がこのメス、
オスが食を求め飛び回る留守に、
あだしオスを引き込みてつるむ。 (つるむ→交尾する)
このメス、
あだし心のままに子を捨て、(あだし心→浮気心)
やがてあだしオスに誘われ 高く飛び去る。
時に夫のカラス、
エサを持ちて帰れば、妻カラスの姿なし。
父カラス
子を憐れみて抱き寄せ、
エサをあさらずして、日を経れば、
倭麻呂、そのようすを見て気にかけ、
家人に命じハシゴをかけ、
その巣の中を見るに、
父カラス、児を抱きてともに死にけり。
倭麻呂、おおきに悲しみ、
母カラスの邪淫を憎み憐れみ、
世を厭(いと)いて仏道を志し、名を寂林と改める。
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(世を厭いて仏道を志し → 世俗を嫌って出家し)