きのうの続き。
殺しかねない土右衛門から、
引き剥がすように老婆を引き取った仏又六ですが、・・・さて。
尚、以下の文中の、
「高安」は地名。
~~~~~~~~~~~~~~~
病苦の老婆を肩にかけ、
仏の慈悲者又六が、ようよう連れて我が家に寝させ、
肉親の母の如く 日々 介抱のおろそかならねば、
両三日経ちて 病人は 少し病苦も忘れけん、
又六に素性(すじょう)告げて、
「我は高安の近郷、
五ヶ村ばかりの庄屋の母にて、十三ヵ年の長病(ながわずらい)、
倅(せがれ)や嫁、
子らや孫どもまで、大事に手かけくれ過ごせども、
あたら医療に験(しるし)なき。
そう云う折に今度の洪水、
病苦に子細(しさい)も覚えねば、
いつどのようにして長持へ這入れしかも知らず。
どうして ここへ来た事ぞ。
処がそなたのこの恩義、
見も知らぬはずのこの婆を、
実親(じつおや)のごとくに介抱(かいほう)たまわるその真心、
その実心が肝まで沁みしか、
この朝は、十余年、ついぞ覚えたこともなき婆の快さ。
ここはまず国(いづく)にて、
こなたの御名は何と申すぞ。
わしの倅(せがれ)や子や孫どもは、水に流されて何国ぞ」と、過ぎ来し方の物語。
~~~~~~~~~~~~~~~
真実込めた又六の、
介抱の甲斐あってか、一息ついた老母が語りだす。
殺しかねない土右衛門から、
引き剥がすように老婆を引き取った仏又六ですが、・・・さて。
尚、以下の文中の、
「高安」は地名。
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病苦の老婆を肩にかけ、
仏の慈悲者又六が、ようよう連れて我が家に寝させ、
肉親の母の如く 日々 介抱のおろそかならねば、
両三日経ちて 病人は 少し病苦も忘れけん、
又六に素性(すじょう)告げて、
「我は高安の近郷、
五ヶ村ばかりの庄屋の母にて、十三ヵ年の長病(ながわずらい)、
倅(せがれ)や嫁、
子らや孫どもまで、大事に手かけくれ過ごせども、
あたら医療に験(しるし)なき。
そう云う折に今度の洪水、
病苦に子細(しさい)も覚えねば、
いつどのようにして長持へ這入れしかも知らず。
どうして ここへ来た事ぞ。
処がそなたのこの恩義、
見も知らぬはずのこの婆を、
実親(じつおや)のごとくに介抱(かいほう)たまわるその真心、
その実心が肝まで沁みしか、
この朝は、十余年、ついぞ覚えたこともなき婆の快さ。
ここはまず国(いづく)にて、
こなたの御名は何と申すぞ。
わしの倅(せがれ)や子や孫どもは、水に流されて何国ぞ」と、過ぎ来し方の物語。
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真実込めた又六の、
介抱の甲斐あってか、一息ついた老母が語りだす。