漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

ビミョーと絶妙

2009年09月29日 | テレビ 映画 演芸
「ビミョー」と云う若者言葉は、
あまり芳しくない状況の時、断定や明言を避けるために使う、と辞書にあります。

「テストできた ?」
「ビミョー」

教えたくないけど、拒否してはカドが立つ時、確かに便利な言葉です。

「日曜日、空いてる ?」
「ビミョー」

約束はしたくないけど、ノーとは言いにくい相手に便利。

大阪は商人の町だけに、
相手を傷つけずに拒否する言葉が発達しました。

商品見本を持って行って売り込み、

「これ良ろしやろ、いくつかどうです?」
「エエ、まぁ、考えときますわ」

買う気があれば、
「いくらですねん?」と聞いてくるはずだから、これで「買う気が無い」の意思表示。

断られた方も了解して、
「ほな、また来ますわ」と引き下がる、これで、双方ともギスギスせずに済む。

京都も長く王城の地だっただけに、
古くからの過密都市、

人同士の付き合いに気を使うから、言葉の用法も当たりがやわらかい。

「京の茶漬け」と云う落語がある。

ある大阪の男、
商用で京へ上がり、ちょくちょく顔を出す家があるが、

話をして帰りかけると、
その家のおかみさんが必ず言う、

「あの、何もおへんのどすけど、ちょっとお茶漬けでも」

下駄はく、靴はくといぅ段階になってから、「ちょっとお茶漬けでも」、

まぁ、これも「愛想」で言うてるだけで、
ホントにお茶漬けを食べさせたいと云うワケではない。

客の方も分かっているし、
第一、お茶漬けぐらいで座り直すヤツも居ない。

処がこの男、
行く度、行く度、
同じようなタイミングで、同じ言葉を掛けられている内、

だんだん むかついて来て、
いっぺん、「そうですかぁ、ほな、頂きますわ」云うて見たろ、と思い立つ、

茶漬けを食べるためだけに、
わざわざ、大阪から京まで出かけて行くと云う話。

コレ、京都でないとダメなんですね、
地方はモチロン、江戸や大坂でも雰囲気が出ない。

京都の柔らかい言葉で応対するところに、話の妙がある。

この落語、
いろんな落語家さんが持ちネタにしているが、
私が聞いた中では、人間国宝、桂米朝師の話が絶品。

今は、ナマで聞くのはムリになったが、録音でも充分、

こちらの面白さは、「ビミョー」ではなく、「絶妙」です。




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