漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

栄光の二塁手

2009年09月30日 | スポーツ
長嶋・王と云った名選手たちと共に、
「栄光のV9」を成し遂げた、
元・読売ジャイアンツの名二塁手・土井正三氏が逝(い)った。

堅実華麗な守備も見事だったが、
しぶとく、勝負強い打撃と、
相手のスキを見逃さぬ走塁技術は、ライバルチームのエース達が一番嫌った。

まことに、玄人好みのする名選手だった。

その土井氏の葬儀で、
V9時代の名監督、川上哲治氏が、
15分にわたる弔辞を述べたと今日の記事にある。

15分の弔辞と云うのも珍しいが、
その中で、
土井氏がオリックス・バファローズの監督時代、
イチロー選手を重用(ちょうよう)しなかった理由を述べていたのも異例だろう。

実は、先日の読売新聞の訃報記事でも、
このことを取り上げていて、

小見出しに、
「イチローの将来性を見込んで二軍へ」と付けた上で、

「土井氏はイチローの将来性を見越んだ上で、
 大器を鍛えるため、厳しさを頼みとした。」と書いている。

私は、
土井氏の栄光をたたえるだけで、
氏の野球人生を輝かせることができるのに、
今さら、こんな事を持ち出して、強弁する読売側の姿勢をイヤだなと思う。

いくら名声に包まれた人生でも、
ささやかな誤謬(ごびゅう)ぐらいはおかすものだ。

二軍で優秀な成績を上げていたとは云え、
イチロー選手を使うか使わないかは、監督の権限の内、

例え、それが、世間で噂されるように

「打撃フォームを矯正しようとしたが、云う事を聞かなかった」との理由で、
二軍に落とし干した、とて、

技術論の衝突など、いくらもあることだ、
わざわざ訃報記事に持ち出して、打ち消さねばならぬほどの落ち度ではない。

川上氏は弔辞で、
「野球は全員が力を合わせてやるものと教えたくて、
 まだ若いイチロー選手をファームに置いた。」と話したそうだ。

氏は、土井氏の名誉を守ろうと、
こう言ったのだろうが、
しかし、これでは、
「イチロー選手がワガママだった」と、非難しているように聞こえてしまう。

弔辞と云う反論できぬ場で、
故人を持ち上げるため、
他の人を貶(おとし)めると云うのでは、本末転倒、

大人気ない話だし、第一、故人も喜ばぬだろう。

球界全体を愛する、一野球ファンとしても悲しくなる。

土井氏は、
ジャイアンツの名選手であったと同時に、
オリックス・バファローズの、初代監督でもある。

その人が亡くなった時、
栄光は、いくら顕彰(けんしょう)してもいいが、
負の部分には触れず、そっとしておくのが、大人の思慮分別と云うもの、

少なくとも、私はそう思っているのだが・・・。

  
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【重用】 ちょう‐よう
  その人を重んじて、重要な役に用いること。

【強弁】 きょうべん
  無理に理屈をつけて、自分の意見や言い訳を通そうとすること。

【誤謬】 ごびゅう
  まちがえること。まちがい。

【本末転倒】 ほんまつてんとう
  根本的なことと枝葉のこととを取りちがえること。

【大人気無い】 おとなげ‐な・い
  幼稚でみっともない。

【顕彰】 けん‐しょう
  隠れた善行や功績などを広く知らせること。
  広く世間に知らせて表彰すること。

【思慮分別】 しりょふんべつ
  慎重に考えて物事を判断すること。





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