漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

恋するお店

2020年10月28日 | ものがたり

テレビで、
三十代半ばの女優が、

「そろそろ最後の決断をしなくちゃね」と明るく笑った。

この後の人生を
仕事に賭け、ひとり生き抜く覚悟を決めるか、

それとも結婚して
少し休んででも子供を産むか、

初産で子供を産める年齢としては、
もうギリギリの決断を迫られる時期が来ていることを、

軽い冗談のように話してるのだ。

自然、
思いはむかしのことに向かう。

30代半ばだった五年前、
職場の上司だった男と関係ができ、妊娠、

そのことを相手に言えず、
つのる嫉妬心から男の家の前まで覗きに行った事がある。

家族で買い物にでも出掛けるのか、
家の前では妻らしき女性の横で幼い女の子がはしゃいでいた。

そこへ出てきた男は、
それまで見たこともないような油断しきった表情だった。

ショックだった。

「あんな無防備な顔、私には見せない」

あの時の衝撃が、
「だれにも知らせず一人で産もう」と決断させたのだと思う。

母と私も、
父が女のもとへ走り辛い思いをしながら生きて来たから、

あの母と子にそんな思いをさせたくはない。

会社を辞め、
生まれた子は母に預け、

知り合いも伝手も無い港町に来て、

わずかな貯金をはたき
小さな飲み屋を開いたのはそれから一年ほど後。

四年経って、
それなりに生活のリズムはできたけど、

昔のことを思い出し胸が痛くなる夜もある。

あの人、
いまどうしてるかな、

あの時、娘ができていて
その娘が来年幼稚園と知ったらどんな顔するんだろう。

ちょっと、
入園式への案内状でも出してみようかな、

娘と私の本名並べて。


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ひと月ほど前かな、
「人生・歌がある」と云う番組で、

中澤卓也さんが、

前川清さんの前で、
前川さんの持ち歌を歌うと云う場面がありましてね。

イントロに入った時、
大先輩の前で緊張した面持ちの中澤さんに、

「難しいいよ、これ」と前川さんが声を掛けた。

さらに笑顔で、
後輩に「お願いします」と続けたのが、

大先輩の
後輩への配慮が見えて 見ているこちらをほのぼのとさせた。

その時の歌、
私は初めて聞く歌だったんですけど、

中澤さんの歌唱がとても素晴らしくてね、

で、ちょっと、
その歌「恋するお店」で、

頑張ってる女のミニストーリーを書いてみました。

 

 


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