漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

幽霊が坊さんになった話 ②

2012年01月26日 | ものがたり

●幽霊が坊さんになった話 ②

きのうの続き。

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善次は尚も眠り続け、
夜に至って、ようやく寒気にうち震えて目がさめた.

ノドの渇きを覚え、あたりを見まわせど真っ暗にて、灯りのかけらも見えぬ。

ぽかんとして、
いま自分がどこに居るやらも分からぬまま、頭に手をやれば、

これはナンと、
つむりに髪なく、額には紙があてられている様子、

どう思いをめぐらしても、、
酒屋に入る処までは思い出せるが、その後はサッパリ分からぬ。

そのうちにハッとして、
「さては飲みすぎて頓死したか」と思いつくや大いに驚き、

それでも思案し、
「まずはこの道をたどって行くべし」と、
オガラの杖にすがってたどり行くと、一つの川のほとりに出た。

「これが地獄の入り口、三途の川か」と、
呆然としている善次の様は、おかしさを超えて憐れなり。

よく見ればヒザまで届かぬ川と見てとり、
「我が罪は浅いか」などと言いつつ川を渡りだし、

亡者の衣を剥ぐと云う、
「正塚婆(しょうづかのばば)にも出会わぬは幸いなり」と喜ぶ気楽さ。

さて、善次が向うを見れば、閻魔の庁とおぼしき宮殿がある。

さすがに恐ろしさに肝を冷しつつも、
門に立ち寄り覗いて見れば、

折りから大王は、
正面の上座にて閻魔帳をひろげ、
顔をしかめて亡者の行方を思案されているご様子。

その脇には、
赤鬼、青鬼の獄卒どもが居並んで、
赤々と猛火を焚く体なれば身の毛もよだつ思いなり。

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※ 明日に続く。





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