漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

初笑い

2009年01月01日 | ものがたり
 
明けましておめでとう御座います。
 


初笑いに「きのうはけふの物語」より一席。

なお、
「上京(かみぎょう)」は、京都の地名。
「今焼きの壷(つぼ)」は、最近に焼いた壷、骨董的な価値はない。

「格子(こうし)」は、
細い角材をタテ横に間を開けて組んだ物、
ガラスのない昔、商店のショーウインドウとなっていた。

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このほど、上京にて、
にわかに金持ちになりたる者あり。

この者、道具屋にて、店先に今焼きの壷を出す。

ある茶人、通り掛かりて、
格子のうちをのぞき、

この壷を見て、
「さてさて風変りな壷かな、
 口がひろくば、茶会によかろう」と云いて、
手を入れてみれば、
入れたその手が抜けず、

様々にするが、なおも抜けず、
ついに困りて、まず、代金を問う。

あるじ、
内よりその手元を見て、
「千貫ならば売ろう」と云えば、

茶人これを聞きて驚き、
「はてさて、左様にするものではないぞ、
 せめて百貫にせよ」と値切る。

「なかなか左様にはならぬ」と云う。

二百貫、いや三百貫までなら出すと値切る。

あるじ承知せず、
「いやならこちらへ」とて、壷を持ちて強く引く。

茶人の手、次第に腫れて抜けず、
痛さに耐えかね、
「さらば、五百貫にて買おう」と云えば、

あるじも、手が抜けぬ先にとて手を打ち、カネ受け取る。

茶人、やれやれ帰らんとて、
手を引こうとすれば、今度は格子にはばまれて抜けず。

「ついでに格子をも買おう」とて、また百貫添え、
六百貫とり、今長者と申すなり。

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ンなアホな。




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