漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

牢抜けの者の事 ② 待つ

2009年11月18日 | Weblog
きのうの続き。

牢抜けの計画を打ち明けた文七、

「行くか行かぬかはそれぞれの判断、
 なれど、秘密は守るべし」と凄みを効かせ、さて、・・・

尚、以下の文中、
「ゲザイ」は、鉱山の穴掘り人夫、下在。
「穿(うが)つ」は、穴を掘ること。

「土間(どま)」は、石畳や床板が無く、土を突き固めた床。
   
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残りの奴ばら、これを聞きて、

「一々尤もなり、
 さてまた、
 汝はいかなる秘術ありて、この企てを成すや」、

文七云う、

「我、元は銀山のゲザイなり、
 故に土を穿(うが)つことに妙を得たり、

 この牢に移りし始めより、右の術 心に浮かみたり。

 そのわけは、
 此の牢は、中に少し土間あり、これこそ天の与えと思いしなり、

 万づ我にまかせよ」と云う。

 皆々文七が言を信ず。

 さて、銘々が自らの罪を測るに、
 半三郎、庄八、ほか二人、
 文七と共に五人は、遁(のが)れ難き大罪なれば、
 
 これ等は示し合わせて、いよいよ抜け出るに究む。

 その余の者共は、軽き罪科ゆえに残るに決す。

 それより文七、無駄言を堅く禁じ、密事の漏れるを制し、
 秘そかに古き大釘など引き抜き、
 ひそひそと支度して、雨の夜を待つ。

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昔の建築には、断面の四角い釘も使われていて、
大きな物は、長さ10~20cm、一辺が7~8mmぐらい有ったろうか。

ここで使われた釘の寸法までは分からぬが、まぁ、その辺りだろう。





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