漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

四月一日に「古事記」

2016年04月01日 | ものがたり

  【漫文・おもしろ古事記】 ・国生み~大蛇退治

 ■ 国生みの巻

昔々のまた昔、そのまた昔のはるか昔、
天と地が開け四方が定まり、この世界が始まったころ。

まず三はしらの神さまがあらわれて去り、
次にふたり、またふたりとあらわれた神さまも去り、

さらに次々とあらわれた複数の神さまの世となった時、
神さまたちが相談して、

まだドロドロでタプタプと定まりなき地上に、
男女ペアーの神さまをおくり、国を創らせることにした。

選ばれた神さまは、
男神がイザナギのみこと、女神がイザナミのみこと。

「みこと」は尊称だし、
「イザ」までは同じだから、早い話が「ナギ君」と「ナミちゃん」ですね。

で、このふたり、
天から地に架かる虹のような浮橋を降りてきて、

まだドロドロしている泥沼のような地上に、
両刃の長刀(なぎなた)みたいな矛(ほこ)を差し入れて、

ぐるぐるぐるっとかき回してスッと引き上げると、
刃の先からポタポタ、ポタリとしずくが落ち、

そのしずくが重なって島ができた。

ふたりでその島に降り、
まずは大きな柱を立てると、神さまにふさわしい家も建てる。

それがすむとひと息、
清らかな水なんかをを飲みながら、ナギ君がナミちゃんに話しかけた。

「君の体はどうなってるの?」、

ナミちゃんがこたえて、
「私の体はよく発育してんだけど、一ヶ所だけくっついてないワレメが有るの」

「へ~そうなの、
僕も一ヶ所だけ身が余って突き出してるところがあるんだ。

じゃぁ、こんなのはどうだい、

そのくっ付いてない処を、
僕の余って突き出している棒で差しふさいで国を生もうよ」

「アラ、なんだかいい考えみたい」。

そこでナギ君は柱を左から回り、
ナミちゃんは右から回りふたりが出合ったところで、

「君かわいいね」、
「あら、あなたも素敵よ」トカナントカ言い合って目合(まぐわ)いして結婚、

その結果として、めでたく子が生まれた。

それが淡路島。

若くて元気なふたりは次々と生む。

四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、最後に本州。
以上八つで大八島(おおやしま)、つまり日本のことです。

さらにいくつかの島を生み日本の国を創り終えた処で、
こんどは神さま、

地の神、水の神、風や木の神と次々神さまを生む。

さらに河の神、山の神と生み続け、
何十人か生んだ処で、燃える火の神を生んだ。

ところがこれが間違いの元、
イザナミちゃんは産道を大やけどして亡くなってしまった。

これで怒ったのが最愛の妻を奪われたイザナギのみこと。

「おのれ憎いヤツ」と、
腰に下げたるトツカの剣で火の神を真っ二つ。

このときのイザナギの涙や、
殺されて飛び散った火の神の体などから
またまた十人以上の神さまが生まれたと云うわけでして、

これが日本国誕生の物語・・・・・。

イエ、私が言うんじゃない、
古事記にそう書いてあるんだから仕方がない。


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 ■ イザナギ黄泉の国へ行くの巻


さて妻を失ったイザナギ君は淋しくてたまらない。
もう一度、愛しい妻ナミちゃんに会いたいの思いがつのって、

とうとう自分で、黄泉(よみ)の国へ行くことにした。

ヨミの国は死者の国、闇の国です、
その真っ暗闇の中を進んで墓室の前に立って呼びかけた。

「お~い、愛しい人よ、イザナミよ、
二人の国はまだ創り始めたばかり、
これからが、あなたの助けのいる時なんだから、ぜひとも帰って来ておくれよ」。

すると死んだはずのイザナミの声が聞こえて来た。

「くやしいわネェ。
 あなたの来るのがチョッと遅かった。

わたしはもうこの国のものを食べてしまったの、
だから二度と帰れないのよ。

でもあなたがここまで迎えに来てくれたことをこの国の神様たちに話してみるわ。
うまく行けば特例で帰してもらえるかもしれないから。

じゃあ、あなたはここに入って待っててネ、
でも約束、ゼッタイに私の方を見ちゃダメよ」。

イザナギは言われたとおりに待ち続けたが、
なにしろヨミは暗闇と静寂(せいじゃく)の国、どれだけ待ったか時間が分からない。

だんだん不安になってきて、
髪にさした櫛(くし)の歯を一本折り取ると火をつけ灯りをともした。

その灯りをたよりに見ると奥の方になにやら横たわっている。

近づいて覗(のぞ)き見ると、
これがなんと、イザナミの腐乱死体(ふらんしたい)。

腐りかけた屍(しかばね)は、
皮膚が破れてウミが流れ出し、
それへ白いウジ虫がむらがってクネクネと蠢(うごめ)いている。

首には青い蛇がからみつき、
顔や胸や陰部には、黒い蜥蜴(とかげ)のような魔物がビッシリと張り付いている。

その薄気味の悪いこと。

吐きそうになって、
「うっ」と呻いたイザナギはあとも見ず、一目散に逃げ出した。

処が、後から、
「よくも私に恥を(かかせたわね!」とイザナミの叫び声がして、

バタバタバサッ、 

イザナミの命令一下、
ヨミの国の魔女トカゲたちが群がって追いかけてくる。

こんなのに追いつかれては一大事、
三十六計、逃げるにしかず、逃げる逃げる、夢中で走る。

イザナギ、逃げながら、
頭から髪飾りをむしり取って投げ捨てる、

これがつる草で作った髪飾り、

地に落ちるや、
たちまち、むくむくむくと伸び上り、
あたり一面に山葡萄のつるがはびこりバリケード。

これで一安心、とホッとする間も有らばこそ、

追いかけて来た魔女たちは、
そのつる草に飛びついて、
バリバリバリッと葡萄もツルも食い破り、たちまちに食い尽くす勢い、

その間に少しでもと、
後も見ずに逃げるイザナギ、

逃げる逃げる、走る走る、必死で走る。

またもや背後に魔女の気配、追いつかれそう。

ナムサン、今度はイザナギ、
竹の櫛をバラバラにして後も見ずに投げ捨てた。

たちまち櫛の歯は竹の子となりニョキニョキニョキ、
今にも竹やぶになりそうな勢い。

これにも魔女らが飛びつき、
ムシャムシャムシャ、皮ごとバリバリバリッ。

その間にも、
逃げろや逃げろっ、走れや走れっ、また走れっ。

かくてはならじとイザナミ、
新手(あらて)をくりだす。

魔物たちに加えて、
筋骨隆々、赤いの黒いの、ゴリラにツノのよ生えたような邪鬼悪鬼たち。

追いかけろ追いかけろ、
追いつかまえて食べてしまえ、喰ったらウマイぞ、

それ追いかけろっ。

こうなれば、
誰でもいいからみんな行けっ、

龍も麒麟も、
虎やライオン、ネズミ男にネコ娘、ノッペラ坊や雪女、

アレもコレも、なんでもかんでも総動員。

逃げるイザナギもいのちがけ、
腰に佩(は)いたトツカの剣を振るいつつ、逃げる逃げる、

斬っては逃げる、また斬って走る。

そこへあらわれ出でましたるは、心臓破りの登り坂

逃げるには絶対不利、
だがこの坂さえ超えれば出口はすぐそこのはず。

イザナギ、入って来たときの記憶を頼りに、
あたりをキョロキョロ、

見つけた一本の木に登ると、
大きな実を三つ もぎ取り、エイッとばかりに投げつけた。

これが何を隠そう魔物を払う神仙の桃、
さすがの悪霊邪鬼どももたまらずギャッと声を上げて逃げ散った。

「やれやれ逃げおおせたか」
ホッとして振り向くと何ぞはからん、

ついそばまで来てるは、

今にも飛び掛らんばかりに手を伸ばす、
般若の形相、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)・・・じゃなかった、

アノいまわしいイザナミではないか。

イザナギ、手近にあった大岩を、
死に物狂いで抱えると、ヨミの国へ通じる穴へドスンとフタをする。

その岩ごしに、
「もはやお前とは永久の別れだ」、とイザナギが怒鳴れば、

中よりはイザナミの不気味なうなり声、

「オノレッ、この怨み忘れてなるものか、
今日よりは毎日、地上の人間、千人づつを縊(くび)り殺してやる」

「おう、それならわしも、
毎日千五百人づつの子を増やして見せるわ」。

かくてこの地上では、

毎日沢山の人が死に
毎日沢山の子が産まれるようになったのだ。

あ、イエ、私が言うんじゃない、
古事記にそう書いてあるんだから、仕方ない。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~

■ スサノオとアマテラス・天の岩屋戸

黄泉の国のイザナミの魔手から、
ようように逃れたイザナギは、
「身のケガレをはらおう」と筑紫(北九州)の海で体を清めます。

このミソギで、左の眼を洗うとアマテラス、
右の眼を洗ってツクヨミ、鼻を洗った時にスサノオが生まれます。

アマテラスは太陽神ですから、天の国タカマガハラを、
ツクヨミは月の神なので夜の世界を、
スサノオは勇猛な男神ですから大海原を、それぞれ治めさせます。

処が、スサノオだけは、
「やだぁ、やだやだ、絶対にやだっ」と喚きだすと、

その泣き声はものすごく、
山の木は枯れ、川の水も干し上がるほどの勢い。

呆れたイザナミが、
「なぜ、そのように泣く」と叱ると、

「だって、おいら、おいら、グスン、
おっ母のいる黄泉(よみ)の国に行きたいんだもん」

これを聞いて烈火のごとく怒ったイザナギ、
「お前の母はイザナミなどではない、そんなことを言うヤツは出ていけっ」。

イザナギの怒るのも尤も、
なにしろイザナギは、イザナミに殺されそうになって脱出、

いまようやく身を清めたばかりなんですから。

叱られたスサノオは、
出て行く前に姉に会おうと、

タカマガハラを目指して昇ってゆくと、
スサノオに治められるはずだった山や川、大海原が揺るぎだします。

国中が大揺れに揺れて、驚いたのはアマテラス、

弟のスサノオは、
「己の国が気に入らず、私の国を奪おうとして来たに違いない」と警戒、

男のように武装して
スサノオの前に立ちはだかり、

「なに用あって来たか」と大音声に問いただします。

姉の威勢に押されたスサノオは、
「おいら、野心は無えよ」と素直です。

「なら、なぜあのように大泣きするのか」

「おっ母に会いたいと泣いただけだよ」

それでも、揺れる大地の修まらぬを見て、
アマテラスは油断せず、「今はこの国に入るることならぬ」と追い出そうとします。

姉の冷たい態度に不貞腐れたスサノオは、
「別れを言いに来ただけじゃぁねぇか」と不満たらたら。

さすがに弟を哀れと思ったアマテラスは、
「ならばそなたの真心の清きはどうあかす」と問い詰めます。

姉ちゃん、折れたな、と思ったスサノオは、このチャンスを逃さず、
「なら、互いに誓いを立て、子を産まん」。

まず、アマテラスが、スサノオの持つトツカの剣を受け取ると、
三段に折り、清らかな音を立て天の井戸の水をくぐらせると噛みに噛み、

さあーっと息を吐くと、
その霧の中から生まれたのは、タキリ姫ほか三柱の姫神。

次はスサノオです。
アマテラスの髪飾りからスマルの玉をもらい受け、

同じく清らかな音を立てながら、
天の井戸の水をくぐらせ噛み砕くと、
霧の息の中から、アメノオシホら五柱の男神が誕生する。

それを見たアマテラス、
「あなたのものから生まれたのが女神、これはあなたの子です、
しかし、私の物から生まれた男神は私の子です」と宣言。

しかし、スサノオも負けずに勝ち誇って言います。
「おらが心が清ければこそ、清らかな少女が生まれた、おらの勝ち」、

言い終わるや、
アマテラスには有無を言わせず、

空中高く飛び上がったスサノオは、
あたり一帯の田を踏み荒らし、畔をこわし、溝を埋め、
さらには神殿に躍りあがり、床一面に糞を撒き散らして大暴れ。

ついには機屋の屋根を破ると、ナマ皮をはいだ馬を投げ込み大威張り。

この狼藉に驚いた織女は、
手に持った機織りの梭で陰部を突いて死んぢまった。

あまりのことにアマテラス、
憤然として身をひるがえし、天の岩屋戸に隠れたまう。

太陽の神アマテラスが岩穴に隠れては、
この世から光が失われ、あたりは真っ暗、タカマガハラのみならず地上の国まで真の闇。

ついに世界は、
夜ばかりで昼が無くなり、困りに困った八百万の神が急きょ集まり大会議。

夜明けを呼ぶ長鳴き鶏を鳴かすやら、
天の香久山の神木を取り寄せ

ピカピカの鏡や無数の勾玉やらを、
まるで七夕飾りの笹やクリスマスツリーのように飾りたて、

巫女に祈らせ神意をはかるがアマテラスは知らんぷり。

そこで八百万が知恵を絞った結果、

まず岩戸の脇には剛力のタヂカラオ忍ばせ、
岩戸の正面には、音響のいい檜の舞台をしつらえ、

みな、たっぷりそなえた酒で勢いをつけながら、
手近にある石や貝、竹や木切れを打ち鳴らし、

舞台へは芸達者のアメノウズメを上げると、
歌と踊りを催促、「よう、よう、よう」と、大拍手。

スター扱いに気分よくしたアメノウズメは、
段々と興が乗り、足踏み鳴らすやら歌うやら、

タップを踏むやら阿波踊りやら、
よさこい、よさこい、ソーラン節から鳴子踊りへ、

ついにはブレークダンスも飛び出して、

絶好調のアメノウズメは半狂乱に神がかり、
胸の乳を掻きい出し、着ている物は次々に脱ぎ捨て、

足高々と上げれば、
ホトもチラチラ、「あら見てたのねぇ~」、

そのとき神々、
どっとばかりに笑い、大声に騒げば、大山鳴動地鳴りの響き。

アマテラス、あまりの騒ぎに戸を細めに開け、
「なにごとならん」とうちのぞけば、

この時だけを待っていたタヂカラオ、
得たりやオウと、戸の隙間から指を入れ、岩戸をガラリ、ガラガラ、

アマテラス大神の御手をとりて引きい出す。

その時すかさず、
アメノウズメ、「これより尊き神なし」、
フトダマのミコト岩戸に〆縄して、「これよりは内に返りたもうな」。

かくて、世は昼の明かりを取り戻し、
神々、謀りてスサノオの髪を切り爪を抜き重き荷を負わせて追放せり。

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■  スサノオの大蛇退治

天つ国を出でしスサノオ、出雲のくにへ降り立ち、
川面に箸の流れるを見て、住む人あろうと上り行けば、

年経たる夫婦、中におとめを置きて泣く。

スサノオの問うに、翁こたえて、

「我が名はアシナヅチ、これなる妻はテナヅチ、
またこれなる娘はクシナダ姫ともうす」、

「してなにゆえに泣く」と問えば、

「我が娘、もとは八姫ありし、
なれどもこの山に住むへんげ、ヤマタノオロチ 歳ごとに来て、一人づつ喰らえり。
故、いまはただ一人のこり、今年もまたその時期となりて」とまた泣く。

スサノオ、「してそのへんげの形は」と問えば、

「その目、鬼灯のごとくに赤くして、胴一つに八つの頭と尾を持つ。
またその背には苔や杉檜生え、その身たけは八つの谷と八つのおかにわたり、
その腹は常に血にまみれ爛れてあり」。

ここにスサノオ、
その翁に語りていわく、
「その娘、吾にたてまつる気はなきや」

翁、「されども君が御名も知らず」と言えば、

「吾はアマテラス大御神のおとうとなり、いま天より降り来る」と申されき。

これを聞きてアシナヅチの翁、
「そは、いかにも尊し、さらばたてまつらん」と申しき。

ここにスサノオ、アシナヅチに命じ、
八つの門、八つの桟敷を築き、

その桟敷ごとに酒船を置き、強き酒を満たし待て」とぞ、のりたまう。

かくて酒船ととのえ、
スサノオ隠れ待つ処へヤマタノオロチ来たりて、

酒船ごとに己が頭を入れて存分に飲みき。

大蛇、深く酔う処へスサノオ躍り出て、
トツカの剣を振るい八つの首を切りたまえば、その血流れて、川くれないに染まる。

スサノオ、
オロチの尾を切りたまいし時、剣の刃欠け、

こはいかにと、剣の先にて裂きたまえば、宝刀出ずる。

スサノオ、この太刀を取りてアマテラス大御神に献ず、
これすなわち草薙の剣(くさなぎのつるぎ)なり。

ここにスサノオ、クシナダ姫を妻とす。

須佐之男命(すさのをのみこと)、宮を建てたまいし時、
この地に雲たちのぼり、「我が心、すがすがし」とて、うたいたまう。

 “八雲立つ 出雲や絵描き 妻ごみに 八重垣作る その屋絵描きを”
 (やくもたつ いずもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを)










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