漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

わらいばなし

2016年04月15日 | ものがたり

さる大店の旦那さま、
日ごろから正直一徹の忠義者とお気に入り、

下男三助だけを供につれ、
吉野へと花見に行かれければ、

店の者ども、三助の身の上をうらやましがり、

お帰りの節に、三助をつかまえ、
「定めし、面白かったであろうの」と問えば、

三助、つまらぬ顔で、
「なんの、桜がたんとあるばかりで、ほかになんにも面白いものはなかった」。

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「三助、よく見やれ、これが仁王様じゃ」

「さようでござるか、
おふたり、こうして向かい合っておられるには、さだめし、仲の良い夫婦でござろうの」

「なにを馬鹿な、仏さまに夫婦のあろうはずもないわ」

「ははぁ、さすれば、手かけと本妻どのか、
どおりで互いに怖い顔して にらんでござるわ」






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