漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

因果な商売

2009年10月07日 | テレビ 映画 演芸
きのうの続き。

「落語のリアルな表現」をいくつか紹介してみます。

まず、冒頭、
質屋の主人が、番頭を相手に我が商売を語る処、

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「私は質屋と云う商売は
 その日の生活に困るような人には、ぜひとも必要で、

 無くてはならん、
 随分と役に立つ、結構な商売じゃと思うてます。

 決して悪い商売じゃとは思やせん、
 思やせんが、
 人間と云うものは、まことに身勝手なもんじゃでなぁ、

 自分が大事にしているものを質に置いて、
 ひょっと、これが出せなんだりするとやなぁ、

 悪いのはおのれやで、
 おのれのせいやねんけれども、
 自分のことは棚に上げ、筋違いに質屋を怨む人がある。

 こちらで気付かぬうちに、
 他人さんの恨みを買うていると云うこともある、因果な商売じゃでナァ」。

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この話の時代設定は明治だが、
江戸時代に遡ろうと、
或いは、質屋をサラ金に置き換え、現代にしようと充分な説得力を持つ。

もうひとつ、
  
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まぁ、ウチの蔵に入っているような質草で、

「立派に構えた表通りの大店(おおだな)で、
 カネの事など気にせず買いました」と、云うような品物は、まず少ない。

まずまず、担(かつ)ぎの呉服屋の品物がええ処か、

背中に大きな呂敷包みを背負うて、
裏長屋を一軒一軒回ってくる行商の呉服屋、

こう云う商売は、客と馴染みにならな話が始まらん、
売れても売れんでも、定期的に廻って、馴染みにならなアカンのじゃ。

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「担ぎの呉服屋」とは、
大きな風呂敷に商品の衣類を詰め込み、背中に担いで売り歩く呉服屋。

大概は店を持たず、
裏長屋の一軒一軒でも、声を掛けながら売り歩く小商人。

このわずかな語りで、
昔の庶民のつましい暮らしぶりが写される。

付け加えれば、
今のように、安価で丈夫な衣類が溢れている時代と違い、
昔の庶民にとっては、着物は勿論、下着一枚でも、簡単には買えぬ時代だった。




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