漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

ある喜劇役者の死

2010年11月08日 | テレビ 映画 演芸
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足腰がおとろえ自力で立てなくなってからも、
プロデューサーに電話してきたと云う。

「舞台、出さしてもらわれへんやろか。
 寝たきりの病人の役やったら、いつでもできるさかいな」

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先日の読売新聞夕刊に載った「追悼抄」の記事、

かって、全盛時の松竹新喜劇で、
名優藤山寛美と渡り合った名脇役「八木 五文楽」さん、追悼記事の出だしです。

小柄で小太りの体形に、
目も眉も垂れ下がり気味、愛敬のある丸顔と滑舌良く聞き取りやすい大阪弁。

もう、覚えている人も少ないかもしれない、
なにしろ大黒柱の寛美が亡くなってからの松竹新喜劇は火の消えたような状態だったから。

10年ほど前、ごく小さな会場で公演があった、
五文楽さんはこの舞台で、時代遅れの老漫才師を演じた。

周囲が「引退の花道」にと、準備した役だったが、
初日、初の主役に緊張してか、セリフをとちって立ち往生、

見ていた関係者は、
「老体にむち打って奮闘する五文楽さんの役者人生と、
 劇中の老漫才師の人生が重なる不思議な体験だった」と語った、

それでも一週間の公演での演技は、
「哀愁漂う背中が観客の涙を誘った」と記事にある。

五文楽さんはこの時の演技で「文化長官賞」を受賞、享年91歳。

老喜劇役者を送るにとてもよい、心あたたまる追悼記事でした。





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