「ドレミのうた」なら誰もが知ってるが、
この歌が、あるミュージカルのために作られた歌だと知る人なら、
今ではもう、そんなに居ないかもしれない。
ハリウッド映画、
「サウンドオブミュージック」が大ヒットしたのは、もう半世紀も前。
この物語にはモデルがあり、
原作は、映画の主人公となった女性の自伝だとは私も知らなかった。
その自伝、
マリア・フォン・トラップ著「トラップ・ファミリー合唱団物語」に登場する次女、
マリーア・フランツィスカさん、93才が、
テレビのインタビュー番組に登場してそのころのことなどを語っていた。
映画はナチの追及を逃れてスイスへの国境を超えた処で終わるが、
ここで云う「そのころ」とは、主にそれ以後、
つまり、アメリカに渡って家族の合唱団としての暮らしぶりなど。
大家族が所持金もなく、
見知らぬ土地で暮らすのはもちろんタイヘンだったろうが、
彼女の語り口は朗らかで映画のイメージそのまま、
なんだか、歴史の彼方の人のように思っていた彼女が、
テレビの画面で「くっくっく」と楽しそうに笑いながら、
そのタイヘンな苦労を、明るく語っていることが不思議に思える。
興味深かったのは、彼女が40才を過ぎてから、
宣教師としてパプアニューギニアに渡り、30年余りも暮らしたこと。
表情や語り口に憂き世離れした品の良さがあるのは、
彼女が貴族の出であり、敬虔なキリスト教徒であったからか。
番組が終わるころには、
シワだらけの彼女の笑顔が、とてもチャーミングに思えてきたのでした。