スキージャンプ&スポーツ竹内元康発言

スキージャンプ選手、全日本コーチ、解説者、トレーナーを経て・・・今だから語れること。

スキージャンプフライング世界選手権

2016-01-19 14:58:51 | スキージャンプ


オーストリアはクルムのタウプリッツ-バートミッテルンドルフで行われたフライング世界選手権。
K200、HS225

予選は他を圧倒してトップ通過を果たしたのは、世界最長飛距離ホルダー251.5mのファンネメル(NOR)。
2番手にはフライングマイスターことクラニエッツ、3番手にはアマンと続く。
フライングを飛ばせれば、水を得た魚の如くテペシュも4位と好位置。

ジャンプのクオリティーが変化したクバツキ、それからポッピンガー、デコンブセボアらがアグレッシブな好ジャンプを見せた。
驚きは今季好調とはいいがたいが、ストッフが予選を通過出来なかったこと、条件も最悪だった。

予選免除組はここフライングでも素晴らしいパフォーマンスで隙はない。

紀明は風邪気味で体調回復の為、トレーニングラウンド、予選と全てスキップした。


フライング世界選手権は2日間、4本の合計で争われる。
第1日目

紀明は今季フライング1発目となるトライアルラウンドでいきなりHS越えの233.5m。
期待MAX本当に底知れぬパワーを出す男だ。

上位20名くらいは200mは楽勝じゃ!と言わんばかりのパフォーマンスだが、それでも、風のひと吹きが有るか無いかで20~30m、ひどい時は50mも飛距離が変わってしまう。

そんな中でもトップ10の連中はひとランク違うぞとばかりに、先ずは紀明がヒルレコード更新となる240.5m、パーソナルベストタイ!
まあ、会場中が度肝を抜かれたね。
こういう事をヨーロッパのファン達は目の当たりにしてるからリスペクトしてやまないんだね。

また伝説を1つ作ったわけだ。




しかし、そのニューヒルレコードも15分くらいの命とは…そんな殺生な…

プレフツ1号機がやってくれました、あっさりとヒルレコード更新!

243m!
もう戦闘機かって!

テレマークこそ決まらなかったものの2位のガングネスを僅差(1.5p)でかわしトップ。

紀明とプレフツが派手にやらかすもんだから、他のスーパージャンプが色褪せて見えてしまった。

ガングネス236mで2位、フォルファング230mで3位、クラフト226.5mで4位、紀明240.5mで5位、ファンネメル234mで6位。
フライングでは10m差なんて僅差のレベルだから、2本目はどうなることやら。

20人が200m越えで、選手達の進化を感じる。

憲斗は惜しくも31位で個人戦では先に進めず、団体戦に日本チームは参加しない為、フライング世界選手権は終了となる。

2本目は危険な状態ではないが、やや風が出てきたり止まったりと不安定になってきて1本目より難しくなって下位の選手は手こずっている。
CGでは横風が随分と選手を虐めてるようだ。
WFで真横からの風だとカウントが0mなんじゃないか…と今更ながらに思う。
数値が穏やかな変化だからね…
今後、どう改善されて行くか…課題だね。

ゲートも下がっているが1本目ほどのスーパージャンプは期待できそうもない流れ。
そして上位にきて、更にゲートは下がる。
飛ばせ過ぎ注意ってことだね。
不安定な風だからしょうがないが…

今日のトップ6は気持ちのノリとスピリットが違う。
2本目も僅差のバトル。
ファンネメル214.5m、紀明215m、フォルファング216.5m、クラフト220m、プレフツ213.5m、ガングネス216m。
ポイント差でも、この6名に絞られた感じだ。

1日目の順位は
1位ガングネス419.4p
2位プレフツ418.1p
3位クラフト415.6p
4位フォルファング415.0p
5位紀明409.0p
6位ファンネメル397.6p

ここまでがポディウム争いに加われるポイント差。
トップ10を見てみると、スロベニアが4名、ノルウェーが3名、オーストリア、ドイツ、日本が各1名ずつとなった。



ファイナル1本目
今日は当然だが、昨日ほど飛ばせるゲート設定はしないだろうと。
思った通りNo.16ゲートからの開始。
ただ、向い風が昨日より多少ある。
ビブ20のフライタークが231mを飛んで、ビブ21のテペシュからNo.15にゲートダウンだが220m。
良い風が吹き出してる。

トップ10に入って1番最低な条件、つまり追い風にただ1人だけ当たってしまったファンネメル、ポディウムから大きく後退。
後姿が寂し過ぎる。
次が紀明だっただけにイヤな感じだったが、なんとか風がもちなおしてくれ220mは3本合計でトップに。

次のジャンパーフォルファングが噴いた!240m!の瞬間、バランス崩して転倒。右の膝がだいぶ内側に入ったようだが大丈夫なのか…
すぐさま起き上がり特大のガッツポーズだが、興奮状態なんで本人はハイテンション中真っ只中。
スタスタ歩き出すが、次のジャンプと明日の団体戦が心配…

次はクラフト、ゲートが14にダウン。
それを何するものぞの226.5m、アツいね!ホームのクラフトここでトップに立つ。

続いてプレフツ!
マジか?こいつ!又やったよヒルレコード更新!
しかもテレマークスタイル決めようとしてるし。
なんだかねぇ、宇宙人だよペロは👽
記録は244m!
ジャッジスコアも54.5p、プレフツにしてはちょっと低いけど、テレマークランディングは認められてる。
ホント凄い、ここでトップは当然だが最後にガングネスがまだ控えてる。


最終ジャンパーのガングネスでゲートが13に変更、ちょっと不利になったか…
あとは風に聞いてくれと飛んだジャンプは238.5m!
同じゲートならガングネスにもヒルレコードのチャンスがあったじゃないか…
ジャッジポイントが低い…ジャッジスコアが49.5p。
トータルポイントで3.3pペロに届かず。
飛距離で及ばずだったが、ジャッジポイントが同じくらい出せればトップに立てた。
全ては着地の差だった。

これでポディウムは5名に絞られた形だ。
チャンピオン争いは上位3選手にチャンスがある。
しかし、4本目となる最終ラウンド、風が暴れ出してきて、ゲートの設定も難しく、選手の安全性も確保するのが困難な状況に。
そしてキャンセルのアナウンス。
いたしかたないね。
公式のリザルトは3本のトータルとなり、チャンピオンはプレフツに!
今回の上位5名のバトルは本当にエキサイティングで次元が高く、どの選手が勝っても不思議じゃないくらいだったが、ヒルレコードを2度にわたって更新したプレフツに女神が微笑んだのはその価値に値するからだろうね。


コングラッツ👏👍プレフツ🏆


残すは団体戦!
残念なことに日本チームは出場しない。

チーム力はノルウェーが抜けているが、対抗は今やフライングマイスターが3人になったスロベニア。
ドイツ、オーストリアは3枚目と4枚目のカードがやや不安だ。
ラージヒルだとイケる布陣だが、フライングはちょっと勝手が違うからね。

コンディションはほぼ無風に近い向い風、時折追い風。ゲートは17。

第1グループはオーストリアのクラフトが225.5mを飛んで好発進。
続いてノルウェーはファンネメル、3番手には個人戦の予選でまさかの大敗の実力者ストッフ。
スロベニアの切込み隊長クラニエッツはやや期待外れの4位で遅れをとった。

第2グループは、昨日危なっかしい転倒をして心配されたフォルファングが安心して下さい、ピンピンしてますよで218.5mでトップ、鉄人かっ!
いい仕事を成し遂げたのはポッピンガーでグループ2位。
テペシュがまさかの失速でスロベニアは大きく後退。
ポーランドムランカが大健闘でグループ3位。
ドイツのライエも失速で厳しい位置。
ノルウェーvsオーストリアになっていくのか…

第3グループ、フェットナーが200mに大きく届かず180.5m。
スロベニアラニセクも然程伸びずフェットナーと同飛距離、ほぼ無風に近いと厳しいか…
ポーランドクバツキは更に劣る166m、これでポディウムからは遠く離れてノーチャンス。
ここで見せ場を作ったのはフライターク、213.5mで一気に詰めるドイツ。
ノルウェーはタンデ、大きなミスはしない206.5mで大量には差をつけられずにグループ2位。

スロベニアが予想外の展開になり、もはやプレフツ1人の力だけではどうにもならないか…それでもいいジャンプをする為にベストは尽くすだろうが、2本目に繋げる為にも。他のチームにも同じ事が起こり得なくもないはず。

第4グループ
プレフツはやはり魅せた、グループトップの228m。
定番のようにどのチームもラストにエースを起用してきてるので、ポイントの差は大きく動かずだが、ガングネスとハイベックはやや低調なポイント。
フロイントは219mでフライタークに続いて一気に差をつめてきた。

2本目、劇的なドラマは起こるか…
第1グループのクラフトはキレてる、何としてもホームでポディウムにの想いが強いのだろう、230mでまたまたグループトップだ。
1本目同様、2位はファンネメル、クラニエッツがなんとか意地をみせて211mでグループ3位、ドイツヴェリンガーは悪くはないが、200m以上は欲しい戦いでは見劣りしてしまう193mでグループ6位。

第2グループではテペシュ又もやらかし157mはやらかし過ぎ。ポディウムが…
オーストリアポッピンガーもやらかしてくれて、ポディウムまだまだ分からんモードになる。
そんな中でライエが今度はしっかり仕事し、202mは2位のポジションを確実に近づけたか。
フォルファング、差をつめさせない201.5mで辛くもグループ1位。

第3グループ、ここで勝負は見えてくるか。風が追い風模様に、ゲートが1段アップの18。
スロベニアラニセクやらかした157.5m…
ポディウム絶望的かと思ったが、フェットナーもやってしまった、追い風に大当たりの156.5m。
血の気が引いてしまっただろうなぁ…
フライタークは2位を決定的にするかの207mはグループ2位。
ノルウェーは勝利を決定づけるグループ1位タンデは215.5m。

第4グループ
動くところは3位、4位のオーストリア、スロベニアのポディウム争奪戦だけか?!ゲートは再び17へ。
プレフツ238m!フライングでも誰の追随も許さない圧巻のフライト。1人だけ特別良い条件を貰っている訳ではないが、少しのミスもない。
もう異次元の世界に一人旅だ。
ハイベックも有りっ丈の執念か、216mでスロベニアの上に立つ、そしてポディウム確保。
ドイツフロイントもミスは許されない状況だが、幾つもの修羅場をくぐり抜け、高値安定の選手だけあって、218.5mとプレフツに次ぐグループ2位でドイツトップに。
残るノルウェーはガングネス、貯金もありそんなに大きくプレッシャーはかからないジャンプは勝利を確信する219.5m。
大差でノルウェーが優勝した。

本当にチーム力の高い素晴らしいチーム。
昨年でトップレベルのまま引退したバーダル&ヤコブセンのツートップが抜けたのを感じさせない世代交代は見事。




オマケに今回のフライング世界選手権の飛距離ランクを


プレフツに次いで紀明ってのが嬉しいし凄いね!






























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2 コメント

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はじめまして (トヨタアキオ)
2016-01-31 23:36:22
元康さんが、ブログをやっているのを初めて知り、慌てて読者登録いたしました。
これだけの情報社会なのに、スキージャンプの詳しい解説が少ないので、本当にうれしいです。
これからも、楽しみにしていますので、頑張って更新してください!!それと、J-sportsの中継も楽しみにしていますよ!
それにしても今日の大倉山、大貴が失敗した事でレジェンドが最年長表彰台記録更新って、複雑すぎる結果です・・・。
Re:はじめまして (mtys_jump)
2016-02-02 15:47:29
コメントありがとうございます。

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