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第2 修復腎移植の事実上の禁止に至らせたことによる因果関係

2014-07-02 23:44:17 | 修復腎移植
第2 修復腎移植の事実上の禁止に至らせたことによる因果関係
 上記第1のような直接的な因果関係のほか,被告らを筆頭とする日本移植 学会が厚生労働省に働きかけて修復腎移植を禁ずるようガイドラインを改正させ,もって腎不全患者らの修復腎移植を受ける権利を侵害したことも,以下の事実から明らかである。
1 厚労省と学会の協力体制
修復腎移植問題の発覚により,日本移植学会と厚生労働省は,ともに日本の移植医療への不信を招くのではないかという危機感を頂いていた。当時は移植医療の推進を目的とした臓器移植法改正案が国会で成立するかどうかという微妙な時期であり,両者は,移植医療に対するマイナスイメージを一掃したいという思いを共通にしていた(被告大島本人調書121~122項)。
 両者の協議
ア 被告大島と外口健康局長の協議
修復腎移植問題が発覚した直後の平成18年11月初め,日本移植学会の副理事長の地位にあった被告大島は,厚生労働省健康局長の外口崇に対し,「このような医療は絶対に容認できない。学会が責任を持って事実関係の解明に当たりたい」と述べ,外口からも「厚労省としても重大な関心を持っています。最大限,学会を支えます。」という趣旨の返答を受けた(甲B22,被告大島本人調書118~119項)。以後,日本移植学会と厚労省は,二人三脚で「ガイドライン改正」に向けての歩を進めるのである。
 イ 第24回臓器移植委員会
平成18年11月27日,第24回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会が開催された。同会に委員として出席した被告大島が日本移植学会倫理指針等について説明を行ったことを受け,厚生労働省の原口真臓器移植対策室長は,学会の倫理指針のほかにもガイドラインを作って対応していきたい旨の発言をした。そして,ガイドライン改正に向けて対策を講じるべき事項として掲記した論点整理表(その論点ごとに日本移植学会倫理指針等が対照されている)を委員に配布し,その論点整理を踏まえてガイドラインの改訂に持って行きたいという考えを明らかにした(甲B40‐5(P5,19~22))。
続いて,矢野補佐より,移植が行われた宇和島徳洲会病院,市立宇和島病院,呉共済病院では第三者の専門家を含む調査委員会が設置されることになっていること,厚生労働省と関係学会が参画する調査班を設置して調査を進めることになっていることが報告された。そして,これを受けた被告大島は,日本移植学会が各病院の調査委員会及び国と共同の調査委員会に全面的に協力し,調査がある程度進んだ時点で正式なコメントをする決定をしている旨を報告した(甲B40‐5(P24~25))。
 厚労省調査における協力関係
ア 厚労省調査における学会の役割
厚生労働省は,修復腎移植の是非をめぐる調査の中で,表面上は摘出のみに関わった5病院の調査班の事務局を務めたに過ぎないが,同省臓器移植対策室の担当者を関連病院すべての調査委員会にオブザーバーとして参加させ,日本移植学会による調査全体の事務局を担当した(甲B22)。
イ 第25回臓器移植委員会
   平成19年4月23日,第25回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会が開催された。冒頭,丹藤主査から調査委員会や調査班の調査状況についての報告があり(甲B41-7),次いで,同年3月31日に発表された日本移植学会等4学会による「病腎移植に関する学会声明」や,その前日に日本移植学会が公表した「市立宇和島病院で実施された病腎移植における生存率・生着率について」の報告があった(甲B41-4(P2~8),甲B41-8、甲B41-12 )。その上で,原口室長は,上記「病腎移植に関する学会声明」及び「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針に規定する事項(案)等について」について,詳細な説明を行った(甲B41-4 (P11~20),甲B41-9)。かかる過程を経て、本件「ガイドライン改正」が実行されることとなった。

2 「ガイドライン改正」に至る行政手続
 パブリックコメントの実施
「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正に関して,平成19年5月11日から6月11日まで,パブリックコメント手続が実施された。
厚生労働省健康局臓器移植対策室は,寄せられた意見に対し,日本移植学会の「生体腎移植の提供に関する補遺」等に基づいて回答しているだけでなく,「4学会声明のみに基づいて病腎移植の禁止を規定すべきではないのではないか」といった意見に対して回答を行ったが、その内容は,上記学会声明を全面的にコピーしたものである(甲B42(P5~8))。
 「ガイドライン改正」の実施
平成19年7月12日,「ガイドライン改正」が実施された。またこれを追って、平成20年3月5日、厚生労働大臣の告示とそれに伴う同省課長の通達が実施された(詳細は原告ら準備書面(24)記載のとおり)。
改正内容は,上記「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針に規定する事項(案)について」(甲B41-9 )とほぼ同じである。また,「病腎移植は,現時点では医学的に妥当性がない」とされているが,その表現は,日本移植学会ら4学会の声明と共通している。
しかも、「ガイドライン改正」の実質的に重要な一部をなす課長通達等においては、厚生労働省が4学会と共同して「ガイドライン改正」を実施する姿勢がきわめて顕著である。①保険局医療課長平成20年3月5日通達「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」は、「生体腎を移植する場合においては、日本移植学会が作成した『生体腎移植ガイドライン』を遵守している場合に限り算定する」と定め、②同課長同日通達「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」においては、「生体腎移植の実施に当たり、臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)、世界保健機関「ヒト臓器移植に関する指針」、国際移植学会倫理指針並びに日本移植学会倫理指針及び日本移植学会「生体腎移植ガイドライン」を原則として遵守していること。」「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)、世界保健機関「ヒト臓器移植に関する指針」、国際移植学会倫理指針並びに日本移植学会倫理指針及び日本移植学会「生体腎移植ガイドライン」を遵守する旨の文書(様式任意)を添付すること。」と定めている。
これらの通達は、診療報酬の算定という国と医療機関との権利義務関係の成否を左右するものであるところ、厚生労働省は、その権利関係の成否を法人格もない私団体であるところの日本移植学会のガイドラインに係らせているのである。わが国の法制度上、このような実例を、当代理人らは寡聞にして知らない。
さらに驚くべきことは、上記各課長通達が行われたのは平成20年3月5日であるのに、その各通達が内容的に依拠する日本移植学会の「生体腎移植ガイドライン」は平成20年5月18日理事会決定により制定された、ということである。すなわち、上記各課長通達は、いまだ存在しない、したがって正式には内容も判明しないはずの<学会ガイドライン>に適合することを、診療報酬の請求要件として定めたことになる。
「ガイドライン改正」が、表面上は純然たる行政の行為としての体裁をとってはいても、その実は厚生労働省と移植学会幹部ら(すなわち被告ら)とが共同して行ったのであることは、この一事のみをもっても明らかである。

3 評価
このように,日本移植学会は,「移植医療への不信感除去」という半ば利己的動機から,『修復腎移植は絶対に認められない』という結論から出発して、厚生労働省に対してこれを禁止させようとした。①まず被告大島が外口局長との「ボス交渉」によってその足場を築き、②宇和島徳洲会病院等に対する調査への協力や、臓器移植委員会での意見表明を通じて,外口をはじめとする厚生労働省の担当者に自分たちの見解を吹き込んで同調させ、③最終的に厚生労働省に、被告らの要求するままの内容の(しかも要所で<学会ガイドライン>を要件として取り入れた)「ガイドライン改正」を行わせた。厚生労働省は結局、<学会の言い分をそっくり呑み込んで>本件「ガイドライン改正」を実行し、一般医療としての修復腎移植を禁止したのである。
日本移植学会は,医学的知見を有する専門家集団であり,こと移植医療についての医学的知見に関する限り、厚生労働省に対する影響力は絶大である。その日本移植学会の頂点に立つ被告らの見解・発言等が,厚生労働省をして安易にその内容を盲信させて、修復腎移植を禁止せしめたのであるから,「ガイドライン改正」を通じて腎不全患者らの修復腎移植を受ける権利を侵害していることは明らかであり,被告らの行為と原告らの被った損害との間には十分に相当因果関係が認められる。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-07-03 00:48:47
1991年愛知県の藤田保健衛生大学大学病院で、修復腎移植が行われ、この手術にゴーサインを出していたのが大島元日本移植学会副理事長だったんですね。この人も自分の都合で移植の良し悪しを決めるんですね。
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