ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【オバマ大統領の返書】難波先生より

2016-08-30 15:55:43 | 難波紘二先生
【オバマ大統領の返書】
 高校の旧友宮本(旧姓住田)季美枝さんがオバマ大統領に広島に「World Youth Museum」を設立する構想を手紙で、大統領訪日前に送ったところ、このほど返事があったそうだ。
 米大統領の親書を見る機会は滅多にないと思うので、送付されたサイン入りの手紙を添付した。

 英文は易しいので、本メルマガの読者なら翻訳は不要だろう。季美枝さんの行動力には深く敬意を表する。ただオバマ大統領の手紙にも「私がヒロシマを訪問したのは謝罪のためではなく、第二次大戦中に亡くなったすべての人びとを追憶する栄誉のためであり、核兵器がもはや必要とされない世界を築くためのわれわれの責任を再確認するためです」とあるように、一部の被爆者団体が期待したように「謝罪」の意思は毛頭なかった。

 季美枝さんの「博物館構想」の敷地として構想されている旧広島球場跡地は、先日週刊誌が報じたように、マツダ球団のオーナー松田氏とサッカーのサンフレッチェの利害がからんでおり、とても簡単に解決しそうもない。湯崎(県知事)、松井(広島市長)程度の政治家では解決はとてもだめだろうと私は思う。

 私個人は、それよりも広島県全体として緊急に対処しなければいけない大問題があると考えている。それは30年以内に発生する確率が、それぞれ30%と推計されている、首都直下型地震、東海地震、南海トラフ地震への対応である。大ざっぱに言えば、30年以内に90%の確率でどれかが起きるという話である。
 過去20年間の地質調査により、広島市西部から山口県にかけて大きな活断層があることが明白になった。(これには4組の中田君の功績が大きい。)これは今後の調査により、30年間に30%程度の確率で地震発生をもたらすかも知れない。ただ直下型地震では津波の恐れはない。

 問題は南海トラフ地震である。最悪の場合は、海抜ゼロの広島市は、5〜10mの津波であっさり水没して、都市機能が麻痺すると思われる。死傷者数は数え切れないほどになるだろう。
 その場合、広島市内にある県病院、大学病院、日赤病院、市民病院という公的病院は機能停止に陥る。民間病院が主体である透析病院も壊滅するだろう。

 このデザスターを回避するためには、広島市中央部に市役所と県庁が同居している現状をやめ、県庁を地盤が安定している賀茂台地(現在東広島市がある県央の台地)に移転させることが何よりも重要だ。広島県は広島藩と福山藩の合併によりできたが、もと県庁は県央の安芸西条町にあった。軍都広島が整備されるにつれ、広島県庁も広島市に移ったものだ。

 県庁の移転にともなう不便は、県庁職員はともかく、県民にはほとんどない。新幹線と山陽本線があり、自動車道も国道2号線バイパスと山陽自動車道、東広島・呉道路が整備されており、県北から世羅町経由・東広島に至る道路も整備されている。新幹線も「東広島駅」があるし、バスか自動車で30分走れば「広島空港」にも行ける。
 むしろ県庁が県央に移ることにより、利便性が高まり、各種産業が活性化されるだろう。ちなみに東広島市周辺には県立の工業団地が多数あるが、多くは未利用のままになっている。本来は広島空港を利用して、製品を安く輸送できるIT企業を想定し立地したのだが、シャープもNECも見込み違いで撤退してしまった。

 もし県庁が東広島市にあれば、大型の安芸灘地震や南海トラフ地震に見舞われて、広島市に壊滅的被害が生じても、行政・医療の両面から支援を行うことができる。
 広島原爆の時は、市役所と県庁がともに広島市内にあり、原爆で両者ともに壊滅して、ろくに救援機能が発揮できなかった。同じ愚を繰り返してはならない。

 私はある程度もののわかった人には、この大プランの話をしたが、賛成してくれたのは元アカシア会会長で、「賀茂鶴酒造」の会長石井泰行氏(43回卒業)だけだった。彼はその後、惜しくも亡くなった。

 私が現在住んでいる場所は海抜900mの「鷹ノ巣山」の東にある国道375号線の傍である。この地理的条件のため、公共バスやJRで広島市に出るには、約2時間半かかることをご理解願いたい。広島市に住む要人に気軽に会えるような環境ではないのである。

 ここは旧「賀茂郡福富町」でいまは東広島市の一部になっているが、鷹ノ巣山が「安芸の国」と「備後の国」の境をなしている。この山の頂上展望台に立つと、北に備後の国、南に安芸の国、さらに海の向こうに四国山脈が見える。

 我が家の庭を流れる小川は、沼田川に合流し三原市で瀬戸内海に注ぐ。それに対して安芸高田町の水は三次市を経由して江川に合流し、最後は日本海に注ぐ。5キロ先の豊栄町の水は、世羅町、府中町を経由して、芦田川となり福山で瀬戸内海に入る。
 いわば広島県の中央山塊地帯に暮らしているので、広島県の地形・地理学が自然に見えてくる。その観点からすると、広島市の弱点がよく見えるので、こういう構想を抱いたので、個人的な利害関係はまったくない。つまり政治的主張ではない。

 これは「国土強靱化」の提案である。しかしそれは福島県で行われているような、自然海岸に高さ10mのコンクリート堤防を作るような計画とは違う。県庁機能を別の場所へ移せという主張である。地震に安全な岩盤台地の上に、県庁を移築することにより、広島県の防災機能は飛躍的に向上する。人間の浅知恵でつくった「伊勢湾護岸堤防」が何の役にも立たなかったように、東北地方の護岸堤防も国土強靱化には役立たないだろう。

 8/29「日経」「揺らぐ地震対策(下)」で、静岡県浜松市で太平洋岸に延長17.5キロにわたる高さ13mの大防波堤を建設中だと報じている。総工費は340億円だそうだ。同市は南海トラフ地震の発生率を今後30年以内に70%と見積もり、高さ14〜15mの津波が来ると予測、死者は最大で1万6000人と推定しているそうだ。浜松は楽器製造で有名なところだが、大手はとっくに工場を内陸部に移転したという。動けないのは中小企業とうなぎ養殖場であろう。

 1959年の伊勢湾台風では、高潮と重なったため、名古屋市を含む伊勢湾一帯に死者・行方不明7500人という被害が出た。その後、長大な「伊勢湾護岸堤防」が建設されたが、日本列島の太平洋岸はプレート運動のために「毎年数センチ上昇する」ということに無知だった。三重県を訪れたら、護岸堤防が今日では海岸から200mも内陸にあり、堤防の外に団地ができているのを見物に行くがよい。
 人は歴史から学ばねば、何から学べばよいのか?6人もの取材記者が名を連ねた、日経のこの調査報道が、「昭和三大バカ査定」に入っているこの伊勢湾護岸堤防にまったく触れていないのは、不可解としか言いようがない。

 季美枝さんの「World Youth Museum」構想には、役立たないと思うが、もし南海トラフ地震が生じて、広島市が津波で水没したら、平和公園も原爆慰霊碑も、原爆ドームも台無しになるのだということを分かってもらいたくて、本文をしたためた。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-08-31 22:43:36
海岸線からはなれたところにある「堤防」は、川の氾濫対策じゃないか? 海岸からの距離は昔も今も変わってないよ。

前にメルマガでは100m以上と書いていたが、いつのまにか記憶を改竄して200mになっている。

そもそも、プレートの潜り込みによる地盤の上昇と、温暖化による海面上昇のどちらが早いと思ってらっしゃる? むしろ、潮流によって浜が削られているため対策が行われているというのに。
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