ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【毒と薬】難波先生より

2013-02-04 12:08:45 | 難波紘二先生
【毒と薬】クレオパトラが毒蛇に胸を噛ませて自殺したのはよく知られている。「毒」とは化学物質の主作用が人にとって有害であるものをいう。主作用が有益で、毒が少ないものを「薬」という。毒と薬は紙一重であり、使いようで毒にも薬にもなる。
 「七色の薬のみわけ今日も無事」という句が山藤章二「ぼけせん川柳」(講談社文庫)に載っているが、これが今の老人医療の現状。そのうち「医原病」で死にますよ。

 フレミングによるペニシリンの発見以来、新薬開発には世界中の土壌にいるカビが調べられ、多くの抗生物質や免疫抑制剤などが発見された。
 「National Geographic」誌2月号が、「生物の毒が人間を救う」という記事を載せている。これが実に面白い。
 「噛む生物」の毒は、抗原・抗体反応のように「カギとカギ穴」の関係で、体内の特定分子と結合して、動物の神経、心臓など重要な臓器の機能をマヒさせる。だからこの毒を研究して、分子を修飾したものを作れば治療薬として使える。
 
 地球には10万種の「刺咬動物」がおり、2000万種の毒素があると推定されているが、人間が毒素として知っているのはわずか1万種。研究が進んでいるのはたった1000種だそうだ。
 アメリカドクトカゲは、年に3回しか捕食しないのに、血糖値は一定だそうだ。不思議に思って研究したら、インスリンと並んで血糖値を制御するホルモンが毒から見つかった。これを元に開発したのが、新型2型糖尿病治療薬(飲み薬)「エキセナチド」で、「医療界のスーパーヒーロー」だそうだ。
 http://caloo.jp/articles/5/

 シカゴ大学には「デザイナー・トキシンズ」という生物毒素のデータを集め、そのDNAを操作して新薬を開発するシステムがあるそうだ。今、100万種以上のDBがあるという。以下、利用または開発中の薬。
 ノハラクサリヘビ毒=鎮痛剤として、アゼルバイジャンが輸出している。
 マレーまむし毒=血栓溶解剤アルビンとしてヨーロッパの医療機関が利用中
 ブラジルクサリヘビ(ハララカ)毒=アセチルコリンエステラーゼ(ACE)阻害剤で、降圧剤カプトプリルとして世界市場が年間1000億円ある。
 東グリーンマンバ毒=猛毒の蛇だが、慢性不全不全改善薬センデリチドとして臨床試験中。
 サソリ毒=自己免疫疾患を抑えるペプチドを開発中。
 オブトサソリ毒=神経毒クロロトキシンにがん細胞細胞膜にくっつく性質があり、これに蛍光色素をラベルすることで体内にある「わずか200個のがん細胞」の検出が可能になった。(MRIだと10億個ないと無理)
 イモガイ毒=2枚貝のくせに魚を殺して食う。毒素コノトキシンは末期がん患者の鎮痛剤に使用されている。
 カリブイソギンチャク毒=毒性のペプチドに自己免疫関与T細胞を抑制する機能があり、シアトルのバイオ企業が医薬品開発を進めている。

 日本人は複眼的で多様な思考ができないから、山中さんがノーベル賞をもらったとなったら、ダダーッとiPS細胞の方にみな走る。アメリカではES細胞だけでなく、こういう毒素の研究も地道に並行して行われている。

 1900年に野口英世が渡米して、行った先がバルチモア。ジョンズ・ホプキンス大学医学部の病理学教授サイモン・フレクスナーの研究室で、最初に手がけたのが「蛇毒」の研究。ふつう毒蛇は、上あごの一対の牙が毒牙で、唾液腺から毒液を出し、歯に溝があるか中が中空になっていて、獲物を咬むと毒液を注入する。
 ビーカーを咬ませて毒液を採取する。いったん毒をだした毒蛇はもう安全である。
 蛇毒には1)出血毒、2)神経毒、3)筋肉毒などがある。毒の聞き方は千差万別で、そこに新薬開発の秘密がある。


 面白い記事なので一読をお奨めする。
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