一軒目は手堅いところを選びました。しかしそればかりでは面白くありません。久々に新規の店へ飛び込みます。続いて訪ねるのは「うすい」です。
昨夜と今夜、それぞれ素通りしてきた二軒の店とは別物ですが、いずれも近い範囲にあります。昨夜素通りした店から二条通りを東へ進み、最初の角を南へ下ると「いっしょう」があって、さらに南下し御池通りへ至る手前がこの店という位置関係です。
存在に気付いたのは六月に訪ねたときだったでしょうか。店構えと品書きだけでは決め手を欠く中、目に留まったのは「うすい」の屋号でした。というのも、かつて愛読していたあまから手帖の「居酒屋100選」という単行本に、同じ屋号の店が載っていたはずなのです。
正確にいうと、載っていたのはおばんざいの店であり、それに対してこの店は「おでんとジャズ」を標榜しています。存在につい最近気付いたということからしても、本に載った店とは別物ということです。しかしその一方で、何らかの関係がありそうだという直感が働きました。意を決して飛び込むと、件の本で見た女将が、助手の青年ともどもカウンターに立っていたという顛末です。
先客は常連らしき独酌の御方が二名。8席分のL字カウンターが客席の全てです。白木のカウンターと簾の壁は、最近一から造ったものでしょう。それもそのはず、木屋町にあった店を一昨年に畳み、昨年こちらに移ってきたというのが女将の弁です。
その理由については詮索しなかったものの、おでんの店に模様替えした理由については、何となく分かったような気がします。通り沿いの店構えには一見てらいがないものの、入居するのは店舗と住宅、事務所を兼ねた建物であり、奥まった場所にある玄関は古い集合住宅のそれです。このことからからしても、最初から飲食店だったわけではなく、事務所か何かだったものを改造したと見受けられます。前の店舗に比べて手狭になり、手の込んだものを出しづらくなったことから、鍋一つで足りるおでんを主役にしたのでしょう。
そのような制約もあり、品書きはおでんを主体に惣菜、酒肴がいくつかというささやかさで、酒も片手で足りる程度の数に限られます。しかも、酒とおでんをレンジで温めるのは興ざめです。とはいえ、燗酒とおでんの味は悪くなく、〆鯖に一手間加えた蕪漬けも肴としては上々。何より女将の老練な客あしらいは心地よいものがあります。
一軒目としてはやや物足りないとしても、二軒目以降にはむしろおあつらえ向きといえ、終盤の切り札として今後定着していくかもしれません。女将の名刺をいただいて辞去しました。
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おでんとジャズ うすい
京都市中京区御幸町通御池上ル亀屋町388 フロンティア西森ビル1F
090-8146-6429
平日 1800PM-2230PM(LO)
土曜 1800PM-2300PM(LO)
日曜及び月曜定休
先一杯
大根
焼豆腐
しめ鯖のかぶら漬け